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44アマルフィのダンジョンへ1
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場違いな白い浜辺に現れたキラーラビット、それはあり得ない話だった。何故なら、魔物はダンジョンや魔石の埋まっている森で生まれ、人間の住む街に近ずく事はできない。街には普通聖石という女神様の加護を受けた聖なる石によって守られている。それに、街には守衛や騎士団、冒険者が巡回しており、街の中央の浜辺に侵入するのだなんて考えられない。
僕はヒルデに聞いた。仮にも勇者、魔物や魔族、そして当然魔王の事は詳しい筈だ。
「ねえ、ヒルデ、浜辺に魔物が現れた事、どう思う? 明らかに異常事態だよね?」
勇者は過去の魔王軍との戦いや様々な知識を国を挙げて優秀な教師をつけて教育する。過去に同様の事例があれば当然知っている筈だ。
ヒルデは珍しく真面目に考え込んだ。指をほっぺたにあてて、考える仕草は可愛い。でも、「アル、ごめん、ヒルデわかんない。子供の頃から勉強駄目だったから、勇者教育も全部赤点で…ヒルデの頭の中は真っ白で綺麗な状態よ」
「ええっ!?」
いや、ヒルデが多分馬鹿だろうという事は察してはいたが、ここまでとは思わなかった。
「全く駄目な王女ね。街の中心に魔物が現れるのだなんて、少なくても、通常の歴史には記録がないわ。リーゼは勇者とか勇者パーティの教育は受けていないけど、それは断言できる」
「ありがとう、リーゼ、助かるよ。それじゃ、この事態はどう考える?」
「簡単よ。魔物が街の聖石を無視して突然現出するには、聖石の女神様のオーラに勝る瘴気を得ればいいの、具体的に言うと、近くに強力な魔族がいれば生まれる事がある…」
「なんだって!?」
僕はリーゼの意見に納得はしたものの、あまりの事に驚いた。
「そ、それは、つまり、この砂浜の何処かに魔族が?」
「そういう事になるわね」
みな無言になる。当然だ。ここは多くの騎士や冒険者が守る街。そこにどうどうと魔族が侵入しているのだなんて。
「しかし、魔族なんて目立つから直ぐにわかってしまうんじゃないか?」
「ナーガさんの姿を見て、それを言える?」
そうだ。ナーガはいつもの褐色の肌では無く、白い人間のような肌に変身して、頭の角が辛うじて魔族である事の証だ。でも、角くらいだと、獣人の血が混じっているのかと思われるだけで、疑うものなんていない。
「もしかして、このアマルフィで騎士団や冒険者が姿を消す事件の犯人は、魔族?」
「その可能性が高いわね。それと…次のターゲットは私達、という事ね」
「僕達がターゲット!?」
僕は驚いたが得心がいった。僕達は正式な勇者パーティなのだ。そして、既に魔族を2体滅ぼしている。魔族にとっては要注意人物だろう。つまり、ここに魔物が現れたのは宣戦布告。
「すると、確認しなければならないね、アマルフィのダンジョンを?」
「そうね。もし、魔族が街を闊歩しているのなら、ダンジョンの最下層にはいない筈よ」
アマルフィのダンジョンは最近できたばかりだ。当然魔族が最下層にいる筈だ。だが、もし魔族がダンジョンから抜け出て、人の世界に紛れ込んでいたとしたら?
