【完結】愛しい人、妹が好きなら私は身を引きます。

王冠

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13 アリーシャ視点

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パーティーの次の日、私は酷い二日酔いで昼まで起き上がれなかった。お酒をあんなに飲んだのは初めてで、お義兄様が隣にいてくれて良かったと思った。


「私達は結ばれないのかしら…」


自分が呟いた言葉に、心臓を深く抉られた気がした。親が決めた婚約、それが私の前に立ち塞がっていて越えられない。


「愛してるよ、なんて…信じちゃいけなかったの…?」


姿を見れば嬉しくなって、声を聞いて、視線を合わせば熱に浮かされるみたいになる。


「私にくれたプレゼントも…ただの遊びの延長線?」


箱を開ければキラキラと輝く宝石が、センスのいいデザインに行儀よく座っている。


「でも…これは特別だって…だから大丈夫だって…信じて…待っていたのに…」


わかっている。
本当はちゃんとわかっているの。
婚約者がいる人を好きになっちゃいけないって。


「こんなに好きになっちゃって…私はどうすればいいの…」


涙が頬を伝う。窓の外を見れば、雨が降り出していた。ザァザァと窓に当たる水滴が流れるのを眺めながら、私の想いも一緒に流れたら良いのにと思った。


「この雨に当たれば、全て流してくれないかしら」


気付けば窓に近寄って、暗い空を見つめる。次第に強くなって来た雨は、庭園の花に潤いを与えるのだろう。


「私の潤いは何なのかしらね」


報われない、禁じられた恋。
叶う事がなくても良いと思えていた。でも、それでも。

目が合うたび恋をして、人目を忍んで話をするたび愛が生まれた。


「…無理な事はわかっていたのにね…」


私は庭園の花に目を移した。綺麗に咲いて、人知れず枯れるその花に自分の想いを重ねてしまった。


「お姉様の庭園は綺麗な花がいつも咲くわね……え…?」


ふとお姉様がお世話をしている薔薇園を見たら、激しく降る雨の中に立ち尽くす人が見えた。誰かしら、雨でよく見えないけれど…不審者かしら…。


「誰かしら……え!?」


鈍く光るあの色は、まさか。
私は慌てて部屋を出た。


そこに立ち尽くしているのは、お義兄様だった。


「お義兄様!!!」


私は傘を持ち、ドレスが汚れるのも構わず走った。
どうしたの、今日はお姉様とランチだったはず。
こんな雨の中…風邪でも引いたら…!


「お義兄様!!?……っ!?」


お義兄様の所にたどり着いた私は、その顔を見た瞬間に言葉を失った。
お義兄様はずぶ濡れになったまま、呆然と空いた椅子を見ている。料理は雨でぐしゃぐしゃになっていた。お義兄様を改めて見ると目に生気は無く、薄く開いた口からは「ティアラ…」と囁くような声が聞こえた。


「お義兄様!?どうしたの!?お義兄様!?」
「……嫌だ……俺……」
「お義兄様!?お姉様はどうしたの!?ねぇったら!!」
「……ティ……行かな……」
「ん、もう!!!しっかりしなさいよ!!!」


ばちん!!!私はずぶ濡れになりながら、譫言を繰り返すお義兄様の頬を力一杯叩いた。
ぐらり、とお義兄様の身体が揺れて、ばしゃんとその場に尻餅をつく。


「お姉様はどうしたの!!」
「あ…アリーシャ…ティアラ…ティアラが……」
「お姉様が!?」
「こ、婚約を解消したいって……俺…」
「はぁ!?何でそうなるのよ!!!」


ぶるぶると震えているお義兄様は寒いのか、それともショックで震えているのか。ただ、どちらにせよいつもの頼りになるお義兄様はどこにもいなかった。


怯えて、現実を受け入れられないような、そんな感じだ。


「…中に入りましょう、このままじゃいけないわ」


座り込んだまま魂が抜けたようなお義兄様を半ば引きずるようにして、屋敷の近くまで来た時使用人が気付いて手を貸してくれた。


「とりあえずお義兄様をお風呂に。私もお風呂に入るわ、ずぶ濡れだから」
「お、お嬢様!!きゃあっ!!大変!!」


侍女のリナが顔を真っ青にして私を浴室に連れて行く。びしょ濡れのドレスを脱がし、温かい湯に浸けられた。


「どうされたんですか、お嬢様。リュダール様もずぶ濡れで」
「ねぇ、お姉様は?」
「え?ティアラお嬢様は少し前に、お出掛けになりましたよ?」
「…え?」


ぞわり、と嫌な感じがした。温かい湯に浸かっているのにまるで冬の池に落ちたみたいに身体が冷えて行く。


「私…この感覚…どこかで…」


いけない、と直感的に思った。

私は、人生の中でこの時ほど慌てて浴室から飛び出した事はない。











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