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第一章:アルテイルの扉
【18】シレーヌさん
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とりあえずヴィシュヌ家の面々を使用人ごと牢屋に入れた後、俺は風呂に入りながら今後のことを考えていた。
この屋敷で自由に動けるのは俺とミレイユ、ミレイユの母親であるシレーヌさん、それに遺伝病で外に出られない本妻の娘が二人だけだ。
牢屋にも窓があって、昼間には少し日光が入ってくるのでミレイユの異母姉妹達はそれぞれの部屋に入れておくことにした。
動き回れるのは夜だけだから、逃げることは出来ないだろう。
この屋敷でずっと働いていただけあって、最低限のことはミレイユとシレーヌさんがいれば回りそうな感じだ。
二人は口にこそ出さなかったが、きっとかなりこき使われていたんだろう。
それがここに来て活きてくるなんて皮肉なものだ。
「さて、どうするかな……」
俺は国王の言葉を思い出していた。
あの国王は、とにかくこの件が大きくならないようにしろと暗に言っていた。
つまり貴族の子女達がミレイユの父親のお手付きである事実が広まらないようにしろと。
そうすれば不自然でない程度の便宜は図ってくれるそうだ。
貴族とはいえ、ミレイユの爵位は一番下の男爵。
しかも平民上がりとなれば、他の貴族との付き合いは難しいものになるのは想像に難くない。
平民から貴族になるのは基本的に豪商とか大組織の有力者とかだから、その意味でもミレイユは貴族の最下層ということになる。
だから、この件に関わる貴族達に貸しを作っておくのは悪くない選択だ。
今まで虐げられていたおかげか、ミレイユは旧ヴィシュヌ家の一員を見られていないから、それを補強する意味でもちょうどいい。
ただ……。
「普通に殺すと目立つよな……」
国王が言っていたのはあくまでも『もみ消すために殺してもいい』であって、殺したせいでこの一件が余計に注目を浴びたのでは意味がない。
そうなれば逆に無能と判断されて冷遇されることになる。
(このまま解放すれば、場合によってはそれをネタに脅してくる可能性もある。殺せば話題になるだろうから、そうなったらこっちが不利だ)
やっぱり奴らを解放しないまま、外から見て自然な形で殺すしかない。
「それも例のスキャンダルが目立たない形で、か。難しいな」
ただ吹き飛ばすだけなら俺の古代魔法で速攻なんだが……。
「いや、待てよ……。そうか、その手があった」
俺は思いついた。
スキャンダルに対する世間の目を誤魔化しつつ、奴らを纏めて処分出来て、おそらくはミレイユ達にも満足してもらえるであろう方法を。
「場所は……やっぱり天上の塔がいいだろうな」
俺は細かい部分をどうするか考えながら、風呂から出た。
「きゃっ!」
「え?」
脱衣所に入った瞬間、俺はシレーヌさんとばったり出くわした。
考え事をしていたのが裏目に出た。
人がいると思っていなかった俺は、完全に全裸だ。
隠すものは手に持ったタオルしかないが、固く絞ってしまっているので、すぐには使えない。
風呂に入って血行が良くなっていたせいか、俺はギンギンになった男の証明をシレーヌさんに見せつけてしまった。
「す、すみません!」
俺はとりあえず手で隠した。
シレーヌさんも気まずそうに視線を横にそらす。
「い、いえ……。大丈夫です。そういうのは見慣れていますから……」
気まずい沈黙が流れる。
俺はシレーヌさんがそのまま出ていってくれることを期待したが、彼女が中々動いてくれないので、何と言えばいいか迷っていた。
結果として先に口を開いたのはシレーヌさんだった。
「あ、あの……。さ、されないんですか? 」
「え? ……な、何を?」
俺はここが貴族の屋敷であることを思い出した。
もしかして、貴族は召使いの前でも堂々と裸でいるんだろうか?
確か、王様は召使い達に体を洗わせると聞いたことがある気がする。
だがシレーヌさんの返答は俺の予想とは違っていた。
「ですから、子作りを……」
「へ? いやいや、なんでそうなるんですか?!」
「だって、ジェイドさんの方はもう準備が……。我慢できないんでしょう?」
シレーヌさんの視線が一瞬だけ俺の下半身に流れた。
「私なら大丈夫です。……慣れてますから」
少し諦めの入ったその表情を見て俺は悟った。
そういえば、シレーヌさんはミレイユの父親に手篭めにされていたんだった。
きっとミレイユの父親はこういう場面で、有無を言わせずシレーヌさんを抱いていたに違いない。
ミレイユの話を聞く限りだと他の男は知らないみたいだから、彼女はきっと世の中の男はそれが普通だと思っていたんだろう。
おいおい……。
「いやいや、確かにシレーヌさんは美人だし魅力的ですけど、だからって無理矢理襲ったりはしませんよ、俺は」
「え? そ、そうなんですか……?」
「そうですよ。嫌がってる人を押し倒すのは趣味じゃないです」
「そ、そうですか……。ごめんなさい。私、てっきり男性というのはみんなそういうものだとばかり……」
シレーヌさんは元々が賢い女性だ。
どうやら俺とのやり取りで自分の勘違いを察したらしい。
「それじゃあ、着替えが終わるまで外に出ていますね」
シレーヌさんは少し恥ずかしそうにしたまま、ようやく脱衣所を出ていってくれた。
売春してる女はガードが緩い奴が多いらしいが、あんな感じで半分諦めてるんだろうか?
彼女の今後が少し心配ではある。
「はあ……。なんか無駄に疲れたな」
三十路過ぎの子持ちとはいえシレーヌさんは美人だし、正直言って好みだ。
俺はカッコつけないでお願いすれば良かったかもしれないと、少しだけ思った。
……少しだけな。
この屋敷で自由に動けるのは俺とミレイユ、ミレイユの母親であるシレーヌさん、それに遺伝病で外に出られない本妻の娘が二人だけだ。
牢屋にも窓があって、昼間には少し日光が入ってくるのでミレイユの異母姉妹達はそれぞれの部屋に入れておくことにした。
動き回れるのは夜だけだから、逃げることは出来ないだろう。
この屋敷でずっと働いていただけあって、最低限のことはミレイユとシレーヌさんがいれば回りそうな感じだ。
二人は口にこそ出さなかったが、きっとかなりこき使われていたんだろう。
それがここに来て活きてくるなんて皮肉なものだ。
「さて、どうするかな……」
俺は国王の言葉を思い出していた。
あの国王は、とにかくこの件が大きくならないようにしろと暗に言っていた。
つまり貴族の子女達がミレイユの父親のお手付きである事実が広まらないようにしろと。
そうすれば不自然でない程度の便宜は図ってくれるそうだ。
貴族とはいえ、ミレイユの爵位は一番下の男爵。
しかも平民上がりとなれば、他の貴族との付き合いは難しいものになるのは想像に難くない。
平民から貴族になるのは基本的に豪商とか大組織の有力者とかだから、その意味でもミレイユは貴族の最下層ということになる。
だから、この件に関わる貴族達に貸しを作っておくのは悪くない選択だ。
今まで虐げられていたおかげか、ミレイユは旧ヴィシュヌ家の一員を見られていないから、それを補強する意味でもちょうどいい。
ただ……。
「普通に殺すと目立つよな……」
国王が言っていたのはあくまでも『もみ消すために殺してもいい』であって、殺したせいでこの一件が余計に注目を浴びたのでは意味がない。
そうなれば逆に無能と判断されて冷遇されることになる。
(このまま解放すれば、場合によってはそれをネタに脅してくる可能性もある。殺せば話題になるだろうから、そうなったらこっちが不利だ)
やっぱり奴らを解放しないまま、外から見て自然な形で殺すしかない。
「それも例のスキャンダルが目立たない形で、か。難しいな」
ただ吹き飛ばすだけなら俺の古代魔法で速攻なんだが……。
「いや、待てよ……。そうか、その手があった」
俺は思いついた。
スキャンダルに対する世間の目を誤魔化しつつ、奴らを纏めて処分出来て、おそらくはミレイユ達にも満足してもらえるであろう方法を。
「場所は……やっぱり天上の塔がいいだろうな」
俺は細かい部分をどうするか考えながら、風呂から出た。
「きゃっ!」
「え?」
脱衣所に入った瞬間、俺はシレーヌさんとばったり出くわした。
考え事をしていたのが裏目に出た。
人がいると思っていなかった俺は、完全に全裸だ。
隠すものは手に持ったタオルしかないが、固く絞ってしまっているので、すぐには使えない。
風呂に入って血行が良くなっていたせいか、俺はギンギンになった男の証明をシレーヌさんに見せつけてしまった。
「す、すみません!」
俺はとりあえず手で隠した。
シレーヌさんも気まずそうに視線を横にそらす。
「い、いえ……。大丈夫です。そういうのは見慣れていますから……」
気まずい沈黙が流れる。
俺はシレーヌさんがそのまま出ていってくれることを期待したが、彼女が中々動いてくれないので、何と言えばいいか迷っていた。
結果として先に口を開いたのはシレーヌさんだった。
「あ、あの……。さ、されないんですか? 」
「え? ……な、何を?」
俺はここが貴族の屋敷であることを思い出した。
もしかして、貴族は召使いの前でも堂々と裸でいるんだろうか?
確か、王様は召使い達に体を洗わせると聞いたことがある気がする。
だがシレーヌさんの返答は俺の予想とは違っていた。
「ですから、子作りを……」
「へ? いやいや、なんでそうなるんですか?!」
「だって、ジェイドさんの方はもう準備が……。我慢できないんでしょう?」
シレーヌさんの視線が一瞬だけ俺の下半身に流れた。
「私なら大丈夫です。……慣れてますから」
少し諦めの入ったその表情を見て俺は悟った。
そういえば、シレーヌさんはミレイユの父親に手篭めにされていたんだった。
きっとミレイユの父親はこういう場面で、有無を言わせずシレーヌさんを抱いていたに違いない。
ミレイユの話を聞く限りだと他の男は知らないみたいだから、彼女はきっと世の中の男はそれが普通だと思っていたんだろう。
おいおい……。
「いやいや、確かにシレーヌさんは美人だし魅力的ですけど、だからって無理矢理襲ったりはしませんよ、俺は」
「え? そ、そうなんですか……?」
「そうですよ。嫌がってる人を押し倒すのは趣味じゃないです」
「そ、そうですか……。ごめんなさい。私、てっきり男性というのはみんなそういうものだとばかり……」
シレーヌさんは元々が賢い女性だ。
どうやら俺とのやり取りで自分の勘違いを察したらしい。
「それじゃあ、着替えが終わるまで外に出ていますね」
シレーヌさんは少し恥ずかしそうにしたまま、ようやく脱衣所を出ていってくれた。
売春してる女はガードが緩い奴が多いらしいが、あんな感じで半分諦めてるんだろうか?
彼女の今後が少し心配ではある。
「はあ……。なんか無駄に疲れたな」
三十路過ぎの子持ちとはいえシレーヌさんは美人だし、正直言って好みだ。
俺はカッコつけないでお願いすれば良かったかもしれないと、少しだけ思った。
……少しだけな。
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