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第七章 愛の歌
46. 心はひとつ
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「フィーラン殿。しばらく会えなくなりますね」
アレス様がお屋敷の玄関ホールで俺を抱きしめた。
これから俺はゼガルド領を離れ、王都に向かう。完成した歌劇の初稿を王立音楽学院のみんなにチェックしてもらうためだ。
玄関ホールには辺境伯夫妻がいて、俺とアレス様を見守っている。
「大丈夫ですよ、アレス様。俺たちには交音器がありますから。手紙だって書きます」
「そうですね。離れていても、私たちの心はひとつです」
「……また戻ってきます」
「はい。お待ちしております」
俺はアレス様の懐から抜け出した。
本音を言えば、別居なんて嫌だ。アレス様と一緒にいたい。でも、俺には使命がある。
俺は転移石を発動させた。
まばゆい光が俺の体を包み込む。
白んでいく視界に映ったアレス様の微笑みを、俺は胸に焼き付けた。
◆◆◆
王立音楽学院の音楽室にて、俺は歌劇の楽曲を披露した。
セレンディア教授に同僚のユイット、そして他の職員も聞きに来てくれた。
フィナーレの演奏を終えると、セレンディア教授が腕組みをした。もしかして気に入らなかったのだろうか?
俺が不安でいっぱいのまなざしを向けると、セレンディア教授がニヤリと笑った。
「いいかしら、フィーラン。この世界において、初稿が完璧なんてことはあり得ないわ。楽曲はアイディアを練って、構成を見直して。素材を叩いて叩いて仕上げるものなの」
セレンディア教授はそう言うと、俺にメモの準備を促した。
「まず序曲に関してだけど、もうちょっと作品のスケール感が伝わるように音域を広げた方がいいわ。ユイット。あなたの意見は?」
「そうですね、恋愛ものらしいロマンティックさをもうちょっと打ち出してもいいかなと思いました。たとえば、装飾音を増やすとか」
スケール感と装飾音か。
俺はメモに、セレンディア教授とユイットのアドバイスを書きつけた。
「ヒロインのテーマは力強くていいわね。キャラクターの特徴をよく掴んでるわ」
ユイットが「僕も同感です」と言った。
「小説『百年の恋歌』の魅力はなんと言っても、不撓不屈のヒロインにあります」
「改善点はそうね……しいて言えば、ヴァイオリンだけでなくヴィオラを加えて、音に厚みを出したらどうかしら」
「承知しました」
こんな調子で、俺はフィードバックをもらった。
修正箇所は膨大だった。でも、それだけ作品に伸び代があるということだ。俺の心は燃えていた。
◆◆◆
冬が終わった。
季節は春になり、明るい日差しが王都を照らしている。
ついに歌劇「百年の恋歌」が完成した。俺は王立音楽学院のみなさんにお礼を言った。
「おかげさまで作品を仕上げることができました。みなさまのご協力に感謝します!」
「よかったね、フィーラン」
ユイットが拍手をしてくれた。
「お疲れ様、フィーラン。よくやったわね」
「セレンディア教授。ご指導ありがとうございます」
「あとは、楽譜を宮廷楽団に渡して、練習してもらうことになるわね。主演歌手はヒロインがミシュレ、ヒーローがランディオスというのが王妃様のリクエストなんだけど、どうかしら? イメージに合う?」
「えっ。ふたりとも超有名な歌手ですよね。俺みたいな新人の作品に出てくれるんですか?」
「そこはロイヤルパワーを借りるのよ。王妃様からの依頼ならば、断る人間はいないわ」
なんだかすごいことになってきた。
俺は身が引き締まる思いだった。
アレス様がお屋敷の玄関ホールで俺を抱きしめた。
これから俺はゼガルド領を離れ、王都に向かう。完成した歌劇の初稿を王立音楽学院のみんなにチェックしてもらうためだ。
玄関ホールには辺境伯夫妻がいて、俺とアレス様を見守っている。
「大丈夫ですよ、アレス様。俺たちには交音器がありますから。手紙だって書きます」
「そうですね。離れていても、私たちの心はひとつです」
「……また戻ってきます」
「はい。お待ちしております」
俺はアレス様の懐から抜け出した。
本音を言えば、別居なんて嫌だ。アレス様と一緒にいたい。でも、俺には使命がある。
俺は転移石を発動させた。
まばゆい光が俺の体を包み込む。
白んでいく視界に映ったアレス様の微笑みを、俺は胸に焼き付けた。
◆◆◆
王立音楽学院の音楽室にて、俺は歌劇の楽曲を披露した。
セレンディア教授に同僚のユイット、そして他の職員も聞きに来てくれた。
フィナーレの演奏を終えると、セレンディア教授が腕組みをした。もしかして気に入らなかったのだろうか?
俺が不安でいっぱいのまなざしを向けると、セレンディア教授がニヤリと笑った。
「いいかしら、フィーラン。この世界において、初稿が完璧なんてことはあり得ないわ。楽曲はアイディアを練って、構成を見直して。素材を叩いて叩いて仕上げるものなの」
セレンディア教授はそう言うと、俺にメモの準備を促した。
「まず序曲に関してだけど、もうちょっと作品のスケール感が伝わるように音域を広げた方がいいわ。ユイット。あなたの意見は?」
「そうですね、恋愛ものらしいロマンティックさをもうちょっと打ち出してもいいかなと思いました。たとえば、装飾音を増やすとか」
スケール感と装飾音か。
俺はメモに、セレンディア教授とユイットのアドバイスを書きつけた。
「ヒロインのテーマは力強くていいわね。キャラクターの特徴をよく掴んでるわ」
ユイットが「僕も同感です」と言った。
「小説『百年の恋歌』の魅力はなんと言っても、不撓不屈のヒロインにあります」
「改善点はそうね……しいて言えば、ヴァイオリンだけでなくヴィオラを加えて、音に厚みを出したらどうかしら」
「承知しました」
こんな調子で、俺はフィードバックをもらった。
修正箇所は膨大だった。でも、それだけ作品に伸び代があるということだ。俺の心は燃えていた。
◆◆◆
冬が終わった。
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ついに歌劇「百年の恋歌」が完成した。俺は王立音楽学院のみなさんにお礼を言った。
「おかげさまで作品を仕上げることができました。みなさまのご協力に感謝します!」
「よかったね、フィーラン」
ユイットが拍手をしてくれた。
「お疲れ様、フィーラン。よくやったわね」
「セレンディア教授。ご指導ありがとうございます」
「あとは、楽譜を宮廷楽団に渡して、練習してもらうことになるわね。主演歌手はヒロインがミシュレ、ヒーローがランディオスというのが王妃様のリクエストなんだけど、どうかしら? イメージに合う?」
「えっ。ふたりとも超有名な歌手ですよね。俺みたいな新人の作品に出てくれるんですか?」
「そこはロイヤルパワーを借りるのよ。王妃様からの依頼ならば、断る人間はいないわ」
なんだかすごいことになってきた。
俺は身が引き締まる思いだった。
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