79 / 191
第三章:ボロアパートとワンピースと“アタシ”
3−20
しおりを挟む
「あらぁん、分かるぅ!? そうなのお~!」
訊くんじゃなかったとすぐに後悔したが時すでに遅しで、キャメロンは手を組み、天を仰ぎながらうっとりと語る。
「イブも近いじゃない? 今年は何してあげよっかなーとか、どんなプレゼントにしよっかなーとか、そして如何にめくるめく性夜にしけこもうかとか考えてたら全然仕事が手につかな」
「さっさと働け!」
「あいたぁっ!」
げしぃっとぱつぱつのドレスの尻を蹴りつけると、野太い悲鳴が上がった。
「やだ、ママってば意外とすぐ暴力に走るのよね。
そういえばこれもザーヤク時代の名残りなのかしら?」
「アンタがいくら押しても動かないからでしょーが筋肉ダルマめ……」
「そう考えたら、このグラサンも相当胡散臭いわね」
もはやモップを放り投げてルンルンし始めたキャメロンは、ミフユがかけていたサングラスを奪っていった。
「ちょっと! 返しなさいよ、せっかく買い直したんだから!」
潜入作戦のときに無くしたのを、やっと新調した物だ。なかなか値が張ったので急いで取り返そうとするが、ひょいひょいとかわされる。
返せと追いかけるが、キャメロンは軽やかにかわしながらまるで聞く耳を持たずに、空中で頬杖をついた。
「ザーヤクといえば、最近来ないわねえ。
ママの彼ピ」
あやうくずっこけるところだったが、すんでのところで踏みとどまる。
心臓をバクバクさせながら違うわ、と否定してキャメロンを睨めつけた。
「用もないのに来るわきゃないでしょ。付き合ってないんだから」
伊吹はおそらく、組のほうで今後の作戦を練っているのだろう。
黒幕の目星くらいつかなければ、ここに来る理由はない。
ええ?と声を上げるキャメロンの隣から、モモがにゅっと顔を出してきた。
「でもそれって、なんだか寂しくない?」
モモがマスカラの濃い目をぱちぱちさせながら椅子を磨き上げる。
「せっかく再会できたんでしょう? なのに用事がなきゃ会いもしないの」
「そうよそうよ」と反対側から首を突っ込んできたのはパピ江だ。
「向こうが来ないならこっちから行ったらどうですか?」
「組事務所にか」
「じゃなくて、『店に来て』って連絡すればって話!」
……まずい。話好きのオネエたちに包囲されつつある。
このままじゃ思うところを洗いざらい吐かされてしまう。
「だからそんな仲じゃないって――」
「でも、師走さんは絶対ミフユさんのこと特別に思ってますよね」
と、口を挟んできたのはアキだった。
訊くんじゃなかったとすぐに後悔したが時すでに遅しで、キャメロンは手を組み、天を仰ぎながらうっとりと語る。
「イブも近いじゃない? 今年は何してあげよっかなーとか、どんなプレゼントにしよっかなーとか、そして如何にめくるめく性夜にしけこもうかとか考えてたら全然仕事が手につかな」
「さっさと働け!」
「あいたぁっ!」
げしぃっとぱつぱつのドレスの尻を蹴りつけると、野太い悲鳴が上がった。
「やだ、ママってば意外とすぐ暴力に走るのよね。
そういえばこれもザーヤク時代の名残りなのかしら?」
「アンタがいくら押しても動かないからでしょーが筋肉ダルマめ……」
「そう考えたら、このグラサンも相当胡散臭いわね」
もはやモップを放り投げてルンルンし始めたキャメロンは、ミフユがかけていたサングラスを奪っていった。
「ちょっと! 返しなさいよ、せっかく買い直したんだから!」
潜入作戦のときに無くしたのを、やっと新調した物だ。なかなか値が張ったので急いで取り返そうとするが、ひょいひょいとかわされる。
返せと追いかけるが、キャメロンは軽やかにかわしながらまるで聞く耳を持たずに、空中で頬杖をついた。
「ザーヤクといえば、最近来ないわねえ。
ママの彼ピ」
あやうくずっこけるところだったが、すんでのところで踏みとどまる。
心臓をバクバクさせながら違うわ、と否定してキャメロンを睨めつけた。
「用もないのに来るわきゃないでしょ。付き合ってないんだから」
伊吹はおそらく、組のほうで今後の作戦を練っているのだろう。
黒幕の目星くらいつかなければ、ここに来る理由はない。
ええ?と声を上げるキャメロンの隣から、モモがにゅっと顔を出してきた。
「でもそれって、なんだか寂しくない?」
モモがマスカラの濃い目をぱちぱちさせながら椅子を磨き上げる。
「せっかく再会できたんでしょう? なのに用事がなきゃ会いもしないの」
「そうよそうよ」と反対側から首を突っ込んできたのはパピ江だ。
「向こうが来ないならこっちから行ったらどうですか?」
「組事務所にか」
「じゃなくて、『店に来て』って連絡すればって話!」
……まずい。話好きのオネエたちに包囲されつつある。
このままじゃ思うところを洗いざらい吐かされてしまう。
「だからそんな仲じゃないって――」
「でも、師走さんは絶対ミフユさんのこと特別に思ってますよね」
と、口を挟んできたのはアキだった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる