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最終章 ジジとの約束
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【Lapis夢が丘店】
《遊の携帯が鳴る》
あ、お母さんからだ。
「もしもし」
「遊ちゃんお願い助けて」
「どうしたの?」
「ジジちゃんが、ジジちゃんが大変なの」
「ジジがどうしたの?」
「お手々が2倍ぐらいに腫れちゃったのよ」
「わかった、すぐ行く」
《遊は電話を切る》
「ジジちゃんて?」
「Lapisのお爺ちゃんだよ。今年20歳になるんだ」
「私もう上がりなんですけど、ついて行っても良いですかー?」
「うん、良いよ」
お母さん泣いてたな。
ジジの手相当ひどいみたいだ。
お店は羊里君に頼んで、僕は真理絵ちゃんと一緒に家へ帰る事にした。
【天空路家の母屋】
「遊ちゃん早く。お願い、ジジを助けて」
「ジジはどこ?」
「今は和室で寝てるわ」
【和室】
「最近ヨボヨボ歩いてるなと思ってたのよ。そしたら、今朝見たら手が腫れてたの」
ああ、本当だ。
左手が2倍ぐらいに腫れてるな。
「右手も少し腫れてる」
「どうしてもっと早く気づいてやれなかったのかしら…」
お母さんが泣き出した。
「おばさん…」
真理絵ちゃんも一緒に泣いている。
「ジジ、レイキするから良い子にしてるんだぞ」
「ぐすん、病院へは?ぐすん」
「病院に連れて行ったら、検査や薬で死んじゃうと思うの」
「前にね、犬なんだけど「原因がわかりません」とか言って、ステロイドを大量に使われて副作用で白血病になって死んだ事が有るんだよ」
「え?!「わからない」とか言ってステロイドって酷い!」
「あの子はまだ5歳だったわ。挙句の果てに医院長が出て来て遊ちゃんに怒鳴りつけたの「うちで引き留めてるわけじゃない!どこか他にいけ!」って」
「「今日は偉い先生が来てるからラッキーだ」とか言ってたのに、急変したら怒鳴られた」
「酷い」
「医者の友達が来てくれて「人間よりも多い量のステロイドだから、やめなさい」って言われた「でもショックを起こすから少しづつ」って。あの頃僕はまだヒーラーじゃなくて、薬の怖さも知らなかったんだ」
「病院へは元気に歩いて行ったのよ。でも、歩けなくなって、薬の副作用で目が見えなくなって、心臓も肝臓も悪くなって…」
「そして白血病。人間の医者に紹介されて獣医さんを変えても毎日注射で…」
「注射が痛くて鳴いてたわ。そして最後の注射の後体が冷たくなって…ぐすん」
「愛里ちゃんに来てもらう!愛里ちゃんなら大丈夫だから!そんな怖い薬無理に飲ませたりしないから!」
僕はジジの腫れた両手にヒーリングを続けた。
「足にも負担がかかってるね、右足も腫れてる」
「白内障もひどくなって、目も見えなくなっちゃったのよ」
手足が腫れてから、目も見えなくなったらしい。
「こんにちは。失礼します」
愛里さんが来てくれた。
ポータブルのレントゲンで撮影してくれたけど、骨は折れてないようだ。
「ずっと煮干しを食べさせてたの。最近は嫌がって食べなくなったんだけど、何年も食べ続けたから」
そうなんだ。
煮干しと鰹節を食べ続けてたから、この年まで元気なんだと思う。
だけどテーブルに飛び乗るから、関節に負担がかかったんだ。
「手足を固定出来たら良いんだけどー。ストレスになるわね…」
僕はレイキをする前の2倍に腫れ上がったジジの写真を愛里さんに見せた。
「え?こんなにひどかったのー?少し腫れが引いてるじゃない。ヒーリングって本当に効くのー?」
前に自分の足に石を落として、まあ、普通に考えると湿布かな?と思って、ロキソニン塗って放置してたんだけどね。
夜にあんまり痛いので見て見ると、治るどころか内出血してて、レイキで治した事が有る。
時には薬が効かなくても治るんだよ、ヒーリングって。
ジジの手足も、毎日ヒーリングして、僕が治す。
同じ生きるなら、痛い所が無い方が良いもんな。
現在30歳の猫が居るらしい。
ギネス最長寿は38歳だ。
「頑張ろうな、ジジ」
「おばさん、私手伝います」
真理絵ちゃんが手伝ってくれて、ジジがテーブルに乗れないようにした。
僕はまだ手が離せない。
手足が治ったら、目にもレイキしたい。
白内障は手術しないと治らないと言うけど、やってみないとわからないからね。
ジジ、僕に手を持たれたまま寝ちゃった。
このまま大人しくしていてくれたら少しは良くなるかな?
