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case.3 愛◆3
しおりを挟む男が女の太ももを掴み糸を引くそこを覗き込むようにしゃがむと、女が足を閉じようと、男に掴まれた手から逃れようとする。
「っだめ····見ないで····」
「····何故だ」
「な、何故って····き、汚ないから····」
「····それはこの3体に弄もてあそばれたからか?」
「違うっ····そういう意味じゃなくて、」
「では消毒する必要があるな。」
「あッッ」
無理矢理掴まれた太ももをこじ開けられ、そこが男の顔前に晒される。
溢れ出るものを勿体無いとでもいうように男が舌を出し受け止めると、そのまま一気に女の秘部へと吸い付いた。
「んああああ····ああッッッ」
突如絞られるような刺激に抑えきれない声が溢れ、牢内四方の壁を跳ね返り女の鼓膜へと反響する。
女の声を確かめながらも男が吸引の強弱をつけていった。
声が途切れ途切れになる頃には背筋を羽で撫でられるような感覚へと移り変わる。
舌を割れ目に沿ってなぞられ、赤く膨らむ芽を指の腹で転がされて
強すぎず弱すぎない一定の刺激が女の腰を前へ前へと男の指に擦るように動いていった。
羞恥と愛する男に愛撫される悦びが全身を駆け巡り、脳内をぐらぐらと揺らす。
2人が敵国の同士であること等全て忘れ去らせるくらいに。
何故自分たちはヴァンパイアとハンターなのか、
何故自分たちは同国に産まれなかったのか、
何故、何故····
いつもそれに辿り着く先は、自分等産まれてこなければ良かったと存在意義の否定に繋がる。
でも快楽だけはそんな意義も全てどうでもよいことに思わせてくれた。
いつか2人の愛が報われる日が来るのではないかと、甘い甘い夢をこの非情な男は女に与え続けていた。
甘い刺激に果て項垂うなだれる女。
男が立ち上がりその長い髪に唇を落とした。
女の脳内を駆け巡る快楽の神経回路にドーパミンが余韻を残していく。
「お前を快楽の渦に陥れられるのはこの俺だけだ。俺に溺愛されているのだと自覚しろ。」
頬を両手で挟まれ、女の虚ろな目が男の赤い瞳に向けられる。
その赤には囚われた自分の姿が映っていると女が陶酔の息を漏らした。
男が女の髪を後ろへとやると、首とうなじの間に小さく牙を立て吸血する。
女の全身を這い回る血液が男の喉へと繋がると、男の心が女の甘い血に満たされていった。
しかし
「····もうずっと前から私は貴方だけのものなのに····」
女が憮然な表情で言い淀む。
男がそれを見て取るとわざとらしく投げ掛けた。
「····なんだ?」
「───なぜ、貴方は····」
───私の中に侵入して来ないのか───
2人で快楽の渦に溺れることができればどれだけ幸せだろう。
自分が与えられる快楽を男にも与えられればその先どれだけ深く愛し合えるだろう。
自分ばかりが満たされていることに女はどうしても理解し得なかった。
「満たされないものこそお前を繋ぎとめておく鎖だ。」
「····私は貴方以外誰にも揺らがないのに。」
····女の心が他のものに揺らぐ不安が全くないわけではないが─────
只今まで男を知らず、戦いばかりに明け暮れてきた彼女を大切に想う気持ちもあった。
いつしか2人の愛が認められた時こそ身も心も満ちるのであろうと。
男がその考えを口にすることはなく全てその身で感じろと女の首元にキスの雨を降らせていく。
───『甘い男だね。』────
───『あんたの大事なもの、芯から奪うっちゃうよ?』────
足元に転がる死体の血がいつの間にか黒に染まっているとも知らずに─────
~case3. fin~
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