5 / 8
誠意が実る夜
しおりを挟む
チェックイン後、隣室には綾音の姉が待機。部屋には、事前通告通り弁護士・榊原律子が同席していた。
テーブルの上には、同意書2部、診断書の写し、記録用端末。
榊原が淡々と読み上げる。
「本件は、令和X年Y月Z日に内容証明郵便にて事前通知がなされ、 双方の意思確認および健康診断書の提出を経て、明示的合意が得られたものと認定いたします。江口様より事前通知の形で意思が示され、綾音様がそれに基づき、本日の合意確認に臨まれるという流れを経ています。本記録は、あくまで双方の同意に基づき、任意で進められるものであり、一方的な拘束を意図するものではありません」
綾音はそれを聞いて微笑んだ。
「……これ以上、証拠も安全もないね」
江口はそっと、彼女の手を取った。
記録は逐一タイムスタンプ付きで保存された。
「君のすべてに触れることが、記録という形で許されたこと。 でもそれ以上に、君の意思を信じられたことが、今夜いちばん嬉しい」
江口の言葉に、綾音は涙ぐんで小さく頷いた。
榊原弁護士は、部屋の記録端末を一度確認し、最後の記録を保存した。
「本件すべての行程における確認および記録を、第三者立会人として完了しました」
そう述べると、弁護士は端末を静かに閉じた。
綾音はバスローブを整え、少し緊張した面持ちで立ち上がると、榊原とともに隣室へ向かった。
そこでは、姉が待っていた。
テーブルの上には、「確認証明書」が用意されており、 その最終欄には“立会人による見届け後署名欄”が空白のまま残されていた。
榊原がペンを取り、静かに署名し、職印を押す。
そして姉がそれを確認し、頷いてサインを記入、印鑑を押すと、書面は正式に成立した。
綾音は深く礼をし、静かに呟いた。
「ありがとう……これで、すべてが終わった」
「ううん。始まったのよ。これからの信頼の、土台が」
姉はそう言って、綾音の肩をそっと抱いた。
「そうね。この夜は、“記録されてるから信じられる”じゃなくて、“信じてるから記録したい”って思える」
姉と榊原は隣の待機室へ移動し、部屋には江口と綾音の二人きりとなった。
夜は静かに更けていった。これが、世界初の”誠意の夜”であった。
テーブルの上には、同意書2部、診断書の写し、記録用端末。
榊原が淡々と読み上げる。
「本件は、令和X年Y月Z日に内容証明郵便にて事前通知がなされ、 双方の意思確認および健康診断書の提出を経て、明示的合意が得られたものと認定いたします。江口様より事前通知の形で意思が示され、綾音様がそれに基づき、本日の合意確認に臨まれるという流れを経ています。本記録は、あくまで双方の同意に基づき、任意で進められるものであり、一方的な拘束を意図するものではありません」
綾音はそれを聞いて微笑んだ。
「……これ以上、証拠も安全もないね」
江口はそっと、彼女の手を取った。
記録は逐一タイムスタンプ付きで保存された。
「君のすべてに触れることが、記録という形で許されたこと。 でもそれ以上に、君の意思を信じられたことが、今夜いちばん嬉しい」
江口の言葉に、綾音は涙ぐんで小さく頷いた。
榊原弁護士は、部屋の記録端末を一度確認し、最後の記録を保存した。
「本件すべての行程における確認および記録を、第三者立会人として完了しました」
そう述べると、弁護士は端末を静かに閉じた。
綾音はバスローブを整え、少し緊張した面持ちで立ち上がると、榊原とともに隣室へ向かった。
そこでは、姉が待っていた。
テーブルの上には、「確認証明書」が用意されており、 その最終欄には“立会人による見届け後署名欄”が空白のまま残されていた。
榊原がペンを取り、静かに署名し、職印を押す。
そして姉がそれを確認し、頷いてサインを記入、印鑑を押すと、書面は正式に成立した。
綾音は深く礼をし、静かに呟いた。
「ありがとう……これで、すべてが終わった」
「ううん。始まったのよ。これからの信頼の、土台が」
姉はそう言って、綾音の肩をそっと抱いた。
「そうね。この夜は、“記録されてるから信じられる”じゃなくて、“信じてるから記録したい”って思える」
姉と榊原は隣の待機室へ移動し、部屋には江口と綾音の二人きりとなった。
夜は静かに更けていった。これが、世界初の”誠意の夜”であった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました
cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。
そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。
双子の妹、澪に縁談を押し付ける。
両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。
「はじめまして」
そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。
なんてカッコイイ人なの……。
戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。
「澪、キミを探していたんだ」
「キミ以外はいらない」
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる