役に立たないと冒険者クランをクビになった俺は、実は転生した最強の古代魔法使いだった

ゆゆぽりずむ

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第一章:アルテイルの扉

【7】魔法陣

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一階でのミレイユの戦い振りを見た俺の感想は『予想よりは良いが上層に挑むには厳しそうだ』といったところだろうか。
だが俺はそれ以上に深刻なことに気がついた。

いや、思い出したと言った方がいいか……。

「はっ! ムーンスラッシュ!」

ミレイユの剣術スキルがオークの体を切り裂いた。
分厚い脂肪の下にある筋肉を切り裂かれて、オークは悲鳴を上げながら血飛沫を撒き散らした。

人間であればそろそろ死に至る水準の出血だが、こいつにとってはまだ行動可能な段階だ。
オークの変異種の中には、血液の代わりにスライムを体内に巡回させるような奴もいたはずだから、これは別に不思議なことじゃない。

魔物にとって、血液は生きるために必須の要素とは限らない。

「まだまだっ! ムーンクレイドル!」

「オォォォォォォォ!」

 ミレイユが素早い剣さばきで追撃に入った。
 頭部への剣が致命傷となり、オークはついに倒れて動かなくなった。

「ふう……」

「おつかれ。俺の助けは必要なかったな」

「うん。どう? ちゃんと一人でも倒せたよ?」

「ああ、大したもんだ」

ミレイユとハイタッチしながら、俺は内心で彼女に厳しい評価を下していた。

確かにこの階層は問題なさそうだ。
50階ぐらいまで行っても、援護があれば通用するかもしれない。

……だがそこまでだ。

重要なのはあくまでも一千階付近で通用するかどうかだ。
もっと言えば、この天上の塔を制覇できる水準にあるかどうかということになる。

その観点から見れば、正直言って難しい。

(俺も昔の力を全部取り戻したわけじゃないし、一緒に鍛えるしかなさそうだな)

「ジェイドー。一階は楽勝みたいだしさ、一気に十階刻みとかで進んでもいいんじゃない? なんなら最前線の50階以上でもいいよ?」

「こら、調子に乗るな。どんな実力者だって、舐めて掛かったら実力は発揮できないんだぞ? 実力を出せない実力者なんて、その辺の雑魚と同じだ」

 功を焦って突き進んだ結果が無残な死では目も当てられない。

「せめて『亡者の嫌がらせ』を手に入れてからだな。無理をするのは」

「ああ、死にそうになったときに生かしてくれる呪いのアイテムだね」

「そう。代わりに痛みが凄いけどな。とにかく、まずは低層で稼いで装備と物資を十分に揃えておきたい。俺もお前も、長期の遠征に向いた装備はあまり持ってないだろ?」

「確かに。日帰りとか数日ぐらいならいいけど、それ以上はちょっとね」

 だが金を稼ごうと思ったら危険度の高い上階の方が早いというのも事実だ。

「とりあえず、ここで少しぐらいは稼いでから上に行こう。先にこの階のルートの確認もしないといけないしな」

「そうだね。私はさっさと進みたいけど。そっちの方が早く稼げるし」

そういえばこいつは金に困ってたんだっけか?

「とりあえず、今日は一階だけだ。上に行くのは次以降にしよう」

「あーい」

俺達は敵を倒して素材を剥ぎ取りながら、一階を確認して回った。
ミレイユの実力はわかったので、俺も古代魔法を使って感触を確かめた。

今の俺の魔力で問題なく使えるのは……。

炎の【フレアサークル】、土の【ヴァニッシュ】、風の【フィアフル】、水の【インブレイズ】、
身体強化の【ヴォルテック】、治癒の【リザレクション】、移動の【フラッシュ】、防御の【テラー】。

以上の8つだけだ。

古代魔法は他にも色々とあるが、現状はこんなところだろう。
味方の被害を気にしないのなら、呪いの【カイラース】なんかも使えるが、間違いなくミレイユが死ぬのでやめておいた方がいいだろう。

結果から言ってしまうと、一階の探索は楽勝だった。
そう、探索は。

「これは……だめだな」

100階付近まで行ける魔法陣へ行けるはずの隠し通路。
俺はそこが無数の大木で塞がれているのを見て肩を落とした。

なるほど、これなら現代で魔法陣が発見されていないわけだ。
わざわざこの木々を排除して先を見てみようなんて思うやつはいないだろう。

「どうするジェイド? ジェイドの魔法なら燃やせるんだよね?」

「ああ、もちろんだ」

現代魔法には手に負えない木々も、俺の古代魔法ならいける。
俺は本日二度目のフレアサークルを放った。

衝撃と熱波、そして炎で燃えていく大木達。
インブレイズの水流で消化ついでに邪魔な木を押し流してやると、その先には俺の期待通りの道が現れた。

「よし、いこう」

「うん、そうだね」

俺達はしばらく進んで、小さな神殿のような場所へと辿り着いた。
建物は全部が石で出来ているが、不自然に真新しい。

保全の魔法が掛かっているせいだ。
俺は躊躇うこと無く中へと入った。

来訪者を感知して、石の扉が自動的に開いていく。

「わわっ、すごい!」

ミレイユはこういうのを見るのが初めてだったらしい。

無理もない。
いわゆるロストテクノロジーってやつだ。

「あった。あったぞ」

俺は思わず呟いた。
薄暗い神殿の中で、一箇所だけ地面が青く光っている。

「ジェイド、これが100階に行けるっていう魔法陣なの?」

「ああ、そうだ。間違いない、まだ生きてる」

俺はそう言いながら魔法陣に触れた。
その瞬間、俺の全身に電流のような何かが走った。

「ジェイド!」

一度だけ跳ねるように体を仰け反らせた俺の脳裏に、アルテイルの扉が映し出された。
この天上の塔の頂上にあるその扉が少しだけ開き、奥の暗闇から男の言葉が響いた。

『いいかジェイド? これからは全てを奪える時代だ。技も力も、知識や経験も、これからは全部がスキルとして手に入るんだ。そう……堕落の時代が始まるのさ』
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