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しおりを挟む「ちょっと、おろして!!」
「レナータ。夜は私たちの寝室か、隣のレナータの部屋にいてと、お願いしたはずだよね?」
「お義母様とお話があったの!!」
「ふうん?」
ラッセルはレナータの言葉を軽く聞き流し、長い脚であっという間にレナータの部屋に到着してしまった。
マリーに世話がしにくいと言われ、レナータは夫婦の部屋に戻っている。
寝室のシーツを替えている間、私室のベッドに横になることができるというのが理由だ。
一緒に寝るようになってから、ラッセルは毎日毎日、違う愛撫を試みてくる。とてもあの規則正しい交わりをしていた人には思えない。
「湯を浴びてくる。すぐ戻るから絶対にこの部屋にいて」
レナータの部屋の、いつもの椅子に降ろしながらラッセルが言う。
レナータは早い時間に済ませていたのでもう寝るだけだ。
「ゆっくりしてきて。私はここで本を読んで待ってるから」
「いや、一秒が惜しい」
「……(なぜ……)……」
ラッセルは部屋を出る前に振り返り、「絶対だよ」と念を押した。
(正しい夫はどこへいってしまったの? おかしいわ……そもそも帰宅して慌ただしく私を抱こうとするような人じゃなかったはず)
呆然としながら、ここ最近のことを考える。
「レナータに飽きられたくない」
そう言いながら、ラッセルにひたすら手の指の間を舐られた日のこと。
「もう何度謝れば許してくれるの? あなたに優しく普通に抱かれるのが……好きなのに」
「いいや。絶対にレイモンドよりレナータを気持ちよくできると、私自身が納得いくまで試みる」
「ねぇ……あなた最近ちょっと馬鹿になったのでは?」
「そうだな。レナータを失うぐらいなら、馬鹿でいい」
「はぁ……おかしい……私の大好きな夫は、こんなことを呟く人じゃなかったはず」
ラッセルは打倒レイモンドを掲げている。
いくらレイモンドに懸想したことなどないと言っても聞いてくれないのだ。
そもそもレイモンドがミシェルをどう抱いているかなんて知らないのに。
というより、夫婦の問題はそこじゃなかったはずだ。
レナータは、ラッセルを罵倒したときに閨の話を持ち出したことを後悔していた。
そしてそれが、最近の一番の悩みでもある。
(おかしい……私はもっと深刻な悩みを持っていたはずなのに……)
「なんだか考えるのが馬鹿らしくなってきたわ」
「レナータは真面目に考えすぎなんだよ」
「ラッセルがそれを言うの!?」
ラッセルは何故か得意気な顔をして笑い、舐っていた指を開放したかと思えば、二の腕の内側に吸い付いた……。もはやレナータの想像を超えており、ついていけない。
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