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第一章:アルテイルの扉
【17】ヴィシュヌ家
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「ふーッ! 緊張したー!」
王宮から出ると、ミレイユは全身の力が抜けたようにへたりこんだ。
まあ無理もないか。
相手は仮にも現役の国王だ。
俺だって前世の記憶が戻ってなかったらやばかった。
「それで、どうする? 早速行くか?」
俺は後から出てきたヴィシュヌ元男爵を親指で指した。
国王からは『あいつらを処分しろ』と暗に言われているし、領地中にミレイユが貴族になったことを広める必要もある。
「そうだね。まずはお母さんを迎えに行きたいな」
ミレイユがヴィシュヌ元男爵に視線を向けると、彼は蛇に睨まれた蛙のようにビクッと反応した。
「よし。それじゃあ行こう。せっかく貴族になったんだ、馬車なんかがいいよな?」
「くっ……。私の馬車をお使いください……」
ヴィシュヌ元男爵は自分の馬車を差し出した。
悔しそうな顔をしているが、さすがに自分の立場はわかっているらしい。
俺達は彼を従者用の馬車に乗せると、ミレイユの物になったヴィシュヌ領に向けて出発した。
◇ ◆
「おかえりなさいませ……、ってミレイユ! どうしてお前が馬車に?!」
ヴィシュヌ元男爵を出迎えたつもりだった執事長は、馬車から降りてきたのが俺とミレイユだったことに気がついて思わず声を上げた。
他の使用人たちも一様に驚いている。
どうやらというか、やはりというか、ミレイユは使用人たちからも下に見られているらしい。
母親が平民とはいえ、ミレイユだって貴族の血が入っているはずなんだが……。
「今日から私がここの領主になったんだ。だからお母さんを迎えに来た」
「何を馬鹿な事を! 旦那様をどこへやった?!」
どうやら彼らは俺達を誘拐犯だと判断したらしい。
騒ぎに気がついたのか、守衛たちも走ってきた。
「ちょっと待てよ。ミレイユが貴族になったのは本当だ。金を用意して爵位を買ったんだ。国王も認めてる」
「なんだお前は?! 薄汚いチンピラめ!」
これはまいった。
まるで話が通じない。
こんな連中に囲まれて生活していたなんて、ミレイユもさぞや苦労したことだろう。
(どうするかな……。国王には口封じのために全員殺せ的なことを言われたし、ここで俺の古代魔法で吹き飛ばしても……)
俺がそんなことを考え始めた直後、ヴィシュヌ元男爵が後ろの馬車から慌てて飛び降りてきた。
「待てっ! 待つのだ!」
「旦那様! いったいどうして従者用の馬車に?!」
「二人の言うことは本当だ! 陛下の御前で爵位が売買され、今日からミレイユが新たな男爵となった!」
ヴィシュヌ元男爵は非情に慌てていた。
当たり前だ。
ここでミレイユが貴族でないことを否定すれば、それは国王にまで喧嘩を売ることを意味するのだから。
そうなれば一族郎党、公開処刑になるだろう。
こいつらはもう平民じゃないんだから、なおさらだ。
「そんな……馬鹿な……」
「説明は済んだな? じゃあまずはミレイユの母親のところに行こうか」
「うん。ありがとうジェイド。お母さんはまだ地下牢だね?」
俺達はまだ混乱から立ち直っていない使用人達を置き去りにすると、ミレイユを先頭に屋敷の地下牢へと向かった。
色々な物が売り払われたと思われる屋敷の中を抜け、ひんやりとした薄暗い空間へと降りていく。
「お母さん!」
「……ミレイユ?」
一番奥の牢には、一人の女性がいた。
薄暗いのでよくわからないが、中々の美人だ。
なるほど、これならミレイユの父親が強引に手篭めにしたのもよくわかる。
ミレイユの話だと、確か三十を過ぎたぐらいだったはずだ。
薄幸そうな見た目からはもう少し若くも思えるが、仄かに漂う大人の色香は年相応の経験を感じさせる。
少なくともミレイユには当分出せそうにない。
「ミレイユ! ダメじゃない、ここに来たら。見つかったらまたどんな罰を受けることになるか……」
「大丈夫だよお母さん。私、爵位を買ったの。今日から私がここの領主様だよ!」
「ミレイユ……。なにバカなことを……」
ミレイユの母親シレーヌは、使用人達同様に彼女の話を信じなかった。
誰かに騙されているのか、あるいはついにおかしくなったのではないかと心配げに娘を見ている。
「ミレイユ。とりあえずお母さんをここから出してやろう。上でゆっくり説明すればいいさ」
「うん、そうだねジェイド!」
「あなたは……?」
この後、俺達は驚くシレーヌにゆっくりと事情を説明した。
その証拠として、この家の連中全員をミレイユの前に跪かせながら。
さて……。
こいつらをどうしてやろうか?
