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第一章:アルテイルの扉
【12】デビルデーモン
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ドドドドドドドッ!
「インブレイズ!」
ドォォォォォォンッ!
俺はミレイユを引き連れて天上の塔を疾走していた。
進行方向に魔物を見つければ即座に叩き潰し、少しでもショートカットできそうな場所があれば障害物を吹き飛ばして新たな道を作っていく。
「なんだ?!」
「おいおい……。まさか、ネームドモンスターか?!」
「気をつけろ! 尋常じゃないぞ!」
「もしかして、上の階からヤバイ魔物が降りてきたんじゃないのか?!」
天上の塔を攻略していた他のパーティ達は、突如来襲した暴風に慌てふためいた。
いや、混乱の底まで叩き落されたのは人間だけじゃない。
「ギャッギャッ?!」
「キィィィィィィッ!」
生存本能に忠実な魔物達の反応はもっと素直だ。
普段ならば塔内に入り込んでくる人間をただの餌としか思っていないようなモンスター達が、絶対強者の気配を感じて慌てて逃げていく。
逃げ切れなかったモンスターの運命は二つしかない。
つまり細切れにされるか、燃やされて灰になるかだけだ。
「消えろ!」
俺は右手で風の【フィアフル】を、左手で炎の【フレアサークル】を同時に放った。
空を飛ぶ怪鳥の群れを無限とも錯覚するほどに切り刻み、正面を塞ぐ大角獣達を地面ごと業火で吹き飛ばす。
「ミレイユ! まだ走れるか?!」
「うん! 大丈夫!」
「よし! このまま40階に突っ込むぞ!」
茫然自失。
俺達が過ぎ去った後に降り始めた血の雨と灰の雪を浴びながら、人間も魔物も等しく言葉を失っていた。
「なんだったんだ? 今の……」
「俺に聞いたって、わかるわけねぇだろ……」
この時に俺達を見た連中によって、上層の強力なネームドモンスターが下に降りてきたなんて噂が立つ事になるわけだが、それはまた別の話としよう。
さて、天上の塔に突入してから三日目。
……俺達はついに目的の50階へとたどり着いた。
小高い丘が点在する密林地帯だ。
「……ついたぞ」
「ふう。さすがに速いね」
普通ならば一ヶ月以上掛かる道のりを、俺達は三日で踏破した。
いや……。
出発したのは初日の昼前で、今は三日目の昼過ぎだから、実質的には二日程度ということになるか。
移動速度を強化してくれる古代魔法【フラッシュ】がなければ実現不可能な数字だ。
「よし、さっそく獲物を探そう」
「うん。……って言っても、私にはどの魔物の素材が高いかなんてわかんないや」
「いいさ。……言っただろ? お前は自分の身の安全と素材を持ち帰ることだけ考えてればいいって」
「う、うん……」
俺と視線を合わせたミレイユの顔が少し赤くなった。
「……大丈夫か? 疲れたなら少し休んでからにするか?」
「ううん、大丈夫。それより早く獲物を探そうよ」
「どれ。念の為だ、ちょっとだけ見せてみろ」
「え?! いや、いいよ!? 大丈夫! 大丈夫だから!」
俺がミレイユの手を取って顔を近づけると、彼女の顔はさらに赤くなった。
焦点が定まらないのか、ひっきりなしに視線が泳いでいる。
……本当に大丈夫なのか?
(いや、無理もないか)
爵位を無事に買えるかどうかで、ミレイユとミレイユの母親は今後の人生が大きく変わる。
俺が彼女の立場だったとしても、無理してもいいから少しでも早く金を手に入れたいと思うだろう。
そう考えると、ミレイユがここで自分の不調を隠そうとしても不思議はない。
だがここは塔の中だ。
少しの異変も大事へとつながる。
だから不安の芽は早めに摘んでおかなければならない。
「顔が真っ赤だぞ? まさか毒か病気を移されたんじゃないだろうな? ここで死んだら元も子もないんだ、おかしいと思ったらすぐに俺に言えよ?」
「ち、違う……。そうじゃなくて……。ジェイド、顔が近――」
俺はミレイユの額に手を触れた。
「~~!?」
彼女はもう全身を真っ赤にして言葉も出せずに震えている。
間違いない。
途中で何かの病気に感染したんだ。
「熱があるな……。全く、無理しやがって。まあ気持ちはわかるけどな」
「え?! うそ……。ジェイド、私の気持ちに……ついに、気づいて……?」
俺はミレイユに治癒の【リザレクション】を掛けた。
これなら死以外の全ての傷や病気を治すことが可能だ。
「よし、これで大丈夫だ」
これで狩りに集中できる。
俺はミレイユから離れると、改めて周辺の様子を確認し始めた。
「……全然わかってない」
「ん? 何か言ったか?」
「なんでもない!」
「?」
どういうわけか、ミレイユの機嫌が急に悪くなってしまった。
いったいどうしたというのだろうか?
俺がそれを考えようとした直後だ。
ドォォォォンッ!!!!
「……ジェイド。なに、今の音?」
遠くで大きな爆発音がした。
「……行ってみよう。気づかれないように静かにな」
俺達はここまでとは打って変わって息を潜め、音のした方向へと向かった。
密林を縫うように通り、まだ煙が立ち上っている小高い丘を直視できる位置へと移動する。
「あれは……」
「ジェイド、あれって……」
「ああ。デビルデーモンだ。それもかなり大きいぞ。『ソウルフレイム』が全滅を覚悟するぐらいにはな」
コウモリのような羽が生えた真紅の体躯。
頭部と両肩に生えた太い角は、その悪意を証明するかのように黒い。
デビルデーモン。
魔物学会が派閥対立と政治的妥協の果てに決定した呼称は、皮肉にもそのモンスターの凶悪さを的確に表現していた。
「インブレイズ!」
ドォォォォォォンッ!