人間じゃないから「歩き回るな」って言っても聞かないし。
明日から、毎朝ジジのヒーリングしてから出勤だ。
【天空路家前】
すっかり夜になっちゃった。
「送って行くよ」
「良いわよ」
「でも、もう暗いから」
「だーいじょうぶよー。真理絵ちゃんと一緒だし」
「じゃあ、駅まで」
【駅までの道】
真理絵ちゃん、ジジの事で凄く泣いてくれた。
僕だって泣きたかったけど、泣くわけいかなかった。
真理絵ちゃんて、優しいんだな。
「ねえ、天空路さん。一杯呑んで行かない?」
「えっ?ジジちゃんが心配だから、オーナーは帰った方が良いわよ」
「そっか…」
「一杯ぐらなら付き合うよ」
あれだけヒーリングしたんだから、安静にしててくれたら、少しは良くなると思うんだ。
たぶんじっとしててくれたら、腫れは引くと思うけど、猫だからな…
帰りにもう一度見に行こう。
【居酒屋】
「おじさん、もう1本ちょうだーい」
「はいよ!」
「オーナー、もう帰っても良いですよ。愛里ちゃんなら私が一緒だから大丈夫。ジジちゃんの所に戻ってあげて」
「うん、ありがとう」
僕がジジの事考えてるの、真理絵ちゃんわかってくれたみたいだ。
帰ってもう一度ヒーリングしよう。
【天空路家の母屋】
「今寝てるわ」
寝てる方がじっとしててくれるからやりやすい。
最近は年のせいで眠っている時間が多くなってる。
老衰の寝方って有るから、ちょっと心配なんだけど…
「ジジ、頑張ろうな。もっともっと長生きの猫が居るんだぞ。負けないもんな」
それから僕は、毎朝ジジのヒーリングしてから出勤して、昼休みにも帰って来てヒーリング。
夜も帰りに寄ってヒーリングするようにした。
LapisとRutileは、僕が遅くなると寂しいだろうけど、春陽ちゃんが来てくれているから助かるね。
ヒーリングすると治るんだけど、歩き回るとまた腫れる。
右手は腫れなくなったけど、左手は治っても治ってもまた腫れる。
それから3週間、毎日ヒーリングしてジジの手は腫れなくなった。
右足がもう少しだな。
【天空路家】
今日は春陽ちゃんは休みで、朝から来てくれた。
「Lapis、Rutile。良い子たんちててね。パパちゃん行って来るからね。春陽ちゃんの言う事聞くんだよ」
「お兄ちゃん行ってらっしゃい」
さて、今日もジジをヒーリングしてからお店に行こう。
【天空路家の母屋】
「昨日の夜はね、手も足も腫れてなかったのよ。朝ご飯も残さないで食べて、大好きな食べきりおやつを「ちょうだい」って言うの。それで8本も食べちゃって…1袋。昼間は一人でトイレも行ったのよ。ママがお風呂から出たらいつものように待っててくれて「ニャー!」って」
それで、ジジは?今どうしているんだろう?
「夜ご飯は半分残したの。そして自分でベッドに飛び乗って抱っこしたのよ。ムクっと起きてトイレに行こうとしたんだけど、お布団に出ちゃったからオムツにしたの。何度も起きてトイレに行こうとするから「オムツにして良いのよ」って言うとまた抱っこして寝んねしたのよ」
オムツに…なっちゃったのか…
オムツでも大丈夫だろ?
