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第一章:アルテイルの扉
【13】一撃
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かつて魔物学会において、とあるモンスターの名称をどうするかで派閥争いが起こった。
一方の派閥はデビルと命名するべきだと主張し、もう一方の派閥はデーモンと命名するべきだと主張した。
最終的には政治力学によって『デビルデーモン』という呼称にすることで決着したが……。
そのモンスターを悪魔と呼ぶことに疑問を持った者は、最後まで一人もいなかった。
◇ ◆
「どうするの、ジェイド?」
ミレイユはモンスターを見ながら俺の服を摘んだ。
ここで大きな音を立ててはいけないことを即座に理解したらしい。
デビルデーモンはそれほど耳が良いモンスターじゃないが、知能は下手な人間よりも高い。
ここで迂闊に動けば、すぐに見つかってしまうだろう。
「よし、あいつを狩ろう」
俺は即断即決した。
デビルデーモンは固体数が少ない上に罠に掛かりにくいから、素材の希少性が高い。
特に角や骨は魔道具の材料として重宝されているから、かなりの値段で売れるはずだ。
あのサイズなら、なおさらだろう。
「もっと上の階層から降りて来たのかもな……」
「え?」
「いや、なんでもない」
確かこの階層であのサイズのデビルデーモンが見つかったなんて報告は、一度もなかったはずだ。
同じ種族でも上に行くほど強力になっていくから、もしかすると上層にいた個体が降りてきた可能性がある。
俺は少し嫌な予感がしたが、まずは目の前に敵に集中することにした。
「ジェイド、勝てそう?」
「勝つだけなら、っていうのが答えかな」
「だけなら?」
「素材を傷めないようにしないといけないからな」
「あ、そっか」
古代魔法は威力が高すぎて、素材を集めるのには向いていない。
断絶の【シュタイン】なんかを使えばいけそうだが、今の俺の魔力じゃ発動するのは無理だ。
「ミレイユ、お前はここに隠れて荷物を見ててくれ。周りに他のモンスターがいないか注意するんだ」
「ジェイドは?」
「……素材を手に入れてくる」
俺は荷物を下ろすと、持ってきたナイフを一本取り出した。
「それで戦うの?」
「いや、剥ぎ取り用さ」
ミレイユの質問にそれだけ答えると、俺は息を殺してデビルデーモンの背後へと移動を始めた。
ここで戦いを始めれば、間違いなくミレイユが巻き添えになるからだ。
(肉は高く売れないし、血は持って帰るのが大変だ。となると剥ぎ取るのは角と……骨もできるだけ綺麗な状態で欲しいな)
丘の上で時間を潰しているデビルデーモンの背後の茂みから、俺はタイミングを伺った。
奴の骨格は人間に近いが、長い前腕と猫背が組み合わさって、まるで四足歩行みたいなシルエットだ。
大本命の角は頭と両肩についているから、そこを直接狙うわけにはいかない。
(狙うのは首だ。最初の一撃で叩き潰す!)
俺は無言で古代魔法を発動した。
身体強化の【ヴォルテック】!!!
移動の【フラッシュ】!!!
相手は大型のデビルデーモン。
……所詮はデビルデーモンだ。
単純な戦闘力なら競り負けはしない!
ドヒュッ!!!!
俺は全力で大地を蹴った。
音速を超えたことで発生した衝撃波を置き去りにして、獲物の背後へと迫る。
敵はまだ気がついていない。
……当たり前だ。
異変を知らせてくれる音は、まだ俺の後方にいるのだから。
「終わりだっ!」
慈悲も容赦も必要はない。
俺は握った拳をデビルデーモンの首筋に叩き込んだ。
グギャッ!
一瞬で肉が潰れ、太い首の骨が折れる。
「おおおおおおお!」
俺はそのまま抉り込むように拳を振り抜いた。
ドォォォォォンッ!!!
文字通り首の皮一枚がつながった状態になったデビルデーモンは、そのまま地面に叩きつけられた。
大地が揺れ、木に止まっていた鳥達が慌てて飛び立っていく。
……バァンッ!!!!