王宮から出ると、ミレイユは全身の力が抜けたようにへたりこんだ。
まあ無理もないか。
相手は仮にも現役の国王だ。
俺だって前世の記憶が戻ってなかったらやばかった。
「それで、どうする? 早速行くか?」
俺は後から出てきたヴィシュヌ元男爵を親指で指した。
国王からは『あいつらを処分しろ』と暗に言われているし、領地中にミレイユが貴族になったことを広める必要もある。
「そうだね。まずはお母さんを迎えに行きたいな」
ミレイユがヴィシュヌ元男爵に視線を向けると、彼は蛇に睨まれた蛙のようにビクッと反応した。
「よし。それじゃあ行こう。せっかく貴族になったんだ、馬車なんかがいいよな?」
「くっ……。私の馬車をお使いください……」
ヴィシュヌ元男爵は自分の馬車を差し出した。
悔しそうな顔をしているが、さすがに自分の立場はわかっているらしい。
俺達は彼を従者用の馬車に乗せると、ミレイユの物になったヴィシュヌ領に向けて出発した。
◇ ◆
「おかえりなさいませ……、ってミレイユ! どうしてお前が馬車に?!」
ヴィシュヌ元男爵を出迎えたつもりだった執事長は、馬車から降りてきたのが俺とミレイユだったことに気がついて思わず声を上げた。
他の使用人たちも一様に驚いている。
どうやらというか、やはりというか、ミレイユは使用人たちからも下に見られているらしい。
母親が平民とはいえ、ミレイユだって貴族の血が入っているはずなんだが……。
「今日から私がここの領主になったんだ。だからお母さんを迎えに来た」
「何を馬鹿な事を! 旦那様をどこへやった?!」
どうやら彼らは俺達を誘拐犯だと判断したらしい。
騒ぎに気がついたのか、守衛たちも走ってきた。
「ちょっと待てよ。ミレイユが貴族になったのは本当だ。金を用意して爵位を買ったんだ。国王も認めてる」
「なんだお前は?! 薄汚いチンピラめ!」
これはまいった。
まるで話が通じない。
こんな連中に囲まれて生活していたなんて、ミレイユもさぞや苦労したことだろう。
(どうするかな……。国王には口封じのために全員殺せ的なことを言われたし、ここで俺の古代魔法で吹き飛ばしても……)
俺がそんなことを考え始めた直後、ヴィシュヌ元男爵が後ろの馬車から慌てて飛び降りてきた。
「待てっ! 待つのだ!」
「旦那様! いったいどうして従者用の馬車に?!」
「二人の言うことは本当だ! 陛下の御前で爵位が売買され、今日からミレイユが新たな男爵となった!」
ヴィシュヌ元男爵は非情に慌てていた。
当たり前だ。
ここでミレイユが貴族でないことを否定すれば、それは国王にまで喧嘩を売ることを意味するのだから。
そうなれば一族郎党、公開処刑になるだろう。
こいつらはもう平民じゃないんだから、なおさらだ。
「そんな……馬鹿な……」
「説明は済んだな? じゃあまずはミレイユの母親のところに行こうか」
「うん。ありがとうジェイド。お母さんはまだ地下牢だね?」
俺達はまだ混乱から立ち直っていない使用人達を置き去りにすると、ミレイユを先頭に屋敷の地下牢へと向かった。
色々な物が売り払われたと思われる屋敷の中を抜け、ひんやりとした薄暗い空間へと降りていく。
「お母さん!」
「……ミレイユ?」
一番奥の牢には、一人の女性がいた。
薄暗いのでよくわからないが、中々の美人だ。
なるほど、これならミレイユの父親が強引に手篭めにしたのもよくわかる。
ミレイユの話だと、確か三十を過ぎたぐらいだったはずだ。
薄幸そうな見た目からはもう少し若くも思えるが、仄かに漂う大人の色香は年相応の経験を感じさせる。
少なくともミレイユには当分出せそうにない。
「ミレイユ! ダメじゃない、ここに来たら。見つかったらまたどんな罰を受けることになるか……」
「大丈夫だよお母さん。私、爵位を買ったの。今日から私がここの領主様だよ!」
「ミレイユ……。なにバカなことを……」
ミレイユの母親シレーヌは、使用人達同様に彼女の話を信じなかった。
誰かに騙されているのか、あるいはついにおかしくなったのではないかと心配げに娘を見ている。
「ミレイユ。とりあえずお母さんをここから出してやろう。上でゆっくり説明すればいいさ」
「うん、そうだねジェイド!」
「あなたは……?」
この後、俺達は驚くシレーヌにゆっくりと事情を説明した。
その証拠として、この家の連中全員をミレイユの前に跪かせながら。
さて……。
こいつらをどうしてやろうか?
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