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16主人公奴隷を買う2

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僕達は奴隷商に頼んで、奴隷の子を馬車で宿まで運んでもらった。奴隷の子は意識を失って、倒れてしまった。栄養が足りていない。おそらくほとんど食べさせてもらえなかったのだろう。 

「アル……アルがそういった事を望むのは男の子だから仕方ないと思うの…でも、それならもっと早く言ってくれたら、そのう、私が…」 

ヒルデが顔を赤らめて僕に意見するけど、絶対勘違いしているよね? 確かに性奴隷を買ってしまったけど、僕は断じてエルフの女の子にそういう事はしない。 

「ヒルデ、勘違いしているよ。僕はそんなつもりじゃなくて…」 

「いいの。私ったら、駄目な子。アルも健全な男の子、きっと、溜まっていたのね。今日にでも私で思う存分気持ちいい事してください。どんなハードプレイでも、大丈夫よ」 

いや、僕が困るよ。一応僕、婚約者いるから…以前話したんだけど、妄想中だったから、記憶に残っていないのかな? 

「ヒルデ、勘違いだよ。僕は彼女がこのままだと殺されてしまうかと思ったら、思わず彼女を購入してしまったんだ。だけど、彼女をそういう目的にする事はないよ。もちろん君にそういう事をするつもりもないよ」 

「私はむしろ歓迎なんですが?」 

女の子がそんな事言っちゃだめだよね? 

「えっ! えっ? 『今日は僕の部屋にお泊りしていきなさい』だなんて! アルの部屋で二人っきりでだなんて! ああっ! 今日の夜、アルに迫られて、抱きしめられて、『今夜ヒルデは僕のもの』だなんて言われて、良くわからない成分を流し込まれて、天国にいっちゃうのかしら! 駄目よ、未だ早すぎるわ! でも、アルが望むなら! お父さん、お母さん、私、今日いよいよ大人の階段を上ります!」 

ヒルデがまた壊れた…どうしよう? このポンコツ王女… 

しばし、考えて… 

「えいっ!」 

僕はいやんいやんのポーズで涎を流しながら何か妄想しているヒルデにチョップをいれた。 

「は! はあうっ!? ヒ、ヒルデは一体何を考えていたの?」 

良かった。昔のブラウン管テレビと同じ様な構造だった。どうやら、ヒルデは正気に戻ったらしい。僕はヒルデに良く言い聞かせる事にした。 

「ヒルデ、僕に好感を持ってくれるのは嬉しいけど、僕には婚約者がいるんだ。君の好意には応えられないよ…」 

「アル、もちろんアルに婚約者がいる事は聞いていたわ。あなたの婚約者には遠慮をするわ。だから、私をお妾さんの方向で考えて欲しいの?」 

ええっ? 王女様をお妾さんていう発想がないのですけど? それに僕は平民で重婚は禁止されている。ヒルデは王女様だから、王族で、その辺の常識がおかしいのかな? 王族は妾や側室を持つのが常識だと聞いた事がある。 

「あの、ヒルデ、僕は平民だよ。複数の人とは結婚できないよ。王女様の君が唯のお妾さんじゃ、君のお父さんに合わせる顔がないよ。僕のお父さんにも怒られるよ。そんなふしだらな…」 

「アル、私達は勇者パーティなのよ。魔王討伐が叶ったら、アルも貴族になるわ。貴族なら、複数の妻を持つ事は普通よ。ヒルデを一番愛して欲しいけど、アルには婚約者さんがいるから、二号でいい、そこはわきまえているわ」 

いや、王女様がそれでいいのか? 僕、平民だよ? いくら貴族になっても、王女様のヒルデと成り上がりの末席の貴族じゃ、釣り合わないよ。 

「それに、アルは優しいのね。てっきりエルフの女の子に凄いハードプレイをするのかと思ったの。普通、性奴隷を買う殿方はそういった目的で買うから…」 

「そういう事はしないよ。でも、戦いには参加してもらう。もし、彼女が嫌がるなら、別の役割を考えなくては駄目なんだけど…それにしても、僕は奴隷のことを軽く考えすぎていたよ」 

