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第一章:アルテイルの扉
【8】帰還
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「ジェイド! ジェイドしっかりして!」
俺はミレイユの声で意識を取り戻した。
ハッとなって慌てて体を起こす。
すぐ横には件の魔法陣。
どうやら場所は変わっていないみたいだ。
「……俺はどれぐらい気を失ってた?」
油断した。
魔法陣は魔力を流さないと起動しないから、触っても問題ないと思ってのだが……。
「少しだけだよ。たぶん20秒ぐらい」
「そうか」
不幸中の幸いだ。
これが上層で強力なモンスターの近くだったら終わっていた。
「罠が仕掛けられてるの?」
「いや……」
脳内に響いた謎の男の声。
(あの声はなんだったんだ? 堕落の時代? アルテイルの扉の向こうから聞こえたってことは、俺の前世に関係あるのか?)
俺は注意深く魔法陣を見た。
特に何か罠が仕掛けてあるとかそういうのはなさそうだ。
もしかしたら一回発動すると消えてしまったのかと思ったが、それらしい魔力の痕跡もない。
だが……。
「これはまだ使わない方が良さそうだな」
「どうして? これを使えば100階に行けるんだよね?」
「ああ。でも魔法陣の向こう側がどうなってるかわからない。この分だとモンスターの巣になっていても不思議じゃないからな」
純粋な戦闘力なら負けることはないと思うが、問題は持久力だ。
まだ前世の力を取り戻していない俺は、そんなに古代魔法を乱発できない。
一万年以上も人間が足を踏み入れていない100階には大量のモンスターが蠢いているかもしれない。
もしもそうだったら、きっと殲滅の前に俺の魔力が底を付くだろう。
「じゃあここは諦めるの?」
「いや、今はまだ使わないってだけだ。準備ができたら、むしろ積極的に使っていく」
俺はもう一つの隠し通路も確認しておくことにした。
70階に続く一本道。
こっちは魔法陣じゃないから、先の様子を確認しながら進むことができる。
俺はこの道を当面のメインルートにしようと思っていた。
だが……。
「こりゃ……、無理そうだね」
「ああ……」
さっきの魔法陣の時よりも、もっとひどい。
長年に渡って誰も通らなかった道は、もう道ではなくなっていた。
平らなところが一切見当たらない地面、どこまでも続く森林。
「これじゃあ70階まで魔法を撃ちながら進まないと無理だな。魔法の修行にはなりそうだけどな。とりあえず道の確認はできたし、一度戻るか」
「え? もう戻っちゃうの? 私はまだ戦えるよ?」
「素材をもう持てないからな。エクステンデッドバッグがないと、赤字になる」
エクステンデッドバッグというのは、魔法で容量を増やしたカバンのことだ。
重さも無視できるので、天上の塔で手に入れた大量の素材を持ち帰ることができる。
かなり値段が張るので、『ソウルフレイム』にいた頃はシーフに任せていた。
野良パーティでもシーフが素材を持ち運びを担当する場合が多い。
「シーフが入る予定はないし、俺達もなんとかして自分達のエクステンデッドバッグを手に入れないと」
「そうだね。じゃあ今日はもう戻ろっか」
俺達は転移水晶を使う必要に迫られることもなく、無事に街へと帰還した。
帰り道で俺は考えていた。
この分だと天上の塔の攻略に必要なアイテムを手に入れるのに時間がかかりそうだ、と。
(これは……。ミレイユの言う通り、50階ぐらいで稼ぐのが現実的かもな)
ミレイユには調子に乗るなと言ったが、本音を言えば俺もそろそろ古代魔法を遠慮なくぶっ放したいと思っていたところだ。
俺はミレイユの声で意識を取り戻した。
ハッとなって慌てて体を起こす。
すぐ横には件の魔法陣。
どうやら場所は変わっていないみたいだ。
「……俺はどれぐらい気を失ってた?」
油断した。
魔法陣は魔力を流さないと起動しないから、触っても問題ないと思ってのだが……。
「少しだけだよ。たぶん20秒ぐらい」
「そうか」
不幸中の幸いだ。
これが上層で強力なモンスターの近くだったら終わっていた。
「罠が仕掛けられてるの?」
「いや……」
脳内に響いた謎の男の声。
(あの声はなんだったんだ? 堕落の時代? アルテイルの扉の向こうから聞こえたってことは、俺の前世に関係あるのか?)
俺は注意深く魔法陣を見た。
特に何か罠が仕掛けてあるとかそういうのはなさそうだ。
もしかしたら一回発動すると消えてしまったのかと思ったが、それらしい魔力の痕跡もない。
だが……。
「これはまだ使わない方が良さそうだな」
「どうして? これを使えば100階に行けるんだよね?」
「ああ。でも魔法陣の向こう側がどうなってるかわからない。この分だとモンスターの巣になっていても不思議じゃないからな」
純粋な戦闘力なら負けることはないと思うが、問題は持久力だ。
まだ前世の力を取り戻していない俺は、そんなに古代魔法を乱発できない。
一万年以上も人間が足を踏み入れていない100階には大量のモンスターが蠢いているかもしれない。
もしもそうだったら、きっと殲滅の前に俺の魔力が底を付くだろう。
「じゃあここは諦めるの?」
「いや、今はまだ使わないってだけだ。準備ができたら、むしろ積極的に使っていく」
俺はもう一つの隠し通路も確認しておくことにした。
70階に続く一本道。
こっちは魔法陣じゃないから、先の様子を確認しながら進むことができる。
俺はこの道を当面のメインルートにしようと思っていた。
だが……。
「こりゃ……、無理そうだね」
「ああ……」
さっきの魔法陣の時よりも、もっとひどい。
長年に渡って誰も通らなかった道は、もう道ではなくなっていた。
平らなところが一切見当たらない地面、どこまでも続く森林。
「これじゃあ70階まで魔法を撃ちながら進まないと無理だな。魔法の修行にはなりそうだけどな。とりあえず道の確認はできたし、一度戻るか」
「え? もう戻っちゃうの? 私はまだ戦えるよ?」
「素材をもう持てないからな。エクステンデッドバッグがないと、赤字になる」
エクステンデッドバッグというのは、魔法で容量を増やしたカバンのことだ。
重さも無視できるので、天上の塔で手に入れた大量の素材を持ち帰ることができる。
かなり値段が張るので、『ソウルフレイム』にいた頃はシーフに任せていた。
野良パーティでもシーフが素材を持ち運びを担当する場合が多い。
「シーフが入る予定はないし、俺達もなんとかして自分達のエクステンデッドバッグを手に入れないと」
「そうだね。じゃあ今日はもう戻ろっか」
俺達は転移水晶を使う必要に迫られることもなく、無事に街へと帰還した。
帰り道で俺は考えていた。
この分だと天上の塔の攻略に必要なアイテムを手に入れるのに時間がかかりそうだ、と。
(これは……。ミレイユの言う通り、50階ぐらいで稼ぐのが現実的かもな)
ミレイユには調子に乗るなと言ったが、本音を言えば俺もそろそろ古代魔法を遠慮なくぶっ放したいと思っていたところだ。
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