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第9話 至高の日常

遊戯 Episode:17

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 ただこういう事は初めてだった。
 かつて戦場にいた頃も、上級傭兵となって任務をこなすようになってからも、徹夜程度でバテたためしはない。

 とはいえ、いま本調子でないのは確かだ。

(今晩は早く寝ますか)

 さっさとそう結論付けて二度目のボールを手に取った、その時だった。

「――?」

 不意に辺りが揺れた気がして、動きを止める。

(地震、ですか……?)

 が、その割には周囲が騒ぐ様子はない。
 そして急に視界が暗転する。

 シルファが何か言っているのが、遠く聞こえた。

(そんなに騒いでは、他のお客の迷惑でしょうに)

 なにがどうしたのか把握しようとしながら、ぼんやりと突っ込みだけは入れる。
 状況が良く分からなかった。

「きゅ、救急車っ! 早くっ!!」
「シルファ先輩、落ち着いてくださいってば」

 やりとりが聞こえる。
 と、誰かがちょんちょんと突付いてきた。

「先輩、生きてますか……?」

 ルーフェイアの声だ。

「――勝手に殺さないでもらえますかね」

 反射的にそう言い返してから、やっとタシュアは自分の状況に気がついた。

(私としたことが)

 体調が悪いのに出歩いたのが祟って、倒れたらしい。
 うろたえきったシルファが目に入る。

「なんですか、その顔は。たいしたことはありませんよ」
「倒れておいて、『たいしたことない』わけがないだろう!!」
「動けるのですから、問題ありません」

 言って起き上がろうとする。

「おや?」

 身体に力が入らなかった。上手く立ち上がれない。

「だから言ったじゃないかっ!!」

 普段は物静かなシルファが、かなりの剣幕だ。

 もっともイマドはあの性格だし、ルーフェイアも以前こういうシルファを目にしたことがあるため、それほど気にする様子はない。
 むしろタシュアのほうを見て、二人とも「意外そのもの」という表情をしていた。

「私が人並みなのが、そんなに意外ですか」
「いえ、あの……すみません……」
「タシュア、突っ込んでる場合じゃないだろう!」

 始まりかけたいつものやりとりを、シルファが遮る。よほど心配しているようだ。

(――彼女らしいですね)

 意外だが、シルファにはこういう一面もあるのだ。

「熱でも、あるんじゃないか? じゃなきゃ、なにか病気とか」

 もう一度起き上がりかけたところへ、彼女が手を伸ばしてくる。
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