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第9話 至高の日常

遊戯 Episode:18

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 これがルーフェイアあたりなら反射的に避けたのだろうが、シルファだったために避けなかった。
 次の瞬間。

「タシュアっ!!」
「なんです、大声を出したりして」
「こんなに熱があって、何で言わなかったんだっ!」
「おや、熱がありましたか」

 どうりで調子がよくないわけだと納得する。

 見るとルーフェイアが、呆然とした表情だった。
 イマドにいたっては、後ろを向いて笑っているらしい。

 そしてぽつりと少女がつぶやく。

「タシュア先輩、強いんですね……?」
「そういう話じゃない!」
「ご、ごめんなさいっ!」

 珍しくシルファに突っ込まれて、ルーフェイアがまた平謝り状態に入った。

「泣かせてどうするのです」

「え、あ、いや……えっと、そういうつもりじゃ……。
 ――そうじゃない! タシュア、病院へ行くぞ!」

 なぜかとばっちりがこっちへ来る。

「一晩寝れば治ります」
「だめだ!」

 いつになくシルファは強引だ。
 そこへおずおずと、ルーフェイアが口をはさんだ。

「あの、先輩……風邪薬ならあたし、持ってますけど……」

 言いながら、持ち歩いている小さなポーチを開けている。

「本当か? そうしたらタシュア、とりあえずそれを――」
「冗談はやめてください」

 飲まされそうな勢いに、思わず言い返した。

「ルーフェイアに合わせた劇薬など飲まされた日には、命がいくつあっても足りません」
「あの、これ……わりと普通の、お薬ですけど……?」
「その『わりと』と言うのはなんですか」
「え……」

 ルーフェイアが答えに窮する。

 ――もっとも薬というものは、どの辺を「普通」とするか微妙なのだが。

 どちらにしても、得体が知れないのは確かだ。

「ともかくお断りします。まだ病院の薬のほうが、数段ましでしょうからね」
「じゃぁ、行くんだな?」

 シルファはなんとしても、病院へ連れて行きたいらしい。

「誰が行くと言いましたか」

 と、このやり取りを聞いていたルーフェイアが、珍しくまた口をはさんだ。

「あの、先輩、もしかして、病院嫌い……なんですか?」
「病院が好きな方というのは、見たことがありませんが」

 タシュアの答えに、少女がちょっと首をかしげて考え込む。

「あたし、嫌いじゃないですけど……」
「それは例外です」
「話が違うだろう!」

 延々と続く押し問答?に、とうとうシルファがしびれを切らした。

「ともかく、行くんだ!!」
「……分かりました」

 ため息をつきつつ同意する。タシュアのことになると、シルファは頑固なのだ。

 それにここで逆らったところで、医者に診てもらうまで、彼女が騒ぎつづけるのは間違いない。
 どうせ行き着く先が同じなら、先に済ませてしまうほうがいいだろう。

「んじゃ俺、車呼んできましょうか?」
「ああ、頼む」

 シルファの答えを背に、妙に気の利くイマドがフロントのほうへと駆けていった。
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