オムツになったって死なないだろ?ジジ…
「ママ、夜中に何度も目が覚めて、ジジちゃんどうかな?って見ると、穏やかに呼吸して寝てたの。朝まで抱っこして寝てたのよ。ママが起きた時は普通に寝てたの。でも起きて来ないのよぉ…」
お母さんが起きると、ジジはいつもすぐに付いて行って「ご飯!」て言う筈なんだ。
【ベッドルーム】
「ジジ…」
毛布を取ると、ジジはもう息をしていなかった。
「眠ったまま逝ったんだね、良い子だねジジ」
お母さんが泣き出した。
「まだ温かい…お母さん、舌が出てないよ。苦しまなかったんだね」
僕だって泣きたいけど、泣かないよ、ジジ。
20年良く頑張ったね。
僕がこの家に居た時から一緒だったんだ。
この家には昔から犬も猫も沢山居たけど、ジジが一番長生きだったね。
だいたい皆んな17年ぐらいだったもんな。
でも、こんなに穏やかな最期って少ないね。
僕はいつもジジに言ってたんだ「お兄ちゃん達の分も長生きするんだぞ。最期まで普通にしてて寝てるのか?と思ったらお兄ちゃんの所に逝ったのか」って、そんなふうに苦しまないで逝ってほしいって。
「ジジ、僕との約束守ってくれてありがとう。うちの子になってくれてありがとう」
ああ、もうお母さんわんわん泣いちゃってる。
「もう…動物は…飼わないわ…こんなに…悲しいのは…もう嫌」
いつもそう言うんだよね。
でも、今回は僕もお母さんのその気持ちがわかったよ。
LapisとRutileはまだ若いけど、いつかはその日が来るんだよね。
ジジが10歳を過ぎた頃から僕は、この日が来るのが嫌で17歳頃からは「今日は元気にしてるかな?僕を迎えに来てくれるかな?来てくれなかったらどうしよう?」って思うようになった。
19歳になったジジは、まだ元気に階段走ってたけど、夏にご飯を食べなくて痩せちゃって凄く心配した。
本当はあのまま逝っちゃってもおかしくなかったんだよね。
でもジジは頑張った。
秋になって食いしん坊が復活して、少し太ったんだけどね…
そんな矢先手が腫れて、目も見えなくなったんだ。
毎日毎日、寝てるジジを見ると「息してるかな?」って…
LapisとRutileもそんな心配をする日が来るんだ。
もっとずっと先が良いけど…
【夢が丘温泉駅】
《電車が入って来て止まる。扉が開いて人々が降りて来る。その中に遊が居る》
【駅前の階段】
さて、ジジの事、真理絵ちゃん達に何て話そう…?
【Lapis夢が丘店】
「えーっ!?嘘よ!うそでしょう?」
「私達大学の礼拝堂で毎日お祈りしてたんです…」
「神様は私達のお願いを聞いてくださらなかった」
「お祈りが届いていなかったのね。私達の信仰が足りないんだわ」
二人とも泣き出した。
羊里君は黙って紅茶を入れてくれた。
そうだ、ブログ書かなきゃ。
ジジの足のヒーリングの記事を、毎日書いていたんだ。
もう腫れなくなったところまで書いたのにな…
そうだな…
最期の約束守ってくれた事、ジジの言葉で書かせよう。
題は『大好きなお兄ちゃん達の所へ逝くニャ!』
そして…
このブログを読んでくれた人達から沢山のメッセージを頂いた。
中学時代の先輩なんて、物凄く泣いてた。
沢山沢山泣いてくれた。
ネットでしか知らない会った事も無い人達も沢山泣いてくれた。
みんな、ジジのヒーリングの記事に毎日励ましのコメントくれてた人達。
【サロン】
「ニャー」
「ミャーミャー」
ポン、タマ、チビトラもチビタマも皆んな居るな。
「お前達は、ジジよりも長生きするんだぞ。ジジも頑張ったけど、もっともっとだぞ」
「遊ちゃん…」
麻友さんの声だ。
顔見たら泣いちゃいそうだな。
僕、我慢してても、もらい泣きするからな。
《そのまま背中を向けている遊の腰に麻友は両手を回す》
「泣いても…良いの…よ」
《そう言う麻友の涙が遊の背中に落ちる》
麻友さんの肩が震えてる。
きっと…泣いてるんだ。
麻友さんも、ずっとジジの事見て来たもんな。
【天空路家】
《遊はドアを開けて入る》
「お兄ちゃん」
《泣きながら遊の胸に飛び込む春陽》
「私が小さい時、ジジの尻尾やお耳を引っ張って遊んでたの…ジジ、怒らないで…我慢してくれてた…」
そうか…
春陽ちゃんとそれ程変わらない歳なんだよな。
そんなに長い間僕と一緒に居たんだよな。
僕の弟ジジ…
人間だったらまだ大学生なのにって、いつも思ってた。
【天空路家の母屋】
お母さんは大丈夫かな?
何日経っても僕はこの家に来ると無意識にジジを探す癖が治らない。
もう抱っこもお鼻スリスリも無いんだね。
でも僕は泣かないよ。
泣いたらジジが迷っちゃうからダメだよって、前に誰かが教えてくれたから。
ーLa finー
《遊の携帯が鳴る》
あ、お母さんからだ。
「もしもし」
「遊ちゃんお願い助けて」
「どうしたの?」
「ジジちゃんが、ジジちゃんが大変なの」
「ジジがどうしたの?」
「お手々が2倍ぐらいに腫れちゃったのよ」
「わかった、すぐ行く」
《遊は電話を切る》
「ジジちゃんて?」
「Lapisのお爺ちゃんだよ。今年20歳になるんだ」
「私もう上がりなんですけど、ついて行っても良いですかー?」
「うん、良いよ」
お母さん泣いてたな。
ジジの手相当ひどいみたいだ。
お店は羊里君に頼んで、僕は真理絵ちゃんと一緒に家へ帰る事にした。
【天空路家の母屋】
「遊ちゃん早く。お願い、ジジを助けて」
「ジジはどこ?」
「今は和室で寝てるわ」
【和室】
「最近ヨボヨボ歩いてるなと思ってたのよ。そしたら、今朝見たら手が腫れてたの」
ああ、本当だ。
左手が2倍ぐらいに腫れてるな。
「右手も少し腫れてる」
「どうしてもっと早く気づいてやれなかったのかしら…」
お母さんが泣き出した。
「おばさん…」
真理絵ちゃんも一緒に泣いている。
「ジジ、レイキするから良い子にしてるんだぞ」
「ぐすん、病院へは?ぐすん」
「病院に連れて行ったら、検査や薬で死んじゃうと思うの」
「前にね、犬なんだけど「原因がわかりません」とか言って、ステロイドを大量に使われて副作用で白血病になって死んだ事が有るんだよ」
「え?!「わからない」とか言ってステロイドって酷い!」
「あの子はまだ5歳だったわ。挙句の果てに医院長が出て来て遊ちゃんに怒鳴りつけたの「うちで引き留めてるわけじゃない!どこか他にいけ!」って」
「「今日は偉い先生が来てるからラッキーだ」とか言ってたのに、急変したら怒鳴られた」
「酷い」
「医者の友達が来てくれて「人間よりも多い量のステロイドだから、やめなさい」って言われた「でもショックを起こすから少しづつ」って。あの頃僕はまだヒーラーじゃなくて、薬の怖さも知らなかったんだ」
「病院へは元気に歩いて行ったのよ。でも、歩けなくなって、薬の副作用で目が見えなくなって、心臓も肝臓も悪くなって…」
「そして白血病。人間の医者に紹介されて獣医さんを変えても毎日注射で…」
「注射が痛くて鳴いてたわ。そして最後の注射の後体が冷たくなって…ぐすん」
「愛里ちゃんに来てもらう!愛里ちゃんなら大丈夫だから!そんな怖い薬無理に飲ませたりしないから!」
僕はジジの腫れた両手にヒーリングを続けた。
「足にも負担がかかってるね、右足も腫れてる」
「白内障もひどくなって、目も見えなくなっちゃったのよ」
手足が腫れてから、目も見えなくなったらしい。
「こんにちは。失礼します」
愛里さんが来てくれた。
ポータブルのレントゲンで撮影してくれたけど、骨は折れてないようだ。
「ずっと煮干しを食べさせてたの。最近は嫌がって食べなくなったんだけど、何年も食べ続けたから」
そうなんだ。
煮干しと鰹節を食べ続けてたから、この年まで元気なんだと思う。
だけどテーブルに飛び乗るから、関節に負担がかかったんだ。
「手足を固定出来たら良いんだけどー。ストレスになるわね…」
僕はレイキをする前の2倍に腫れ上がったジジの写真を愛里さんに見せた。
「え?こんなにひどかったのー?少し腫れが引いてるじゃない。ヒーリングって本当に効くのー?」
前に自分の足に石を落として、まあ、普通に考えると湿布かな?と思って、ロキソニン塗って放置してたんだけどね。
夜にあんまり痛いので見て見ると、治るどころか内出血してて、レイキで治した事が有る。
時には薬が効かなくても治るんだよ、ヒーリングって。
ジジの手足も、毎日ヒーリングして、僕が治す。
同じ生きるなら、痛い所が無い方が良いもんな。
現在30歳の猫が居るらしい。
ギネス最長寿は38歳だ。
「頑張ろうな、ジジ」
「おばさん、私手伝います」
真理絵ちゃんが手伝ってくれて、ジジがテーブルに乗れないようにした。
僕はまだ手が離せない。
手足が治ったら、目にもレイキしたい。
白内障は手術しないと治らないと言うけど、やってみないとわからないからね。
ジジ、僕に手を持たれたまま寝ちゃった。
このまま大人しくしていてくれたら少しは良くなるかな?
