攻略対象ですが、死にたくないのでバッドエンド回避のために頑張ります

だるも

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プロローグ

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「もう! お兄ちゃん! また私の話聞いてないでしょ!」

そう言って目の前の少女は頬を膨らませながらとうとう俺の手からテキストを引きはがした。

「ああ、ごめんごめん。でもお兄ちゃんだって期末考査が近いんだよ」

言葉尻を弱めながら弁解の言葉を述べてみるが、それでも少女の表情は緩まない。それどころか、あからさまに眉間にしわを寄せ終始こちらを睨みつけてくる。

休日の昼下がり、期末考査を再来週に控えた俺は今まさに勉強に明け暮れている最中だった。
……なのに、どうしてこうなったのか。

うちの両親は共働きで、家に帰宅するのは時計の針も十二時を回る頃だ。そのため、六歳下の妹の面倒を見るのは俺ぐらいしかいなかった。
だとしてもテスト前くらいはさすが一人にさせてほしい……なんて、いつも疲労困憊といったような姿で帰ってくる両親にはそんなこと、口が裂けても言えない。

それでも親は親なりに子供のことを考えているのか。両親は妹のために度々ゲームを買って与えていた。
……ゲームを与えても教育にはあまり良い影響はないような気がするが……。まあこの際、それは置いといて。

しばらくして、ついにいたたまれなくなった俺はしょうがないなぁという心の声を漏らすことなく、ペンをテーブルに置いた。
そして手を挙げて降参のポーズをとる。

すると少女……もとい妹はパッと花が咲いたように顔を綻ばせた。

妹は今現在、とあるゲームにハマっている。

そのゲームのタイトルは『白薔薇の君に焦がれて』。

このゲームは所謂、乙女ゲームというやつで、簡単に言えば主人公の女の子が攻略対象であるイケメンと仲を深め、最終的には結ばれることを目指すといった女性向け恋愛ゲームである。

妹は今までにもいくつかの乙女ゲームをプレイしてきているようだが、このゲーム……通称『白バラ』にハマりこむ様子は尋常じゃなかった。

一週間ほど前から大量のグッズを買い込み、メルヘンな女の子らしかった妹の部屋は、すでにオタクのそれと同じだ。昨日見たときは祭壇まであった気がする……。
加えて自宅での唯一の話し相手である俺に、おはようからおやすみの挨拶も忘れてゲームについて語りだすほどだ。

話を聞く限りゲームだって詳しくない、ましてや男の俺には女性向け恋愛ゲームなんてよくわからない部分も多かったが、それでもキャラクターの名前やストーリーなどを覚えてしまうほどに妹は延々と話してくる。
そんなわけで妹は今も、俺が勉強している場を占拠し『白バラ』について語っていた。

父さん、母さん。期末考査の結果は期待しないでください。

「お兄ちゃん聞いてる?」

物思いに耽っている間に、話が進んでいたようだ。

「聞いてる聞いてる。第二王子の話だろ?」

「ちがうー! エセルバート様の話!」

「ああ。由紀奈はそのキャラ好きなんだっけ?」

「もー! そうだよ! はぁーあ、私も異世界トリップとか転生して、白バラの世界に行けたらなぁ~」

妹よ、またなにかに影響されたのか。

「……そこでやりたいことでもあるのか?」

妹の現状に、痛くなる頭を抱えながら聞く。すると一転、うっとりとした表情がふくれっ面に変わった。

「むー! あるもん! 誰だって一度は憧れの世界に行って恋愛とか、冒険とかしたいじゃん。お兄ちゃんだってそういうのあるでしょ?」

「俺か? いや、俺は――」

 ――――

 ――――――

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