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第五章 未来を掴む
29. 挑戦
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光あふれる季節のさなか、レナートとメイユーズ様の結婚式が行われた。ノヴィス領はお祭りモードとなった。
俺はレナートのためにお祝いの歌を披露した。
レナートがメイユーズ様と添い遂げられますように。ふたりの未来が明るいものでありますように。気持ちが入るあまり、俺は感極まりそうになった。
「フィーラン、ありがとう。僕たち、幸せになるよ」
「私からもお礼を言わせてください。フィーラン殿、ありがとうございます」
メイユーズ様は魔法の使い手なのに偉ぶったところがない素敵な方だ。安心してレナートを任せられる。
俺は青空を見上げて、微笑んだ。
◆◆◆
レナートの結婚式から一ヶ月が経った。
王立音楽学院の採用試験を受けるため、俺は王都へとやって来た。
ノヴィス領の慎ましい街並みとは違って、店の看板の自己主張が激しい。行き交う人々も早足で、抜け目がない印象を受ける。
俺はスリに狙われないように警戒心を強めた。
やっと宿に着いて部屋に案内されると、疲れが襲ってきた。慣れない環境が緊張をもたらしていたのだろう。
俺は軽い食事をとって、眠りについた。
◆◆◆
そして採用試験当日になった。
俺は王立音楽学院の正門をくぐった。翼を広げた白鳥を連想させる、典雅な建物に足を踏み入れる。
長い廊下には、わがコクウォル王国が誇る音楽家の肖像画が飾られていた。文化振興に尽くした芸術王ケインの時代のものが多い。
この歴史ある場所で働けたら。
俺は楽典のペーパーテストを受けるために、試験室に向かった。
受験者は俺を含めて30名。この中から果たして何人が選ばれるのだろう。
緊張しながら試験監督の到着を待つ。
やがて、凛とした雰囲気の男性が現れて、教壇に立った。
「これより問題用紙と解答用紙を配ります。私が合図するまでは、問題用紙を捲らないでください」
さあ、いよいよだ。
俺は気合いを入れた。なりたい自分があるのならば、運命は自分で切り開くしかない。俺は実家の世話になるのは嫌だ。仕事を得て、自活したい。
「解答を始めてください」
問題用紙に目を走らせる。
基礎的な内容を問うものから、高度な記述問題までバラエティに富んでいる。俺は解きやすいものから答えを記入していった。あからさまな引っかけ問題に足元を掬われたりはしない。
だって、俺の人生がかかってるんだからな。
夢中になって問題を解いて、解答を見直しているうちに試験の終了時刻がやって来た。
「解答をやめてください」
俺は自分のすべてをぶつけた解答用紙を提出した。
「続きまして、実技試験を行います。受験番号順にこちらでお待ちください」
試験監督官に廊下で待つよう指示された。
採用試験の受験者が次々にドアの向こうに消えていく。実技試験の課題曲は事前に知らされていない。その場で歌えるかどうかを問われるようだ。
「フィーラン・アレクシスさん。入室してください」
名前を呼ばれたので、俺は音楽室の中に移動した。
音楽室は窓が大きくて明るく、広々としていた。鍵盤楽器の前に女性の伴奏者が待機している。
試験監督は3名。年配の男性に両側を挟まれて、年齢不詳の女性が不機嫌そうな表情で座っていた。
以前の俺ならば、女性が放っている威圧感に恐れをなしたかもしれない。でも、人生を賭けてチャレンジしに来たんだ。ちょっとぐらい怖い顔をされたからって、尻尾を巻いて逃げるつもりはない。
「フィーラン・アレクシスと申します。本日はよろしくお願いいたします」
不機嫌そうな女性が楽譜を手渡してきた。
「主任教授のセレンディア・セレンディよ。退屈な演奏ばかり聴いて飽きてきたところなの。思いきり暴れてちょうだい」
楽譜に目を通した俺は驚愕した。
五線紙が印刷されているものの、音符はひとつも書かれていない。真っ白な状態だ。
「何よ、驚いたの? 即興演奏ぐらいできなきゃ、ここではやっていけないわよ。これから伴奏を聴かせるので、それに合わせた曲を歌ってちょうだい。テーマは喜怒哀楽よ」
