142 / 191
第四章:The Catcher in the "Lie"
4−12
しおりを挟む
・・・
「――ったく、数が多いってのっ」
次々と襲いかかってくるホストやヤクザを殴り、蹴り飛ばしながら、ミフユは店内に目を巡らせた。
「んもうっ、ハーレムは老後の楽しみにとっておきたいのに!」
求めてもいない男たちは山ほどいるのだが、肝心の伊吹の姿が見えない。
どころか、アキはおろか水無月の姿もなく、めあての人物が誰もいない状況だ。
(水無月たちは奥かしら?)
ホスト軍団による肉の壁をなぎ払いつつ、入口から少しずつ店の中へと進んでいくミフユだが、バックルームまではまだほど遠い。
「なんだコイツ!? 一人のくせにっ」
ウイスキー瓶を振りかざしてきたピンク髪の男にアッパーを極めて、ミフユは一つ息を吐いた。
「化物だ」と悲鳴を上げて逃げ出す者もいるが、ほとんどは元気に自分のもとへ襲いかかってくる。その胆力といい目力といい、素人が持つものではない。
(店のスタッフのほとんどに彩極組の息がかかってたってわけね、どうして前に来たとき気が付かなかったのかしら)
不思議に思うが、彼らは日頃それだけホストとしての顔を装えているということだろう。
(人ってコワイっ)
身震いするミフユの横から、アイスピックを持った男が飛びかかってくる。
「おらぁああ死ねやぁああ!!」
「繊細な乙女に向かってそんなこと言っちゃダメよぉおお!!」
「ぎゃああああ――!!」
ミフユは男のアイスピックを持った腕を手刀で挫き、そのまま奥のテーブルまで投げ飛ばす。
男は他数人を巻き添えにしながらふっ飛んでいき、けたたましい音をたてて卓に衝突した。
ミフユの周りに、だんだんと丸い穴が広がっていく。
一向に倒れる気配のないミフユを警戒してか。
つかのまの静止状態が訪れた。
――だが、四面楚歌だ。
「もう、倒しても倒しても無限にイケメンが湧き出てくるんだから……いつもこれくらいモテたらいいのに」
こういう状況で軽口を叩くのは性分で、見た目ほどミフユに余裕はなくなってきていた。
狗山に電話をかけてから、とっくに二十分は過ぎている。援軍はまだ来ないようだが、組長と話をつけるのに手間取っているのかもしれない。
よく考えたら――ミフユが組にいたのは、もう何年も前の話だ。
その頃と同じ感覚で組を動かすのは無理があったんじゃないか、と今になって不安がよぎる。
うまく身を隠し続けるため、ずっと極道界の趨勢は把握していて、鳳凰組の幹部にほとんど入れ替わりがないことは知っている。
しかし、内部事情が全く変わっていないとは言い切れないし……そもそも。
(勝手に組を抜け出したアタシのわがままを、組長たちが聞いてくれんのかな)
伊吹を助けるためとはいえ。
(つーかいま気付いたって遅いんだけど!!)
「お前、どこの組のモンや!」
好転しない状況に焦燥感を抱いていると、その場で一番年嵩の男が怒鳴った。
見たことのない顔だが、ミフユより年上に見えるので極道歴は長いのだろう。
「テメェら、こんななよっちい奴に負けてんじゃねぇぞお!」
男が発破をかけると、明らかに現場の士気が上がった。
――まずい。
場の勢いに流されないように、ミフユも身を構えて声を張り上げた。
「――ったく、数が多いってのっ」
次々と襲いかかってくるホストやヤクザを殴り、蹴り飛ばしながら、ミフユは店内に目を巡らせた。
「んもうっ、ハーレムは老後の楽しみにとっておきたいのに!」
求めてもいない男たちは山ほどいるのだが、肝心の伊吹の姿が見えない。
どころか、アキはおろか水無月の姿もなく、めあての人物が誰もいない状況だ。
(水無月たちは奥かしら?)
ホスト軍団による肉の壁をなぎ払いつつ、入口から少しずつ店の中へと進んでいくミフユだが、バックルームまではまだほど遠い。
「なんだコイツ!? 一人のくせにっ」
ウイスキー瓶を振りかざしてきたピンク髪の男にアッパーを極めて、ミフユは一つ息を吐いた。
「化物だ」と悲鳴を上げて逃げ出す者もいるが、ほとんどは元気に自分のもとへ襲いかかってくる。その胆力といい目力といい、素人が持つものではない。
(店のスタッフのほとんどに彩極組の息がかかってたってわけね、どうして前に来たとき気が付かなかったのかしら)
不思議に思うが、彼らは日頃それだけホストとしての顔を装えているということだろう。
(人ってコワイっ)
身震いするミフユの横から、アイスピックを持った男が飛びかかってくる。
「おらぁああ死ねやぁああ!!」
「繊細な乙女に向かってそんなこと言っちゃダメよぉおお!!」
「ぎゃああああ――!!」
ミフユは男のアイスピックを持った腕を手刀で挫き、そのまま奥のテーブルまで投げ飛ばす。
男は他数人を巻き添えにしながらふっ飛んでいき、けたたましい音をたてて卓に衝突した。
ミフユの周りに、だんだんと丸い穴が広がっていく。
一向に倒れる気配のないミフユを警戒してか。
つかのまの静止状態が訪れた。
――だが、四面楚歌だ。
「もう、倒しても倒しても無限にイケメンが湧き出てくるんだから……いつもこれくらいモテたらいいのに」
こういう状況で軽口を叩くのは性分で、見た目ほどミフユに余裕はなくなってきていた。
狗山に電話をかけてから、とっくに二十分は過ぎている。援軍はまだ来ないようだが、組長と話をつけるのに手間取っているのかもしれない。
よく考えたら――ミフユが組にいたのは、もう何年も前の話だ。
その頃と同じ感覚で組を動かすのは無理があったんじゃないか、と今になって不安がよぎる。
うまく身を隠し続けるため、ずっと極道界の趨勢は把握していて、鳳凰組の幹部にほとんど入れ替わりがないことは知っている。
しかし、内部事情が全く変わっていないとは言い切れないし……そもそも。
(勝手に組を抜け出したアタシのわがままを、組長たちが聞いてくれんのかな)
伊吹を助けるためとはいえ。
(つーかいま気付いたって遅いんだけど!!)
「お前、どこの組のモンや!」
好転しない状況に焦燥感を抱いていると、その場で一番年嵩の男が怒鳴った。
見たことのない顔だが、ミフユより年上に見えるので極道歴は長いのだろう。
「テメェら、こんななよっちい奴に負けてんじゃねぇぞお!」
男が発破をかけると、明らかに現場の士気が上がった。
――まずい。
場の勢いに流されないように、ミフユも身を構えて声を張り上げた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる