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死神はウイスキーボンボンを食べない
5終 *
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ダブルベッドに運ばれた時、僕は素肌に何も身につけていなかった。
タイガもまた一糸纏わぬ姿である。
僕は布団をたぐり寄せて体を隠そうとしたが、タイガがそれを許さなかった。僕を抱きしめて、耳たぶを甘噛みする。思わず鼻にかかった声が漏れそうになり、僕は口元を手で覆った。
タイガが僕の手首を掴み、顔の脇に持っていく。
「全部見せてくれ。全部聞かせてくれ。シンの可愛い反応が知りたい」
「タイガ……。恥ずかしいよ」
「まだ緊張しているようだな」
ちゅっと軽い音を立てて、タイガが僕の体のあちこちにキスをした。なかでも、へその周りに丁寧にキスを敷き詰められた。僕はくすぐったさのあまり笑い声を上げた。
「ふふっ。くすぐったいってば」
「リラックスできたか?」
「少し……」
「ここ。触ってもいいか?」
タイガの大きな手のひらが伸びてきて、僕の胸の突起を撫でた。刺激がぼんやりとしていて、そのよさがまだあまり分からない。タイガは僕の薄い反応を見ると、少しがっかりしたようであった。
「男はあまり感じないというが、本当にそうみたいだな」
とても残念そうな表情で、タイガが僕の胸の粒をくにくにといじる。中心から外側にかけて指先で引っかくように愛撫されれば、僕の中に妖しい熱が灯りはじめた。「ん……、はっ……」と甘い吐息をこぼす僕の乳輪にタイガが吸いつく。ピクンと勃ち上がった乳頭を舌先でぐりぐりと潰されて、僕はついに大きな声を上げた。
「ああんっ」
「イイのか、シン」
「……聞かないでくれ」
「おまえのここ、綺麗なピンク色だな」
「あ、や……っ! あっ、あぁっ」
タイガが僕の陰茎を扱きながら、乳首を舌と指の腹で愛していく。胸の尖りから得られる刺激はもはや無視できないものになっていた。タイガに乳首を吸われるたび、僕の腰が淫らに揺れた。タイガは両方の乳首を均等に愛撫した。
胸元を見下ろせば、小さかった乳首がぽってりと腫れている。タイガの唾液を帯びて濡れそぼったピンク色の粒はとてもいやらしくて、僕はまたしても顔を隠したくなった。
「シン。勃起しているな」
「……ん、ふぅっ」
「おまえはここも綺麗だ」
ちゅっちゅっとタイガが僕の竿に口をつける。僕の先端から先走りがにじみ出て、タイガの唇をしっとりと濡らした。僕の大好きな人が、僕に惜しみない愛を捧げてくれている。これは夢の中の出来事だろうか。僕は口淫を続けるタイガの頭を太ももで挟み込んだ。タイガの少し長めに伸ばした髪は、今日もさらさらとしていて触り心地がいい。
「タイガ……僕もきみを愛したい」
「無理してねぇか?」
「ううん。僕だってきみを気持ちよくさせてあげたいんだ」
タイガは渋ったが、僕の瞳を見つめると「分かったよ」とつぶやいた。僕はタイガのへその下に頭をうずめた。タイガの立派すぎるモノに頬ずりをする。朱鷺色の竿が僕のキスを受けるたび、じんと熱くなった。僕はタイガの裏筋を舌でなぞった。ビキビキと硬くなった雄芯が僕の頬を張る。僕は愛する人の分身を口内に招き入れると、きゅっと頬をすぼめた。タイガが熱い吐息をこぼす。
「シン……。そのぐらいで、もう……」
ちゅぽんっと口を離せば、タイガが僕を抱きしめた。そして唇を重ね、舌を絡めてきた。
「もう一生分のキスをしてもらった気がするよ」
僕が微笑むと、タイガは「まだまだこれからだ」と言って僕の太ももに口をつけた。そして痛くなるほど吸って、キスマークをつけた。
「これが消える前に、またしよう」
「そんなに致したら、クセになってしまいそうだ……」
「俺なしじゃいられないようにおまえのカラダを変えてやる」
「あっ、おい! やぁんっ」
タイガが僕の乳首に軽く歯を立てた。強い刺激を与えられて、乳首にピクンと芯が通る。タイガはもう片方の乳首にも唇をつけた。僕は腫れぼったくなった乳首を見られたくなくて胸元を手で隠した。
「それ、かえってエロいってば」
「……タイガの意地悪」
「ふふっ。照れてるシン、最高に可愛いな」
「あんっ、それ……やだぁっ」
僕の腰の下に枕を置くと、タイガが僕の菊座をのぞき込んだ。自分でも見たことがない部分に熱い視線を注がれて、僕は恥じらうことしかできなかった。タイガはコンドームなるものを装着したあと、手のひらにローションを垂らした。とろみのある液体で濡れた指先が僕の菊座をくすぐる。
「あっ、ひゃっ……!」
「冷たい? 今、熱くしてやる」
「ん、ぅっ」
タイガの指先が僕の肉の環をなぞる。慈しむように皺の一つひとつに触れたあと、タイガは僕の会陰を舐めた。ふるりと肩が震えるほどの快感を覚える。タイガはそのまま僕の会陰を舐めながら、菊座に指先を突き入れた。タイガの指が僕のナカに入ってくる。
「力を抜いてくれ」
「うん……っ。あ、あぁっ。んんっ」
「第二関節まで入ったな」
僕のナカは初めての刺激を受けて、収縮を繰り返した。タイガが僕のナカにある一点をこすれば、僕は腰骨まで響くほどの快感を味わった。浜に打ち上げられた魚のように体をくねらす。僕が乱れるさまを見て、タイガの目がぎらりと光った。
「ここがシンのイイところか」
「タイガ……。そこばっかり、あっ! やっ……、だめだっ、おかしくなるぅっ」
「可愛い反応だ。シン、もっと喘いで構わないんだぞ?」
「僕が……っ、女人のようによがったら、興醒めじゃないか?」
「どうして。エッチなシンがいっぱい見たい」
「ひぃっ、あぁっ!」
タイガの指が僕の奥まで届いた。そこでくいっと指を折られれば、僕のナカはとろとろと柔らかくなっていった。2本目、3本目と指が増やされていく。僕のナカはタイガの角張った指でいっぱいになった。
「は、……ぁっ。あぁっ」
「シンのナカ、あったかいな」
「タイガ……。もう来ても大丈夫だ……」
「じゃあ、行くぜ」
僕の菊座に切っ先があてがわれる。タイガの亀頭は輪郭が大きくて、すべてを飲み込めるか僕は不安になった。でも、ここまで来て逃げるわけにはいかない。僕は足を大きく広げて、タイガが挿入しやすいような体勢をとった。
「シン……っ。愛してる」
「あ……、タイガの……あつい……」
コンドームなるものをつけていても、タイガの雄しべの熱はしっかりと感じられた。タイガが腰をゆっくりと僕のナカに沈めていく。亀頭を飲み込んだあとはスムーズにすべてを受け入れることができた。僕は初めて感じる圧迫感をこらえるため、シーツをぎゅっと握った。
「苦しいか?」
「……少し。でも、やめないでくれ……。きみを、感じたい」
「健気なことを言うな……」
タイガが緩やかに前後運動を始めた。
僕はタイガの剛直が根元まで引き抜かれるたび、言いようのない寂しさが募った。ずっと繋がっていたい。タイガを独占したい。すごく欲張りな自分がいて、タイガの雄芯を食い締めてしまう。
「タイガ……っ。もっと、強くしても、平気だぞ……っ」
「シン……」
「あぁ、あっ! ひゃうっ! そこ、こすられたら……」
タイガの性器の張り出した部分で、僕のイイところが刺激された。僕の目の前で小さな星がいくつもまたたく。悦点がもたらす快美に気を取られていると、今度はタイガの先端が僕の奥をトントンと叩いた。それをされると、僕はなんとも言えない多幸感に包まれた。タイガの逸物が僕の奥にぐっぽリとはまり込んでいる。僕たちは動きを止めて、しばし抱擁を交わした。
「タイガぁっ。おく、……気持ちいい……」
「感じてくれて嬉しいよ」
「あんっ! もう……っ。胸は触らなくていいからっ」
「乳首をつまむと、ナカがきゅっと締まるな。可愛い」
「タイガのスケベ……」
「俺がスケベな方が楽しいだろ?」
ちゅっと口づけられて、僕は泣きそうになった。愛する人の命を体の深いところで感じている。その事実は僕にとって僥倖に他ならなかった。僕以上に、僕のナカが喜びを表現して、タイガの雄しべをちゅぽちゅぽとしゃぶっている。僕の先端から精液とも先走りともつかない半透明の液が、とぷとぷとこぼれた。
タイガが抽送の速度を上げた。
僕は彼の背中に腕を回して、必死にしがみついた。
「タイガ……っ。好き、……ずっとずっと、好きだった」
「俺の方がおまえを……愛してる」
「あ、そこ……、だめだっ! 深い……!」
「イきそうだ……っ」
「来て……っ! タイガ……」
タイガがぶるりと腰を震わせた。
眉が苦しげに寄せられる。僕もまた先端からぷしゃあっと半透明の液を放った。僕のナカを占めていたタイガの剛直が大人しくなっていく。
タイガは陰茎を引き抜くと、コンドームを取り去った。
「僕は女人じゃないから、そこまで気を遣わなくてもいいのに」
「だーめ。ナカに出しちまうと腹が下るらしいぞ」
「タイガ、いろいろと詳しいね」
「そりゃ勉強もするわ。おまえを傷つけるわけにはいかないだろう? 俺が下界の不動産を回るのが好きなのも、もしもおまえが死神を辞めたいって言い出した時に困らないようにするためだよ」
「そうだったんだ……」
自分はそこまで愛されていたんだと思うと、申し訳なくなった。
「僕は何も知らずに、きみを拒んでばかりいたね」
「シンは俺のお姫様だからな。ワガママいっぱいでいいんだよ」
「だめだ。僕だってきみを愛したい」
「じゃあ、一緒にチョコ食べようぜ」
タイガはベッドの上にチョコレートボックスを広げた。
プラリネなるものが入ったチョコレートをつまんで、「うまい!」と叫ぶ。
「シン」
「なんだい?」
「お裾分けだ」
「……ンッ、ふ……っ」
タイガとのキスを通じて味わうチョコレートはやっぱり甘くて、僕は酔いそうになった。
「僕には甘すぎるよ……」
「じゃあ、このハイカカオをどうぞ」
「ありがとう」
「次は、このウイスキーボンボンにするかな」
「それってお酒が入ってるんだっけ?」
「そうだよ。食べるか?」
「いや。遠慮しておく」
アルコールの入った状態で、タイガと一緒に過ごしたら僕はとんでもなく甘えん坊になってしまいそうだ。それに、酩酊した頭ではなく、すっきりと覚醒した頭でタイガのことを見守っていたい。
タイガに勧められたハイカカオ・チョコレートを齧ると、苦味がとても快かった。大人の味だな。これならば辛党の僕でも食べられる。
「タイガ」
「ん? どうした」
「これからも……よろしく」
「はいよ」
僕の愛しい人は両腕を広げると、たくましい胸に僕を招き入れてくれた。
心音が聞こえる。
僕たちは死神で、一度は死んだ身だけど、人のような体を与えられている。心だって備わっている。
それは罰ではなく、僕に与えられた恵みだったのだ。
僕はタイガにキスをした。
ウイスキーボンボンの残り香が僕の舌にふわりと広がった。
◇◇◇
死にたての魂が僕のいる冥界にやって来た。
彼女はまだ自分の身に何が起きているのか分かっていない。三途の川を取り囲む彼岸花の群れを見て圧倒されている。
僕は死にたての魂を懐に抱いた。そのイチジクの実に似た形を、手のひらで撫でる。
「怖がることはないですよ。あなたはこれから白の花園に行くことになります」
「白の花園?」
「そこでじっくりと今後のことを考えるといいです」
「私は……もっと生きたかった」
「お子さんがいらっしゃったんですよね。さぞ無念だったでしょう」
「死神さん。またあの子たちに会えますか?」
「輪廻によって命がめぐれば、再び地上で会うこともあるでしょう」
「……連れて行ってください。白の花園に」
「分かりました。逝ってらっしゃい」
死神の鎌を振り下ろす。
死にたての魂が白の花園に旅立って行った。
ひと仕事を終えると、タイガが近づいて来た。
「シン。塩対応はもうやめたのか」
「……うん。タイガみたいにはなれないけど死者の不安を少しでも緩和できたらいいなって、今は思ってる」
タイガが僕の帽子をひょいっと持ち上げた。
「髪、伸ばし始めたんだ?」
「少し気分を変えたくて」
「きっと似合うぜ」
「タイガ。あの……今度の下界行きだけど」
「ホワイトデーにまた、ホテルを取ろうか」
「あ、うん」
僕の耳元に顔を寄せると、タイガが囁いた。
「……ツインじゃなくて、もちろんダブルでいいよな?」
答える代わりに、僕はタイガをぎゅっと抱きしめた。タイガが僕と唇を重ねる。あやすようなキスはやがて濃厚なものへと変わっていった。
鮮血を連想させるような赤い彼岸花が揺れている。
ここは冥界。死者が集い、悲しみが生まれる場所。
でも僕とタイガにとってここは、共に生きる場所だ。僕たちはこれからもキスを交わし、愛を語りながら、終わりのない時を一緒に過ごしていく。
「愛してる」
ようやく息継ぎの時間を与えられた僕は、タイガにそう伝えた。
タイガが僕の体を抱き上げる。
「高いたかーい!」
「また子ども扱いして」
「おまえがあんまり可愛いことを言うから、動揺してるんだよ」
しばし僕を抱き上げたあと、タイガは僕を下ろした。そして再び、熱いキスを捧げてきた。
舌の付け根の感じやすいところを舐められる。僕はタイガの背中に腕を回して、息を弾ませた。タイガの舌が自在に動き回り、僕の上顎を責めていく。幸福に包まれて、僕は瞳を潤ませた。
「気持ちいいか?」
「……うん」
僕がこの先、ウイスキーボンボンを口にすることはないだろう。だって僕には、心を溶かし、全身を甘く酔わせるようなキスをしてくれる永遠の恋人がいるのだから。
タイガもまた一糸纏わぬ姿である。
僕は布団をたぐり寄せて体を隠そうとしたが、タイガがそれを許さなかった。僕を抱きしめて、耳たぶを甘噛みする。思わず鼻にかかった声が漏れそうになり、僕は口元を手で覆った。
タイガが僕の手首を掴み、顔の脇に持っていく。
「全部見せてくれ。全部聞かせてくれ。シンの可愛い反応が知りたい」
「タイガ……。恥ずかしいよ」
「まだ緊張しているようだな」
ちゅっと軽い音を立てて、タイガが僕の体のあちこちにキスをした。なかでも、へその周りに丁寧にキスを敷き詰められた。僕はくすぐったさのあまり笑い声を上げた。
「ふふっ。くすぐったいってば」
「リラックスできたか?」
「少し……」
「ここ。触ってもいいか?」
タイガの大きな手のひらが伸びてきて、僕の胸の突起を撫でた。刺激がぼんやりとしていて、そのよさがまだあまり分からない。タイガは僕の薄い反応を見ると、少しがっかりしたようであった。
「男はあまり感じないというが、本当にそうみたいだな」
とても残念そうな表情で、タイガが僕の胸の粒をくにくにといじる。中心から外側にかけて指先で引っかくように愛撫されれば、僕の中に妖しい熱が灯りはじめた。「ん……、はっ……」と甘い吐息をこぼす僕の乳輪にタイガが吸いつく。ピクンと勃ち上がった乳頭を舌先でぐりぐりと潰されて、僕はついに大きな声を上げた。
「ああんっ」
「イイのか、シン」
「……聞かないでくれ」
「おまえのここ、綺麗なピンク色だな」
「あ、や……っ! あっ、あぁっ」
タイガが僕の陰茎を扱きながら、乳首を舌と指の腹で愛していく。胸の尖りから得られる刺激はもはや無視できないものになっていた。タイガに乳首を吸われるたび、僕の腰が淫らに揺れた。タイガは両方の乳首を均等に愛撫した。
胸元を見下ろせば、小さかった乳首がぽってりと腫れている。タイガの唾液を帯びて濡れそぼったピンク色の粒はとてもいやらしくて、僕はまたしても顔を隠したくなった。
「シン。勃起しているな」
「……ん、ふぅっ」
「おまえはここも綺麗だ」
ちゅっちゅっとタイガが僕の竿に口をつける。僕の先端から先走りがにじみ出て、タイガの唇をしっとりと濡らした。僕の大好きな人が、僕に惜しみない愛を捧げてくれている。これは夢の中の出来事だろうか。僕は口淫を続けるタイガの頭を太ももで挟み込んだ。タイガの少し長めに伸ばした髪は、今日もさらさらとしていて触り心地がいい。
「タイガ……僕もきみを愛したい」
「無理してねぇか?」
「ううん。僕だってきみを気持ちよくさせてあげたいんだ」
タイガは渋ったが、僕の瞳を見つめると「分かったよ」とつぶやいた。僕はタイガのへその下に頭をうずめた。タイガの立派すぎるモノに頬ずりをする。朱鷺色の竿が僕のキスを受けるたび、じんと熱くなった。僕はタイガの裏筋を舌でなぞった。ビキビキと硬くなった雄芯が僕の頬を張る。僕は愛する人の分身を口内に招き入れると、きゅっと頬をすぼめた。タイガが熱い吐息をこぼす。
「シン……。そのぐらいで、もう……」
ちゅぽんっと口を離せば、タイガが僕を抱きしめた。そして唇を重ね、舌を絡めてきた。
「もう一生分のキスをしてもらった気がするよ」
僕が微笑むと、タイガは「まだまだこれからだ」と言って僕の太ももに口をつけた。そして痛くなるほど吸って、キスマークをつけた。
「これが消える前に、またしよう」
「そんなに致したら、クセになってしまいそうだ……」
「俺なしじゃいられないようにおまえのカラダを変えてやる」
「あっ、おい! やぁんっ」
タイガが僕の乳首に軽く歯を立てた。強い刺激を与えられて、乳首にピクンと芯が通る。タイガはもう片方の乳首にも唇をつけた。僕は腫れぼったくなった乳首を見られたくなくて胸元を手で隠した。
「それ、かえってエロいってば」
「……タイガの意地悪」
「ふふっ。照れてるシン、最高に可愛いな」
「あんっ、それ……やだぁっ」
僕の腰の下に枕を置くと、タイガが僕の菊座をのぞき込んだ。自分でも見たことがない部分に熱い視線を注がれて、僕は恥じらうことしかできなかった。タイガはコンドームなるものを装着したあと、手のひらにローションを垂らした。とろみのある液体で濡れた指先が僕の菊座をくすぐる。
「あっ、ひゃっ……!」
「冷たい? 今、熱くしてやる」
「ん、ぅっ」
タイガの指先が僕の肉の環をなぞる。慈しむように皺の一つひとつに触れたあと、タイガは僕の会陰を舐めた。ふるりと肩が震えるほどの快感を覚える。タイガはそのまま僕の会陰を舐めながら、菊座に指先を突き入れた。タイガの指が僕のナカに入ってくる。
「力を抜いてくれ」
「うん……っ。あ、あぁっ。んんっ」
「第二関節まで入ったな」
僕のナカは初めての刺激を受けて、収縮を繰り返した。タイガが僕のナカにある一点をこすれば、僕は腰骨まで響くほどの快感を味わった。浜に打ち上げられた魚のように体をくねらす。僕が乱れるさまを見て、タイガの目がぎらりと光った。
「ここがシンのイイところか」
「タイガ……。そこばっかり、あっ! やっ……、だめだっ、おかしくなるぅっ」
「可愛い反応だ。シン、もっと喘いで構わないんだぞ?」
「僕が……っ、女人のようによがったら、興醒めじゃないか?」
「どうして。エッチなシンがいっぱい見たい」
「ひぃっ、あぁっ!」
タイガの指が僕の奥まで届いた。そこでくいっと指を折られれば、僕のナカはとろとろと柔らかくなっていった。2本目、3本目と指が増やされていく。僕のナカはタイガの角張った指でいっぱいになった。
「は、……ぁっ。あぁっ」
「シンのナカ、あったかいな」
