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(私……もしかしてもう死んでて……彼女は女神なのでは……)

 思わず手の平を握ったり開いたりしてしまう。


「待って、今って何日!?」

 部屋には日付がわかるようなものがなかった。

(どうしよう……修道院の見学の日が過ぎちゃってるかも)

 自分が何日寝ていたのかもわからない。
 体のだるさは熱の後と言われれば確かにと頷くぐらいのものではある。
 根が真面目なアルヤは、見学の申し込みをしたのに連絡もなしにすっぽかすというのは、その修道院にはもう入れないという気持ちにさせるぐらいの出来事だ。

 もぞもぞしてみたものの落ち着かず、とうとうベッドから出ようとしたところで扉がノックされた。

「はい。どうぞ」

 ひょこっと顔だけのぞかせたのは、カールだった。

「ええええ…………!!」

 もう驚き過ぎて開いた口が塞がらない。
 そういえば「うちの護衛が」と先ほどの女性も言っていたな、と頭の片隅にあった記憶をようやく引きずり出した。

「アルヤさん、めっちゃ熱あったんだよ……心配した」

「えっと、カール……さま?」

「うん。ヴィルヘルミイナに用があって、その帰りに倒れそうなアルヤさんを見つけて、びっくりしたよ。なんであんな雨の中あそこにいたのか疑問だったから、ちょっと調べさせてもらったよ」

「助けてくださって、ありがとうございました……ん? 調べる?」

「ベルツ子爵令息に置いて行かれたんだね」

 顔だけ器用に扉からのぞかせているカールは、眉を寄せて不穏な顔をしている。
 どうやって調べたのだろうと思いながらも、それを口にするのは憚られた。

「ああぁ……はい……そうです」

 カールはいっそう眉根を寄せながら口を開いた。

「とりあえず熱が下がったって聞いて安心したけど、まだ病み上がりだから気を付けてね」

「はい。ありがとうございます……あ!!」

「なに?」

 顔を引っ込めようとしていたカールが、再び顔を出す。

 淑女の寝ている部屋には入らないという配慮なのだろう。
 顔だけぴょこぴょこ出し入れしているのが可愛い。

 今まで見てきた無口でクールな彼の一面は何だったのだろうか。

「今日って何日ですか!?」

「三日だけど?」

「三日!? 私、二日も寝込んでたの!?」

 ゴットロープとのデートは一日だった。
 申し込んである修道院の見学は四日だ。
 明日、この体調で修道院へ向かうのは無理だろう。
 体がまだふわふわしている。

「そうだよ。でもお水とかは飲んでたみたいだし、会話は成り立ってたってアンさんが言ってたけど……それも無意識だったんだねぇ」

 アンとは、先ほどの女性だろうか。
 アルヤは頷いているカールに向かって声をかけた。

「あの、カール様!!」

「ん?」

「お願いしたいことがあるのですが……」

 そうしてアルヤはカールに修道院への伝言を頼んだのであった。




 * * *
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