さっき俺が加速した時に置き去りにした音が、ここでようやく追いついた。
まあ、もう手遅れなわけだが。
「……ふう」
俺はたった今殴り殺したデビルデーモンを見下ろした。
きっと何が起こったのか理解することはできなかっただろう。
背後からいきなり首に衝撃が加わって、そのまま死んだはずなのだから。
「よし、早速素材を剥ぎ取るか」
俺は目当ての角を手に入れようと、ナイフを取り出した。
と、その時だ。
「ジェイド!」
「ああ、ミレイユ。もう終わったから――」
手伝ってくれ。
そう言いかけた俺は、途中で言葉を失った。
さっきの位置で隠れていたミレイユが、別のデビルデーモン3体に囲まれていたからだ。
「ミレイユ!」
デビルデーモン達は叫んだ俺に一瞬だけ視線を向けると、悪意を持った笑みを浮かべた。
一方の派閥はデビルと命名するべきだと主張し、もう一方の派閥はデーモンと命名するべきだと主張した。
最終的には政治力学によって『デビルデーモン』という呼称にすることで決着したが……。
そのモンスターを悪魔と呼ぶことに疑問を持った者は、最後まで一人もいなかった。
◇ ◆
「どうするの、ジェイド?」
ミレイユはモンスターを見ながら俺の服を摘んだ。
ここで大きな音を立ててはいけないことを即座に理解したらしい。
デビルデーモンはそれほど耳が良いモンスターじゃないが、知能は下手な人間よりも高い。
ここで迂闊に動けば、すぐに見つかってしまうだろう。
「よし、あいつを狩ろう」
俺は即断即決した。
デビルデーモンは固体数が少ない上に罠に掛かりにくいから、素材の希少性が高い。
特に角や骨は魔道具の材料として重宝されているから、かなりの値段で売れるはずだ。
あのサイズなら、なおさらだろう。
「もっと上の階層から降りて来たのかもな……」
「え?」
「いや、なんでもない」
確かこの階層であのサイズのデビルデーモンが見つかったなんて報告は、一度もなかったはずだ。
同じ種族でも上に行くほど強力になっていくから、もしかすると上層にいた個体が降りてきた可能性がある。
俺は少し嫌な予感がしたが、まずは目の前に敵に集中することにした。
「ジェイド、勝てそう?」
「勝つだけなら、っていうのが答えかな」
「だけなら?」
「素材を傷めないようにしないといけないからな」
「あ、そっか」
古代魔法は威力が高すぎて、素材を集めるのには向いていない。
断絶の【シュタイン】なんかを使えばいけそうだが、今の俺の魔力じゃ発動するのは無理だ。
「ミレイユ、お前はここに隠れて荷物を見ててくれ。周りに他のモンスターがいないか注意するんだ」
「ジェイドは?」
「……素材を手に入れてくる」
俺は荷物を下ろすと、持ってきたナイフを一本取り出した。
「それで戦うの?」
「いや、剥ぎ取り用さ」
ミレイユの質問にそれだけ答えると、俺は息を殺してデビルデーモンの背後へと移動を始めた。
ここで戦いを始めれば、間違いなくミレイユが巻き添えになるからだ。
(肉は高く売れないし、血は持って帰るのが大変だ。となると剥ぎ取るのは角と……骨もできるだけ綺麗な状態で欲しいな)
丘の上で時間を潰しているデビルデーモンの背後の茂みから、俺はタイミングを伺った。
奴の骨格は人間に近いが、長い前腕と猫背が組み合わさって、まるで四足歩行みたいなシルエットだ。
大本命の角は頭と両肩についているから、そこを直接狙うわけにはいかない。
(狙うのは首だ。最初の一撃で叩き潰す!)
俺は無言で古代魔法を発動した。
身体強化の【ヴォルテック】!!!
移動の【フラッシュ】!!!
相手は大型のデビルデーモン。
……所詮はデビルデーモンだ。
単純な戦闘力なら競り負けはしない!
ドヒュッ!!!!
俺は全力で大地を蹴った。
音速を超えたことで発生した衝撃波を置き去りにして、獲物の背後へと迫る。
敵はまだ気がついていない。
……当たり前だ。
異変を知らせてくれる音は、まだ俺の後方にいるのだから。
「終わりだっ!」
慈悲も容赦も必要はない。
俺は握った拳をデビルデーモンの首筋に叩き込んだ。
グギャッ!
一瞬で肉が潰れ、太い首の骨が折れる。
「おおおおおおお!」
俺はそのまま抉り込むように拳を振り抜いた。
ドォォォォォンッ!!!
文字通り首の皮一枚がつながった状態になったデビルデーモンは、そのまま地面に叩きつけられた。
大地が揺れ、木に止まっていた鳥達が慌てて飛び立っていく。
……バァンッ!!!!
さっき俺が加速した時に置き去りにした音が、ここでようやく追いついた。
まあ、もう手遅れなわけだが。
「……ふう」
俺はたった今殴り殺したデビルデーモンを見下ろした。
きっと何が起こったのか理解することはできなかっただろう。
背後からいきなり首に衝撃が加わって、そのまま死んだはずなのだから。
「よし、早速素材を剥ぎ取るか」
俺は目当ての角を手に入れようと、ナイフを取り出した。
と、その時だ。
「ジェイド!」
「ああ、ミレイユ。もう終わったから――」
手伝ってくれ。
そう言いかけた俺は、途中で言葉を失った。
さっきの位置で隠れていたミレイユが、別のデビルデーモン3体に囲まれていたからだ。
「ミレイユ!」
デビルデーモン達は叫んだ俺に一瞬だけ視線を向けると、悪意を持った笑みを浮かべた。
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