手を振る朝

サンズイモドル

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幕間

契約

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 闇。
 光も音も、温度すら存在しない、絶対的な暗闇。
 その深淵で、二つの声が交わされる。

『終わりの時がきました』

 感情の欠落した、無機質な宣告。

「うん、わかってる」

 静かな受容。

『心残りは?』
「ひとつだけ」

 聡の声は、穏やかだが切実だった。

「『君のせいじゃない』って伝えたかった」
『なぜ?』
「起こしてあげなきゃ。朝、弱いから」

 それは、祈りのようにも聞こえた。

『提案があります。日の出まであなたを留めましょう』
「本当に?」

 微かな希望が灯る。

『対価さえ頂ければ』
「何が欲しいの?」
『魂を研究材料として提供して下さい』
「研究?」
『「心」の再現です』

 短い沈黙。だが、それは迷いではなかった。

「わかった」

 即答だった。

『契約成立です。一つだけ注意点を』

 声は淡々と、決定的な制約を告げる。

『……光を避けてください』
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