「明日はダンジョンに潜るしかないね…」
僕は決意を心にした。そこへ、涙目のヒルデが突然抱き着いてきた。
「ア、アル、お願い、ヒルデを捨てないで!? ヒルデが馬鹿だからって、見捨てないで!」
「い、いや、ヒルデは勇者だよ。パーティから見捨てる訳がないだろう? 何言っているの?」
僕はヒルデに抱き着かれて、密着されたヒルデの胸の心地よさを必死に我慢しようとしているが、ヒルデは相変わらず泣きながら、
「わ、私にはアルしかいないの!? 今、ヒルデが頭悪いから捨てようとか、一度だけ抱いたら捨てようとか、唯の遊びだとか、所詮繋ぎだとか、僕より相応しい愚かな男がいるよとか、君は何もかもが0点だとか、勉強はホントに全部0点とった事があるの、だから捨てないで!」
「いや、ヒルデ、僕はそんな事は思っていないから!?」
ヒルデは頭悪いという割に語彙力凄いな!? それにパーティじゃ無くて僕の2号さんの立場を捨てられると思ったのか。
「ヒルデは頭悪いから、絶対勇者戦役卒業したら、変な親父みたいな貴族か王族に嫁がされる!? だからアルが結婚してくれないと困るの!?」
なんか、どっかで聞いたような話だ。僕の祖国の王女クリスティーナ様もそんな理由で僕に結婚を迫ってきた。でも、僕はそもそもヒルデと結婚する約束をした覚えもないし、ヒルデが勝手に2号さんを自称しているだけで、僕は愛人だなんて、一人も認めた覚えはない。
僕は誤魔化す事にした。
「ヒルデみたいに可愛い娘はきっとカッコいい王子様とかに引く手あまただよ。頭って言ったって、勉強ができないだけだろう? 人間の価値は勉強だけじゃないよ」
「そ、それが、勉強だけじゃなくて、料理もできないし、いつもアホ毛だし、方向音痴でいつも迷子になるし、説明とか苦手でわかんなくなるし、絵が下手で画伯と言われるし、お買い物すると国家予算を越えてお父様から怒られるし、社交界のマナーも覚えられないし、ダンスパーティだと殿方の足の骨を何度も打ち砕いて、いつもウォールフラワーだったの!?」
全く、黒髪の理知的とも言える容貌のヒルデが馬鹿とは残念極まる。どう見ても頭良さそうだし、凄く可愛いし…あのクリスティーナ王女様のメイドが言っていたな…容姿だけに全振りの残念王女って…ヒルダも、そのパターンか? 王女様って、そんなに馬鹿が多いのかな?
結局ヒルデを誤魔化すのに必死だった。ヒルデは勉強はできないらしいけど、ホントに馬鹿とは思えない。誤魔化すのに結構骨がおれた。
僕はヒルデに聞いた。仮にも勇者、魔物や魔族、そして当然魔王の事は詳しい筈だ。
「ねえ、ヒルデ、浜辺に魔物が現れた事、どう思う? 明らかに異常事態だよね?」
勇者は過去の魔王軍との戦いや様々な知識を国を挙げて優秀な教師をつけて教育する。過去に同様の事例があれば当然知っている筈だ。
ヒルデは珍しく真面目に考え込んだ。指をほっぺたにあてて、考える仕草は可愛い。でも、「アル、ごめん、ヒルデわかんない。子供の頃から勉強駄目だったから、勇者教育も全部赤点で…ヒルデの頭の中は真っ白で綺麗な状態よ」
「ええっ!?」
いや、ヒルデが多分馬鹿だろうという事は察してはいたが、ここまでとは思わなかった。
「全く駄目な王女ね。街の中心に魔物が現れるのだなんて、少なくても、通常の歴史には記録がないわ。リーゼは勇者とか勇者パーティの教育は受けていないけど、それは断言できる」
「ありがとう、リーゼ、助かるよ。それじゃ、この事態はどう考える?」
「簡単よ。魔物が街の聖石を無視して突然現出するには、聖石の女神様のオーラに勝る瘴気を得ればいいの、具体的に言うと、近くに強力な魔族がいれば生まれる事がある…」
「なんだって!?」
僕はリーゼの意見に納得はしたものの、あまりの事に驚いた。
「そ、それは、つまり、この砂浜の何処かに魔族が?」
「そういう事になるわね」
みな無言になる。当然だ。ここは多くの騎士や冒険者が守る街。そこにどうどうと魔族が侵入しているのだなんて。
「しかし、魔族なんて目立つから直ぐにわかってしまうんじゃないか?」
「ナーガさんの姿を見て、それを言える?」
そうだ。ナーガはいつもの褐色の肌では無く、白い人間のような肌に変身して、頭の角が辛うじて魔族である事の証だ。でも、角くらいだと、獣人の血が混じっているのかと思われるだけで、疑うものなんていない。
「もしかして、このアマルフィで騎士団や冒険者が姿を消す事件の犯人は、魔族?」
「その可能性が高いわね。それと…次のターゲットは私達、という事ね」
「僕達がターゲット!?」
僕は驚いたが得心がいった。僕達は正式な勇者パーティなのだ。そして、既に魔族を2体滅ぼしている。魔族にとっては要注意人物だろう。つまり、ここに魔物が現れたのは宣戦布告。
「すると、確認しなければならないね、アマルフィのダンジョンを?」
「そうね。もし、魔族が街を闊歩しているのなら、ダンジョンの最下層にはいない筈よ」
アマルフィのダンジョンは最近できたばかりだ。当然魔族が最下層にいる筈だ。だが、もし魔族がダンジョンから抜け出て、人の世界に紛れ込んでいたとしたら?
