LEAFー愛は信頼の先にー

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誠意が実る夜

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チェックイン後、隣室には綾音の姉が待機。部屋には、事前通告通り弁護士・榊原律子が同席していた。
テーブルの上には、同意書2部、診断書の写し、記録用端末。
榊原が淡々と読み上げる。
「本件は、令和X年Y月Z日に内容証明郵便にて事前通知がなされ、 双方の意思確認および健康診断書の提出を経て、明示的合意が得られたものと認定いたします。江口様より事前通知の形で意思が示され、綾音様がそれに基づき、本日の合意確認に臨まれるという流れを経ています。本記録は、あくまで双方の同意に基づき、任意で進められるものであり、一方的な拘束を意図するものではありません」
綾音はそれを聞いて微笑んだ。
「……これ以上、証拠も安全もないね」
江口はそっと、彼女の手を取った。
記録は逐一タイムスタンプ付きで保存された。
「君のすべてに触れることが、記録という形で許されたこと。 でもそれ以上に、君の意思を信じられたことが、今夜いちばん嬉しい」
江口の言葉に、綾音は涙ぐんで小さく頷いた。
榊原弁護士は、部屋の記録端末を一度確認し、最後の記録を保存した。
「本件すべての行程における確認および記録を、第三者立会人として完了しました」
そう述べると、弁護士は端末を静かに閉じた。
綾音はバスローブを整え、少し緊張した面持ちで立ち上がると、榊原とともに隣室へ向かった。
そこでは、姉が待っていた。
テーブルの上には、「確認証明書」が用意されており、 その最終欄には“立会人による見届け後署名欄”が空白のまま残されていた。
榊原がペンを取り、静かに署名し、職印を押す。
そして姉がそれを確認し、頷いてサインを記入、印鑑を押すと、書面は正式に成立した。
綾音は深く礼をし、静かに呟いた。
「ありがとう……これで、すべてが終わった」
「ううん。始まったのよ。これからの信頼の、土台が」
姉はそう言って、綾音の肩をそっと抱いた。
「そうね。この夜は、“記録されてるから信じられる”じゃなくて、“信じてるから記録したい”って思える」

姉と榊原は隣の待機室へ移動し、部屋には江口と綾音の二人きりとなった。

夜は静かに更けていった。これが、世界初の”誠意の夜”であった。
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