「承知しました」
伴奏者の女性が鍵盤楽器を奏でる。
俺は楽曲の全体の構成を頭に叩き込んだ。
俺はレナートのためにお祝いの歌を披露した。
レナートがメイユーズ様と添い遂げられますように。ふたりの未来が明るいものでありますように。気持ちが入るあまり、俺は感極まりそうになった。
「フィーラン、ありがとう。僕たち、幸せになるよ」
「私からもお礼を言わせてください。フィーラン殿、ありがとうございます」
メイユーズ様は魔法の使い手なのに偉ぶったところがない素敵な方だ。安心してレナートを任せられる。
俺は青空を見上げて、微笑んだ。
◆◆◆
レナートの結婚式から一ヶ月が経った。
王立音楽学院の採用試験を受けるため、俺は王都へとやって来た。
ノヴィス領の慎ましい街並みとは違って、店の看板の自己主張が激しい。行き交う人々も早足で、抜け目がない印象を受ける。
俺はスリに狙われないように警戒心を強めた。
やっと宿に着いて部屋に案内されると、疲れが襲ってきた。慣れない環境が緊張をもたらしていたのだろう。
俺は軽い食事をとって、眠りについた。
◆◆◆
そして採用試験当日になった。
俺は王立音楽学院の正門をくぐった。翼を広げた白鳥を連想させる、典雅な建物に足を踏み入れる。
長い廊下には、わがコクウォル王国が誇る音楽家の肖像画が飾られていた。文化振興に尽くした芸術王ケインの時代のものが多い。
この歴史ある場所で働けたら。
俺は楽典のペーパーテストを受けるために、試験室に向かった。
受験者は俺を含めて30名。この中から果たして何人が選ばれるのだろう。
緊張しながら試験監督の到着を待つ。
やがて、凛とした雰囲気の男性が現れて、教壇に立った。
「これより問題用紙と解答用紙を配ります。私が合図するまでは、問題用紙を捲らないでください」
さあ、いよいよだ。
俺は気合いを入れた。なりたい自分があるのならば、運命は自分で切り開くしかない。俺は実家の世話になるのは嫌だ。仕事を得て、自活したい。
「解答を始めてください」
問題用紙に目を走らせる。
基礎的な内容を問うものから、高度な記述問題までバラエティに富んでいる。俺は解きやすいものから答えを記入していった。あからさまな引っかけ問題に足元を掬われたりはしない。
だって、俺の人生がかかってるんだからな。
夢中になって問題を解いて、解答を見直しているうちに試験の終了時刻がやって来た。
「解答をやめてください」
俺は自分のすべてをぶつけた解答用紙を提出した。
「続きまして、実技試験を行います。受験番号順にこちらでお待ちください」
試験監督官に廊下で待つよう指示された。
採用試験の受験者が次々にドアの向こうに消えていく。実技試験の課題曲は事前に知らされていない。その場で歌えるかどうかを問われるようだ。
「フィーラン・アレクシスさん。入室してください」
名前を呼ばれたので、俺は音楽室の中に移動した。
音楽室は窓が大きくて明るく、広々としていた。鍵盤楽器の前に女性の伴奏者が待機している。
試験監督は3名。年配の男性に両側を挟まれて、年齢不詳の女性が不機嫌そうな表情で座っていた。
以前の俺ならば、女性が放っている威圧感に恐れをなしたかもしれない。でも、人生を賭けてチャレンジしに来たんだ。ちょっとぐらい怖い顔をされたからって、尻尾を巻いて逃げるつもりはない。
「フィーラン・アレクシスと申します。本日はよろしくお願いいたします」
不機嫌そうな女性が楽譜を手渡してきた。
「主任教授のセレンディア・セレンディよ。退屈な演奏ばかり聴いて飽きてきたところなの。思いきり暴れてちょうだい」
楽譜に目を通した俺は驚愕した。
五線紙が印刷されているものの、音符はひとつも書かれていない。真っ白な状態だ。
「何よ、驚いたの? 即興演奏ぐらいできなきゃ、ここではやっていけないわよ。これから伴奏を聴かせるので、それに合わせた曲を歌ってちょうだい。テーマは喜怒哀楽よ」
「承知しました」
伴奏者の女性が鍵盤楽器を奏でる。
俺は楽曲の全体の構成を頭に叩き込んだ。
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