人間じゃないから「歩き回るな」って言っても聞かないし。
明日から、毎朝ジジのヒーリングしてから出勤だ。
【天空路家前】
すっかり夜になっちゃった。
「送って行くよ」
「良いわよ」
「でも、もう暗いから」
「だーいじょうぶよー。真理絵ちゃんと一緒だし」
「じゃあ、駅まで」
【駅までの道】
真理絵ちゃん、ジジの事で凄く泣いてくれた。
僕だって泣きたかったけど、泣くわけいかなかった。
真理絵ちゃんて、優しいんだな。
「ねえ、天空路さん。一杯呑んで行かない?」
「えっ?ジジちゃんが心配だから、オーナーは帰った方が良いわよ」
「そっか…」
「一杯ぐらなら付き合うよ」
あれだけヒーリングしたんだから、安静にしててくれたら、少しは良くなると思うんだ。
たぶんじっとしててくれたら、腫れは引くと思うけど、猫だからな…
帰りにもう一度見に行こう。
【居酒屋】
「おじさん、もう1本ちょうだーい」
「はいよ!」
「オーナー、もう帰っても良いですよ。愛里ちゃんなら私が一緒だから大丈夫。ジジちゃんの所に戻ってあげて」
「うん、ありがとう」
僕がジジの事考えてるの、真理絵ちゃんわかってくれたみたいだ。
帰ってもう一度ヒーリングしよう。
【天空路家の母屋】
「今寝てるわ」
寝てる方がじっとしててくれるからやりやすい。
最近は年のせいで眠っている時間が多くなってる。
老衰の寝方って有るから、ちょっと心配なんだけど…
「ジジ、頑張ろうな。もっともっと長生きの猫が居るんだぞ。負けないもんな」
それから僕は、毎朝ジジのヒーリングしてから出勤して、昼休みにも帰って来てヒーリング。
夜も帰りに寄ってヒーリングするようにした。
LapisとRutileは、僕が遅くなると寂しいだろうけど、春陽ちゃんが来てくれているから助かるね。
ヒーリングすると治るんだけど、歩き回るとまた腫れる。
右手は腫れなくなったけど、左手は治っても治ってもまた腫れる。
それから3週間、毎日ヒーリングしてジジの手は腫れなくなった。
右足がもう少しだな。
【天空路家】
今日は春陽ちゃんは休みで、朝から来てくれた。
「Lapis、Rutile。良い子たんちててね。パパちゃん行って来るからね。春陽ちゃんの言う事聞くんだよ」
「お兄ちゃん行ってらっしゃい」
さて、今日もジジをヒーリングしてからお店に行こう。
【天空路家の母屋】
「昨日の夜はね、手も足も腫れてなかったのよ。朝ご飯も残さないで食べて、大好きな食べきりおやつを「ちょうだい」って言うの。それで8本も食べちゃって…1袋。昼間は一人でトイレも行ったのよ。ママがお風呂から出たらいつものように待っててくれて「ニャー!」って」
それで、ジジは?今どうしているんだろう?
「夜ご飯は半分残したの。そして自分でベッドに飛び乗って抱っこしたのよ。ムクっと起きてトイレに行こうとしたんだけど、お布団に出ちゃったからオムツにしたの。何度も起きてトイレに行こうとするから「オムツにして良いのよ」って言うとまた抱っこして寝んねしたのよ」
オムツに…なっちゃったのか…
オムツでも大丈夫だろ?
