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化粧水は呆気なく商品化された。売れ行きも上々のようである。
今は市井でしか販売していないが、美しい瓶に入れて貴族に売ってはどうかというところまできている。
父は貿易はさっぱりらしいが、物づくりの資質は持っていたようだ。
発想という点が問題で、それを解決してくれる人がいなかったため、売れる商品が作れなかったのだろう。
ファビオの頬は思春期のせいもあって完治は難しかったけれど、部屋にこもることはなくなっていった。
クリスティーヌは野菜嫌いで肉ばかり食べるファビオの食生活もよくないのではと思っていたため、父にこっそり相談して食事の改善を試みた。
やはりこの知識もタルコット公爵家で読んだ書物のお陰である。あの家の図書室には王都で売っている本は全て揃っていたと言っても過言ではない。
そして。
悪いこともだが、良いことというのも案外続くものである。
クリスティーヌが前世を思い出してから一年経ったころ、父が義母とコレッティ子爵の信用を取り戻すような商品を作りたいと言ってアイディアを求めてきたのだ。
(そろそろとは思っていたから好都合だけど、六歳の娘にアイディアをねだるってどうなのよ……)
若干顔を引き攣らせながらも、義母のための商品のアイディアを披露する。
父の膝の上であることは考えないようにした。
「スズランっていうお花がいい香りなんだそうです」
「スズランか……あまり馴染みがないな」
これもタルコット公爵家でお世話になっていたころ、レイにお土産でもらった香水の中に珍しいスズランの香水があったのだ。
(先に出してしまう申し訳なさはあるけれど、薔薇の香りだってジャスミンの香りだって、色んなお店が出してるのだから、スズランだっていいよね?)
「図鑑で見たスズランがお義母様のように綺麗だったので、お義母様の名前の香水にするのはどうですか?」
クリスティーヌが知る限りでは、クリスティーヌが生まれる前から、二人は寝室を共にしていない。
父の不貞が先だったと噂する人もいれば、先に父を寝室から追い出したのは義母だという人もいた。
(真実は重要じゃないわ。お父様とお義母様の仲が改善するのが重要だもの)
「なるほど? ベルタという名は美しいという意味だし、それは良い案だな」
作り方を調べる必要はない。
父の持つ工場では香水も作っているからだ。
「しかしクリスティーヌは、一体どこでそんな知識を得ているんだろうね?」
不意にかけられた言葉に心臓が跳ね上がった。
貴族らしい笑みを向けられ、背中がすっと冷えたような気もする。
「色んなご本を、読んでもらってるんです」
「ほう?」
父がチラリとカリナを見たが、カリナは表情を変えることなくお辞儀をしていた。
「まぁ、いいだろう。そういうことにしておこう」
ニッコリ。
父が貴族らしい笑顔をクリスティーヌに向ける。
(お父様がこの笑顔のときは危ないわ……少しお父様を侮り過ぎていたかも。もうアイディアを出すのはこの辺りで終わりにしておこう……)
関係の改善は今後の為に必要ではあるが、何事もやり過ぎはよくない。
最近、やけにクリスティーヌに話しかけてくるようになったファビオにも気を付けなければならない。近付き過ぎて運命が急激に変化するのが怖いからだ。
(あとはどうやって学園に行かずに済ませるかよね……)
前回までのループでは、ファビオは学園に通っていなかった。
今回は引きこもっていないので恐らく通うだろう。
(お義兄様が学園に通って、すごくお金がかかるからというのを理由にして行くのをやめようかな?)
父が納得するかが問題だが、まだ時間はある。
家庭教師だけで十分だと徐々に示して行こう。
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