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case.3 愛◆2
しおりを挟むしかし何故か女の顔には安堵の表情が浮かんでいた。
音もなく地下牢へと入って来たその人物は、女の乳房を弄ぶ2人の男の背に銃を突きつけていた。
「····そんなにお前らは死に急ぎたいか。」
唐突に重低の声が脳内を刺激し、2人の男が驚愕の表情で振り返るとパーーンッッと何の躊躇いもなく二丁の引き金が引かれた。
額を打たれた2人の男がその場に身体を崩し倒れ込む。
女の背後にいたもう一人の男が引き金を引いた人物の顔を見据え、絶望の表情を造り上げる。
黒髪の男が静かに問い詰めた。
「····誰の許可でこんな所にいる?」
「え、ええと、」
「····何故女のスーツが裂かれている?」
「そ、それは」
背後の男が後退あとずさり、背中が壁に当たる。
と同時に黒髪の男が再び引き金を引き、男の額を一撃で捕えた。
3体の死体が女の周りに白目を剥きながら転がり、冷えた牢内にヴァンパイアの血をはべらせていく。
「生臭いな····」
黒髪の男が冷え切った赤い目を光らせ、死体を蹴り女の足元を空けていく。
「····何も殺すことなかったのに····。」
手足を鎖に拘束されながらも女が恐怖の色も見せず淡々と言った。
「お前の肌に触れさせるだけでも赦ゆるしがたい。」
黒髪の男が赤い目を女に向けると直ぐに女の唇を塞いだ。
「んっッ」
女の唇がゆっくりと濡れていく。
無理に舌をねじ込むことなく、女の唇の感触をしばし堪能するように甘噛みを施ほどこした。
「お前の香りに酔いしれそうだ。」
「ふっ····んッ」
黒髪の男が女の唇に触れるようなキスをすると女の鎖骨を指でなぞらえていく。
指の腹で撫でるように、そしてその後を追うように唇で這わせていく。
囁きかけるような唇で女の鎖骨に優しく触れ、胸の突起を掌全体で転がした。
「····あっっ、さっきの銃声で、人が来ちゃう····」
「····今の見張りはこいつらだけだ。
それにお前は俺だけのものだとあの世でも分からせないと気がすまん。」
「あっ」
「····感じていいのはこの俺だけだとこの身体にも調教する必要がある。」
先程の男達とは違い、甘く感じさせるためだけの愛撫だと男の表情から見てとれる。
無表情ながらも優しく女を見つめる姿は一人の女に愛を捧げる男の姿だった。
非情で冷徹と恐れられるヴァンパイアの男と、強く気高いハンターの女。
二人は敵同士でありながらも赦されない恋に囚われていた。
──────
ヴァンパイアとハンターの戦闘の最中、男と女の何時間にも及ぶ戦いが繰り広げられる。
だだっ広い草むらに横たわる両国の残骸。
生臭い血の臭いと女の甘い血の匂いが交差する。
ついに女は黒髪の男に組み敷かれ、剣を胸に突き立てられた。
息を荒げ、月夜に照らされながらも自分の上に股がる男に、しっかりとその瞳を見据え覚悟を決める女。
怯えることも縋ることも無く、自分を殺す相手を瞳に焼き付け最期を迎えようとする女の姿は酷く官能的な覚悟であった。
空まで血を翔ばせと女の鋭い眼光が男の赤い瞳を捕える。
交差する血の香りに酔ったか、女の覚悟に見入られたか。
男は胸に剣を突き立てる代わりに、白い息を吐く女の唇を自身の唇で塞いだ。
キスと呼ぶには弱いその口づけは、次第に女の胸を昂たかぶらせていく。
死の覚悟が赦されぬ恋情へと移り変わった瞬間だった。
決してヴァンパイアとハンターの目合まぐわい等赦されない。
両国の長きに渡る因縁は男女の愛一つでどうにか出来るようなものではなかった。
「····あの時貴方に殺されておけば良かった。」
女は自分の父親であるヴァン・ヘルシングの愛国心と自尊心に逆らう行為に、いずれ来るであろう無惨な死を覚悟していた。
首を翔ばされるか、四肢を翔ばされるか。
自分だけではない。
男も自国に処刑されることは免れないだろう。
それなら自分を愛してくれる男に一刻も早く殺されるのが本望だと紡ぐばかりだが、
男はそれを叶えてはくれなかった。
「屍になってもお前は美しいだろうな。
だが」
破かれていないスーツの下に男の長い指が入れられていく。
濡れそぼる秘部にトントンと入り口を指の腹で蓋をするように開閉した。
男の指が女の秘部に吸い付くのを躊躇うように。
「ん····ぁあっ」
「それでは俺に溺れるお前の声が聞けん。」
なんて非情な男なのか。
そう思いながらも男の非情さに疼いてしまう女の身体は既に調教されつつあった。
「早く侵入を赦せとお前のここが俺に訴えかけてくる。」
指をトントンと離す度に糸を引き始め、やがて水音が牢内に響き渡る。
「ああッッ!!」
男の指に夢中になっている秘部が熱いもので溢れ出ると羞恥が掻き乱され、女が身をよじらせた。
男がその様子に吐息を漏らしながらも指の動きを変えていく。
中に侵入しないよう気を計らいながら二本の指を前後に滑らせ、時折二本で左右を挟むようにする。
女の唇から「早く」と声が漏れそうになり、男も女の期待するような潤んだ瞳に何度も気を赦しそうになった。
しかし男は決してその期待には応えない。
息を荒げ顔を火照らせながらも女のスーツから手を引き抜いた。
「まだだ。」
男が女の足元に跪ひざまずくと、女の片方の足枷を小さな鍵で外していく。
片方の足が自由になると男が携えるナイフで女のスーツを下へと切れ込みを入れ、
待ち切れない様子で一気にスーツを後ろまで引き裂く。
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