役に立たないと冒険者クランをクビになった俺は、実は転生した最強の古代魔法使いだった

ゆゆぽりずむ

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第一章:アルテイルの扉

【16】ミレイユ・グレ・ヴィシュヌ男爵

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天上の塔から帰還して数日後。
纏まった金を手に入れた俺とミレイユは、一緒に王都ドライへと向かった。

俺は爵位の件に関して本来なら無関係だが、ミレイユが心配だったのでついていくことにした。
現時点ではまだ平民扱いだとは言え、これから貴族になろうって人間がお供の一人もいないんじゃ舐められる。

「ジェイド、ありがとう。私のためにわざわざ一緒に王都まで来てくれて」

「いいさ。乗りかかった船って言うしな」

手に入れた金のこともある。
途中で誰かに奪われる可能性もあるし、やっぱり俺が最後までついていてやらないと。

「いよいよだな」

「うん」

俺達は王宮に到着した。

「ミレイユ殿ですね? 陛下がお待ちです。……そちらは?」

「荷物を持たせています」

ミレイユは俺が持っていた白い布袋を指さした。
それを見て、門番をしていた兵は納得したように頷いた。

「わかりました。ではご一緒にどうぞ」

俺達は兵の後ろについて王宮へと入った。
ここでの俺はミレイユの従者みたいな扱いだ。

彼女の横に並ばないように注意して、少し後ろを歩く。
玉座の間に入ると、王は既に椅子に座っていた。

王の前には、初老の男が先に跪いている。

「お前は! どうしてここに?!」

入ってきた俺達を見て、男が思わず声を上げた。

ミレイユの話だと、おそらくこいつは彼女の祖父にあたる男のはずだ。
俺は消去法でそう判断した。

「……」

だがミレイユがその言葉に答えることはなかった。
彼女が無言のまま王の前に跪いたので、俺も同じようにその斜め後ろで跪く。

さて、どうなることか。

「よく来た。面を上げよ」

国王の威圧感ある声が響いた。
これは舐めて掛かって相手じゃなさそうだ。

「はい。平民の身ながら、こうしてお目に掛かれる機会を頂き、ありがとうございます」

王の前でやはり緊張しているのだろう。
ミレイユの声は少し震えていた。

というかこの言葉使いは大丈夫なのか?
もしかすると震えてるのはそっちを心配しているからかもしれない。

「よい。余はその程度ことを気にはせん。もちろんそなたの作法が未熟であることもな」

国王はまるで俺達の心を見透かすように言い放った。

相手は仮にも国王だ。
戦闘なら負ける気はしないが、政治家としてはその限りじゃない。

力の尺度は一つだけじゃないんだ。

「娘よ、名乗るがよい」

「はい。ミレイユと申します。平民のため、まだ姓はありません」

「あの、陛下……。これはいったい……?」

「さきほど話したであろう? お主の爵位の行方を決めるのだと」

「それとこの小娘がいったいどういう……?」

ミレイユの祖父、ヴィシュヌ男爵はまだ現実を飲み込めていないらしい。
冒険者なら長生きできないタイプだ。

「と言っておるが……。ミレイユよ、ここに来たということは……用意してきたのだろうな?」

「はい。 後ろの者が持つ袋の中に」

俺は無言で袋を開き、中の金貨が見えるようにした。
それを確認したミレイユが国王に向き直る。

「お約束の通り、15億ゴールドを用意して参りました」

「うむ。確かに」

「15億ゴールド! そうか……。よくやった! よくやったぞミレイユ! これで――」

金貨の山を見たヴィシュヌ男爵はこう思った。
これで爵位を手放さずに済む、と。

平民の母親を人質にして金策を命じていた汚れた血の小娘が、上手くやってくれたと受け取ったのだ。
だがそんな彼の希望を、ミレイユは躊躇うことなく打ち砕いた。

「陛下。この15億ゴールドで、私めに爵位をお譲りください」

「……は?」

ヴィシュヌ男爵の目が点になった。
それに対して国王の表情は極めて冷静だ。

「うむ。ヴォルテール達からも話は聞いておる。取り上げた男爵位をお主にやろう」

ミレイユの後ろでやり取りを静観しながら、俺は今回の全容を理解した。

ヴォルテールというのは、おそらく国王と旧知の仲であるラタトスク伯爵のことだ。
確かミレイユの父親が手を出した女の一人が、あそこの分家筋だったはず。

この様子を見る限り、ラタトスク伯爵が裏で手を回したんだろう。

同じ貴族とはいえ、ヴィシュヌ家の爵位は一番下の男爵。
……どうにかなるような相手じゃない。

「あ、あの、陛下? ご冗談でしょう? 私めの爵位を、こんな小娘などに……」

「余はそういう冗談を好かん。特に跡継ぎの問題を引き起こしてくれるような冗談はな」

国王はたった今男爵でなくなったばかりの男を睨み付けた。

そもそもどうして男女関係の乱れを問題視するかというと、それが跡目争いを始めとする対立に発展するからだ。
自分の国内に火種が増えるのを喜ぶ国王なんているわけがない。

「そ、そんな……」

ミレイユの祖父は脱力し、そして放心状態になった。

「ミレイユよ。今後はミレイユ・グレ・ヴィシュヌ男爵と名乗るがよい」

「はっ! ありがとうございます!」

こうして、ミレイユはついに爵位を手に入れた。

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