「タイガ……。もう来ても大丈夫だ……」
「じゃあ、行くぜ」
僕の菊座に切っ先があてがわれる。タイガの亀頭は輪郭が大きくて、すべてを飲み込めるか僕は不安になった。でも、ここまで来て逃げるわけにはいかない。僕は足を大きく広げて、タイガが挿入しやすいような体勢をとった。
「シン……っ。愛してる」
「あ……、タイガの……あつい……」
コンドームなるものをつけていても、タイガの雄しべの熱はしっかりと感じられた。タイガが腰をゆっくりと僕のナカに沈めていく。亀頭を飲み込んだあとはスムーズにすべてを受け入れることができた。僕は初めて感じる圧迫感をこらえるため、シーツをぎゅっと握った。
「苦しいか?」
「……少し。でも、やめないでくれ……。きみを、感じたい」
「健気なことを言うな……」
タイガが緩やかに前後運動を始めた。
僕はタイガの剛直が根元まで引き抜かれるたび、言いようのない寂しさが募った。ずっと繋がっていたい。タイガを独占したい。すごく欲張りな自分がいて、タイガの雄芯を食い締めてしまう。
「タイガ……っ。もっと、強くしても、平気だぞ……っ」
「シン……」
「あぁ、あっ! ひゃうっ! そこ、こすられたら……」
タイガの性器の張り出した部分で、僕のイイところが刺激された。僕の目の前で小さな星がいくつもまたたく。悦点がもたらす快美に気を取られていると、今度はタイガの先端が僕の奥をトントンと叩いた。それをされると、僕はなんとも言えない多幸感に包まれた。タイガの逸物が僕の奥にぐっぽリとはまり込んでいる。僕たちは動きを止めて、しばし抱擁を交わした。
「タイガぁっ。おく、……気持ちいい……」
「感じてくれて嬉しいよ」
「あんっ! もう……っ。胸は触らなくていいからっ」
「乳首をつまむと、ナカがきゅっと締まるな。可愛い」
「タイガのスケベ……」
「俺がスケベな方が楽しいだろ?」
ちゅっと口づけられて、僕は泣きそうになった。愛する人の命を体の深いところで感じている。その事実は僕にとって僥倖に他ならなかった。僕以上に、僕のナカが喜びを表現して、タイガの雄しべをちゅぽちゅぽとしゃぶっている。僕の先端から精液とも先走りともつかない半透明の液が、とぷとぷとこぼれた。
タイガが抽送の速度を上げた。
僕は彼の背中に腕を回して、必死にしがみついた。
「タイガ……っ。好き、……ずっとずっと、好きだった」
「俺の方がおまえを……愛してる」
「あ、そこ……、だめだっ! 深い……!」
「イきそうだ……っ」
「来て……っ! タイガ……」
タイガがぶるりと腰を震わせた。
眉が苦しげに寄せられる。僕もまた先端からぷしゃあっと半透明の液を放った。僕のナカを占めていたタイガの剛直が大人しくなっていく。
タイガは陰茎を引き抜くと、コンドームを取り去った。
「僕は女人じゃないから、そこまで気を遣わなくてもいいのに」
「だーめ。ナカに出しちまうと腹が下るらしいぞ」
「タイガ、いろいろと詳しいね」
「そりゃ勉強もするわ。おまえを傷つけるわけにはいかないだろう? 俺が下界の不動産を回るのが好きなのも、もしもおまえが死神を辞めたいって言い出した時に困らないようにするためだよ」
「そうだったんだ……」
自分はそこまで愛されていたんだと思うと、申し訳なくなった。
「僕は何も知らずに、きみを拒んでばかりいたね」
「シンは俺のお姫様だからな。ワガママいっぱいでいいんだよ」
「だめだ。僕だってきみを愛したい」
「じゃあ、一緒にチョコ食べようぜ」
タイガはベッドの上にチョコレートボックスを広げた。
プラリネなるものが入ったチョコレートをつまんで、「うまい!」と叫ぶ。
「シン」
「なんだい?」
「お裾分けだ」
「……ンッ、ふ……っ」
タイガとのキスを通じて味わうチョコレートはやっぱり甘くて、僕は酔いそうになった。
「僕には甘すぎるよ……」