「明日はダンジョンに潜るしかないね…」
僕は決意を心にした。そこへ、涙目のヒルデが突然抱き着いてきた。
「ア、アル、お願い、ヒルデを捨てないで!? ヒルデが馬鹿だからって、見捨てないで!」
「い、いや、ヒルデは勇者だよ。パーティから見捨てる訳がないだろう? 何言っているの?」
僕はヒルデに抱き着かれて、密着されたヒルデの胸の心地よさを必死に我慢しようとしているが、ヒルデは相変わらず泣きながら、
「わ、私にはアルしかいないの!? 今、ヒルデが頭悪いから捨てようとか、一度だけ抱いたら捨てようとか、唯の遊びだとか、所詮繋ぎだとか、僕より相応しい愚かな男がいるよとか、君は何もかもが0点だとか、勉強はホントに全部0点とった事があるの、だから捨てないで!」
「いや、ヒルデ、僕はそんな事は思っていないから!?」
ヒルデは頭悪いという割に語彙力凄いな!? それにパーティじゃ無くて僕の2号さんの立場を捨てられると思ったのか。
「ヒルデは頭悪いから、絶対勇者戦役卒業したら、変な親父みたいな貴族か王族に嫁がされる!? だからアルが結婚してくれないと困るの!?」
なんか、どっかで聞いたような話だ。僕の祖国の王女クリスティーナ様もそんな理由で僕に結婚を迫ってきた。でも、僕はそもそもヒルデと結婚する約束をした覚えもないし、ヒルデが勝手に2号さんを自称しているだけで、僕は愛人だなんて、一人も認めた覚えはない。
僕は誤魔化す事にした。
「ヒルデみたいに可愛い娘はきっとカッコいい王子様とかに引く手あまただよ。頭って言ったって、勉強ができないだけだろう? 人間の価値は勉強だけじゃないよ」
「そ、それが、勉強だけじゃなくて、料理もできないし、いつもアホ毛だし、方向音痴でいつも迷子になるし、説明とか苦手でわかんなくなるし、絵が下手で画伯と言われるし、お買い物すると国家予算を越えてお父様から怒られるし、社交界のマナーも覚えられないし、ダンスパーティだと殿方の足の骨を何度も打ち砕いて、いつもウォールフラワーだったの!?」
全く、黒髪の理知的とも言える容貌のヒルデが馬鹿とは残念極まる。どう見ても頭良さそうだし、凄く可愛いし…あのクリスティーナ王女様のメイドが言っていたな…容姿だけに全振りの残念王女って…ヒルダも、そのパターンか? 王女様って、そんなに馬鹿が多いのかな?
結局ヒルデを誤魔化すのに必死だった。ヒルデは勉強はできないらしいけど、ホントに馬鹿とは思えない。誤魔化すのに結構骨がおれた。
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