僕は顔を伏せた。あの奴隷商にはいっぱい食わされた。結局、このエルフの女の子を購入させるために誘ったのだ。全て計算ずくだ。だが、彼はそれなりに奴隷の事を考えているのかもしれない。実際、エルフの子は命が繋がった。あのままだと、死んでいただろう。奴隷の命を奪う事は禁止されているが、奴隷商の世界で不良商品を処分する事は十分考えられる。売れ残ると困るのだ。エルフの子はかなり安価で購入できた。売れ残りのペットと同じだ。それを考えると、僕が購入しなかった場合の彼女の行く末を考えると寒気を感じる。つくづく、深く考えずに奴隷を買おうのだなんて思ったら、本当に見たくもない現実を見せられた。 

「うっ、ううん」 

エルフの女の子が目を覚ました様だ。 

「大丈夫かい、ようやく目を覚ましたんだね?」 

僕はできるだけ優しそうな声を出した。きっと、この子は怖くて、怖くて仕方ないに違いない。少しでも早く、自分が安全な事を知って欲しい。 

「あなたは? あの時の…」 

「ああ、僕が君を購入した。でも安心して嫌な事は何もしないよ」 

エルフの少女は金髪? に青い目、長い髪…のようだ。髪は血と垢で本当の色ははっきりとはわからない。先ずは、食事だろう。僕は予め用意しておいたお粥を生活魔法で温めると、エルフの子に与えた。 

エルフの子は余程お腹が空いていたのか、かなりの勢いで食べた。その後、ヒルデに頼んで、湯あみをさせた。匂いが酷かったのだ。それに髪もガビガビだ。 

湯あみから帰ったエルフの子は見違える様に変わった。この子はあんな扱いを受けなければ直ぐに売れていたのではないだろうか? 金髪でも貴重なプラチナブロンド、金と銀の混じった髪で、とても綺麗だ。そして、その目は青く澄んでおり、睫毛はびっくりする位長い。エルフらしく、華奢な身体だが、胸はエルフにしては意外と大きい。それにエルフと言えば何と言ってもあの耳だ。耳は長く、明らかに人間とは違う事がわかった。ああ、あの耳触りたいな。 

「湯あみしたら、別人みたいに綺麗になったね?」 

「ええ、でも、この子、驚くわよ。色々な意味で」 

「へぇ?」 

ヒルデが良くわからない事を言う。 

「お前が私のご主人様ね? いやらしい顔で私を舐める様に見て…今日にでも喜々として私を襲おうと妄想しているのね? いい度胸ね。下僕の分際で、私を凌辱しようとするなんて…身の程を知る為、激しいお仕置きを希望するのね?」 

「えっと?…」 

僕、ご主人様だよね? 下僕じゃないよね? 

「いくら私の下僕とはいえ、勝手に私を性欲の処理の対象にしないでちょうだい」 

「いや、僕は君を性欲の処理にだなんてしないよ」  

「嘘をつきなさい……とっとと白状して、楽になりなさい」 

「ち、違うんだ! 僕はただ、君に僕のパーティに入って欲しいだけなんだ!」  

「そうね……『たくさん罵って、蔑んだ目で見苦しい雄豚の自分を見下したり、思う存分叱られながら尻をたくさん叩いてください』って言えたら、特別に入ってあげてもいいわ」 

「いや、僕そんな事されたくないよ!?」 

「情けない男ね。冗談でも口説けないなんて。とんだヘタレ糞豚野郎だわ」 

これ、口説き文句なの? 

この日はダンジョンに潜るのは延期した。エルフの子の名前はリーゼと言った。そして、夜となり、僕はそろそろ就寝しようかと思っていると、隣の部屋から声が聞こえてきた。 

「ああ、もう! 私のばか、ばか! 素敵なご主人様に何て事を言っちゃったの? ああ、ご主人様が素敵過ぎ! こんな私を購入してくれた上、大事にするからだなんて、何て素敵な人! 大好き! ご主人様!? わ、私、ご主人様に一目惚れしちゃった」 

ええっ? 何なの? 

「ああ、もう! 私がばか過ぎる! あんな態度ばかり取っていたら、ご主人様にきらわれちゃうよ!? いくらアルベルト様が優しいとはいえ嫌われちゃうよぉ!?」 

なんか、どうも嫌われていたと思ったエルフの子には好かれていたらしい。しかし、難儀な子だ。僕の周りには変な女の子しか集まらない呪いでもかかっているのかな? それに驚いた事に彼女はエルフ族の貴族だそうだ。元貴族の奴隷? これ絶対トラブルのフラグだよね? 
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