俺はミレイユを引き連れて天上の塔を疾走していた。
進行方向に魔物を見つければ即座に叩き潰し、少しでもショートカットできそうな場所があれば障害物を吹き飛ばして新たな道を作っていく。
「なんだ?!」
「おいおい……。まさか、ネームドモンスターか?!」
「気をつけろ! 尋常じゃないぞ!」
「もしかして、上の階からヤバイ魔物が降りてきたんじゃないのか?!」
天上の塔を攻略していた他のパーティ達は、突如来襲した暴風に慌てふためいた。
いや、混乱の底まで叩き落されたのは人間だけじゃない。
「ギャッギャッ?!」
「キィィィィィィッ!」
生存本能に忠実な魔物達の反応はもっと素直だ。
普段ならば塔内に入り込んでくる人間をただの餌としか思っていないようなモンスター達が、絶対強者の気配を感じて慌てて逃げていく。
逃げ切れなかったモンスターの運命は二つしかない。
つまり細切れにされるか、燃やされて灰になるかだけだ。
「消えろ!」
俺は右手で風の【フィアフル】を、左手で炎の【フレアサークル】を同時に放った。
空を飛ぶ怪鳥の群れを無限とも錯覚するほどに切り刻み、正面を塞ぐ大角獣達を地面ごと業火で吹き飛ばす。
「ミレイユ! まだ走れるか?!」
「うん! 大丈夫!」
「よし! このまま40階に突っ込むぞ!」
茫然自失。
俺達が過ぎ去った後に降り始めた血の雨と灰の雪を浴びながら、人間も魔物も等しく言葉を失っていた。
「なんだったんだ? 今の……」
「俺に聞いたって、わかるわけねぇだろ……」
この時に俺達を見た連中によって、上層の強力なネームドモンスターが下に降りてきたなんて噂が立つ事になるわけだが、それはまた別の話としよう。
さて、天上の塔に突入してから三日目。
……俺達はついに目的の50階へとたどり着いた。
小高い丘が点在する密林地帯だ。
「……ついたぞ」
「ふう。さすがに速いね」
普通ならば一ヶ月以上掛かる道のりを、俺達は三日で踏破した。
いや……。
出発したのは初日の昼前で、今は三日目の昼過ぎだから、実質的には二日程度ということになるか。
移動速度を強化してくれる古代魔法【フラッシュ】がなければ実現不可能な数字だ。
「よし、さっそく獲物を探そう」
「うん。……って言っても、私にはどの魔物の素材が高いかなんてわかんないや」
「いいさ。……言っただろ? お前は自分の身の安全と素材を持ち帰ることだけ考えてればいいって」
「う、うん……」
俺と視線を合わせたミレイユの顔が少し赤くなった。
「……大丈夫か? 疲れたなら少し休んでからにするか?」
「ううん、大丈夫。それより早く獲物を探そうよ」
「どれ。念の為だ、ちょっとだけ見せてみろ」
「え?! いや、いいよ!? 大丈夫! 大丈夫だから!」
俺がミレイユの手を取って顔を近づけると、彼女の顔はさらに赤くなった。
焦点が定まらないのか、ひっきりなしに視線が泳いでいる。
……本当に大丈夫なのか?
(いや、無理もないか)
爵位を無事に買えるかどうかで、ミレイユとミレイユの母親は今後の人生が大きく変わる。
俺が彼女の立場だったとしても、無理してもいいから少しでも早く金を手に入れたいと思うだろう。
そう考えると、ミレイユがここで自分の不調を隠そうとしても不思議はない。
だがここは塔の中だ。
少しの異変も大事へとつながる。
だから不安の芽は早めに摘んでおかなければならない。
「顔が真っ赤だぞ? まさか毒か病気を移されたんじゃないだろうな? ここで死んだら元も子もないんだ、おかしいと思ったらすぐに俺に言えよ?」
「ち、違う……。そうじゃなくて……。ジェイド、顔が近――」
俺はミレイユの額に手を触れた。
「~~!?」
彼女はもう全身を真っ赤にして言葉も出せずに震えている。
間違いない。
途中で何かの病気に感染したんだ。
「熱があるな……。全く、無理しやがって。まあ気持ちはわかるけどな」
「え?! うそ……。ジェイド、私の気持ちに……ついに、気づいて……?」
俺はミレイユに治癒の【リザレクション】を掛けた。
これなら死以外の全ての傷や病気を治すことが可能だ。
「よし、これで大丈夫だ」
これで狩りに集中できる。
俺はミレイユから離れると、改めて周辺の様子を確認し始めた。
「……全然わかってない」
「ん? 何か言ったか?」
「なんでもない!」
「?」
どういうわけか、ミレイユの機嫌が急に悪くなってしまった。
いったいどうしたというのだろうか?
俺がそれを考えようとした直後だ。
ドォォォォンッ!!!!
「……ジェイド。なに、今の音?」
遠くで大きな爆発音がした。
「……行ってみよう。気づかれないように静かにな」
俺達はここまでとは打って変わって息を潜め、音のした方向へと向かった。
密林を縫うように通り、まだ煙が立ち上っている小高い丘を直視できる位置へと移動する。
「あれは……」
「ジェイド、あれって……」
「ああ。デビルデーモンだ。それもかなり大きいぞ。『ソウルフレイム』が全滅を覚悟するぐらいにはな」
コウモリのような羽が生えた真紅の体躯。
頭部と両肩に生えた太い角は、その悪意を証明するかのように黒い。
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