「じゃあ、このハイカカオをどうぞ」
「ありがとう」
「次は、このウイスキーボンボンにするかな」
「それってお酒が入ってるんだっけ?」
「そうだよ。食べるか?」
「いや。遠慮しておく」
アルコールの入った状態で、タイガと一緒に過ごしたら僕はとんでもなく甘えん坊になってしまいそうだ。それに、酩酊した頭ではなく、すっきりと覚醒した頭でタイガのことを見守っていたい。
タイガに勧められたハイカカオ・チョコレートを齧ると、苦味がとても快かった。大人の味だな。これならば辛党の僕でも食べられる。
「タイガ」
「ん? どうした」
「これからも……よろしく」
「はいよ」
僕の愛しい人は両腕を広げると、たくましい胸に僕を招き入れてくれた。
心音が聞こえる。
僕たちは死神で、一度は死んだ身だけど、人のような体を与えられている。心だって備わっている。
それは罰ではなく、僕に与えられた恵みだったのだ。
僕はタイガにキスをした。
ウイスキーボンボンの残り香が僕の舌にふわりと広がった。
◇◇◇
死にたての魂が僕のいる冥界にやって来た。
彼女はまだ自分の身に何が起きているのか分かっていない。三途の川を取り囲む彼岸花の群れを見て圧倒されている。
僕は死にたての魂を懐に抱いた。そのイチジクの実に似た形を、手のひらで撫でる。
「怖がることはないですよ。あなたはこれから白の花園に行くことになります」
「白の花園?」
「そこでじっくりと今後のことを考えるといいです」
「私は……もっと生きたかった」
「お子さんがいらっしゃったんですよね。さぞ無念だったでしょう」
「死神さん。またあの子たちに会えますか?」
「輪廻によって命がめぐれば、再び地上で会うこともあるでしょう」
「……連れて行ってください。白の花園に」
「分かりました。逝ってらっしゃい」
死神の鎌を振り下ろす。
死にたての魂が白の花園に旅立って行った。
ひと仕事を終えると、タイガが近づいて来た。
「シン。塩対応はもうやめたのか」
「……うん。タイガみたいにはなれないけど死者の不安を少しでも緩和できたらいいなって、今は思ってる」
タイガが僕の帽子をひょいっと持ち上げた。
「髪、伸ばし始めたんだ?」
「少し気分を変えたくて」
「きっと似合うぜ」
「タイガ。あの……今度の下界行きだけど」
「ホワイトデーにまた、ホテルを取ろうか」
「あ、うん」
僕の耳元に顔を寄せると、タイガが囁いた。
「……ツインじゃなくて、もちろんダブルでいいよな?」
答える代わりに、僕はタイガをぎゅっと抱きしめた。タイガが僕と唇を重ねる。あやすようなキスはやがて濃厚なものへと変わっていった。
鮮血を連想させるような赤い彼岸花が揺れている。
ここは冥界。死者が集い、悲しみが生まれる場所。
でも僕とタイガにとってここは、共に生きる場所だ。僕たちはこれからもキスを交わし、愛を語りながら、終わりのない時を一緒に過ごしていく。
「愛してる」
ようやく息継ぎの時間を与えられた僕は、タイガにそう伝えた。
タイガが僕の体を抱き上げる。
「高いたかーい!」
「また子ども扱いして」
「おまえがあんまり可愛いことを言うから、動揺してるんだよ」
しばし僕を抱き上げたあと、タイガは僕を下ろした。そして再び、熱いキスを捧げてきた。
舌の付け根の感じやすいところを舐められる。僕はタイガの背中に腕を回して、息を弾ませた。タイガの舌が自在に動き回り、僕の上顎を責めていく。幸福に包まれて、僕は瞳を潤ませた。
「気持ちいいか?」
「……うん」
僕がこの先、ウイスキーボンボンを口にすることはないだろう。だって僕には、心を溶かし、全身を甘く酔わせるようなキスをしてくれる永遠の恋人がいるのだから。
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