オムツになったって死なないだろ?ジジ…
「ママ、夜中に何度も目が覚めて、ジジちゃんどうかな?って見ると、穏やかに呼吸して寝てたの。朝まで抱っこして寝てたのよ。ママが起きた時は普通に寝てたの。でも起きて来ないのよぉ…」
お母さんが起きると、ジジはいつもすぐに付いて行って「ご飯!」て言う筈なんだ。
【ベッドルーム】
「ジジ…」
毛布を取ると、ジジはもう息をしていなかった。
「眠ったまま逝ったんだね、良い子だねジジ」
お母さんが泣き出した。
「まだ温かい…お母さん、舌が出てないよ。苦しまなかったんだね」
僕だって泣きたいけど、泣かないよ、ジジ。
20年良く頑張ったね。
僕がこの家に居た時から一緒だったんだ。
この家には昔から犬も猫も沢山居たけど、ジジが一番長生きだったね。
だいたい皆んな17年ぐらいだったもんな。
でも、こんなに穏やかな最期って少ないね。
僕はいつもジジに言ってたんだ「お兄ちゃん達の分も長生きするんだぞ。最期まで普通にしてて寝てるのか?と思ったらお兄ちゃんの所に逝ったのか」って、そんなふうに苦しまないで逝ってほしいって。
「ジジ、僕との約束守ってくれてありがとう。うちの子になってくれてありがとう」
ああ、もうお母さんわんわん泣いちゃってる。
「もう…動物は…飼わないわ…こんなに…悲しいのは…もう嫌」
いつもそう言うんだよね。
でも、今回は僕もお母さんのその気持ちがわかったよ。
LapisとRutileはまだ若いけど、いつかはその日が来るんだよね。
ジジが10歳を過ぎた頃から僕は、この日が来るのが嫌で17歳頃からは「今日は元気にしてるかな?僕を迎えに来てくれるかな?来てくれなかったらどうしよう?」って思うようになった。
19歳になったジジは、まだ元気に階段走ってたけど、夏にご飯を食べなくて痩せちゃって凄く心配した。
本当はあのまま逝っちゃってもおかしくなかったんだよね。
でもジジは頑張った。
秋になって食いしん坊が復活して、少し太ったんだけどね…
そんな矢先手が腫れて、目も見えなくなったんだ。
毎日毎日、寝てるジジを見ると「息してるかな?」って…
LapisとRutileもそんな心配をする日が来るんだ。
もっとずっと先が良いけど…
【夢が丘温泉駅】
《電車が入って来て止まる。扉が開いて人々が降りて来る。その中に遊が居る》
【駅前の階段】
さて、ジジの事、真理絵ちゃん達に何て話そう…?
【Lapis夢が丘店】
「えーっ!?嘘よ!うそでしょう?」
「私達大学の礼拝堂で毎日お祈りしてたんです…」
「神様は私達のお願いを聞いてくださらなかった」
「お祈りが届いていなかったのね。私達の信仰が足りないんだわ」
二人とも泣き出した。
羊里君は黙って紅茶を入れてくれた。
そうだ、ブログ書かなきゃ。
ジジの足のヒーリングの記事を、毎日書いていたんだ。
もう腫れなくなったところまで書いたのにな…
そうだな…
最期の約束守ってくれた事、ジジの言葉で書かせよう。
題は『大好きなお兄ちゃん達の所へ逝くニャ!』
そして…
このブログを読んでくれた人達から沢山のメッセージを頂いた。
中学時代の先輩なんて、物凄く泣いてた。
沢山沢山泣いてくれた。
ネットでしか知らない会った事も無い人達も沢山泣いてくれた。
みんな、ジジのヒーリングの記事に毎日励ましのコメントくれてた人達。
【サロン】
「ニャー」
「ミャーミャー」
ポン、タマ、チビトラもチビタマも皆んな居るな。
「お前達は、ジジよりも長生きするんだぞ。ジジも頑張ったけど、もっともっとだぞ」
「遊ちゃん…」
麻友さんの声だ。
顔見たら泣いちゃいそうだな。
僕、我慢してても、もらい泣きするからな。
《そのまま背中を向けている遊の腰に麻友は両手を回す》
「泣いても…良いの…よ」
《そう言う麻友の涙が遊の背中に落ちる》
麻友さんの肩が震えてる。
きっと…泣いてるんだ。
麻友さんも、ずっとジジの事見て来たもんな。
【天空路家】
《遊はドアを開けて入る》
「お兄ちゃん」
《泣きながら遊の胸に飛び込む春陽》
「私が小さい時、ジジの尻尾やお耳を引っ張って遊んでたの…ジジ、怒らないで…我慢してくれてた…」
そうか…
春陽ちゃんとそれ程変わらない歳なんだよな。
そんなに長い間僕と一緒に居たんだよな。
僕の弟ジジ…
人間だったらまだ大学生なのにって、いつも思ってた。
【天空路家の母屋】
お母さんは大丈夫かな?
何日経っても僕はこの家に来ると無意識にジジを探す癖が治らない。
もう抱っこもお鼻スリスリも無いんだね。
でも僕は泣かないよ。
泣いたらジジが迷っちゃうからダメだよって、前に誰かが教えてくれたから。
ーLa finー
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