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side ロイ
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しおりを挟む「では、殿下、ごきげんよう」
「ま、まて、テレーゼ!!」
踵を返し、3人の兄達と去ろうとするテレーゼを慌てて呼び止める。テレーゼはスカートをなびかせ、クルリと振り向くと、こぼれるような笑顔を見せた。
「まぁ、殿下。私と殿下はもう他人ですのよ? テレーゼなどと親しそうに呼び捨てされては、周りから誤解を招きかねませんわ」
「え……あ……いや……」
普段、無口かつ無表情だったテレーゼの嬉々とした顔と有無を言わせぬ迫力に驚き、戸惑ってしまう。なんと返事をしていいのか咄嗟に思いつかず、言葉を詰まらせる俺を見て、テレーゼは楽しそうに声を弾ませた。
「そうですわね……私は殿下に婚約破棄された可哀想な令嬢ですが、情けは無用。どうぞ素っ気なくハイウォール公爵令嬢とでもお呼びくださいませ」
極上の微笑みと完璧なお辞儀をこなすテレーゼの所作の美しさに、こんな状況であるにもかかわらず、見惚れてぼぅとしてしまい、ハッと我に返る。
「いや、あの……テレ……ハ、ハイウォール公爵令嬢……あの……本当に婚約は破棄されたのか?」
「はい」
「えっと……その……さっきまでは、婚約者だったのに?」
「はい」
「今は……」
「ただの臣下ですわ」
テレーゼは気持ちいいくらいキッパリ言い切り、俺に優しく微笑んだ。その青い瞳の中にチラッと憐れみの色が見えた気がし、なんだか俺は大変な事をしてしまった気分になる。
「では、ごきげんよう、殿下」
もう一度、素晴らしく美しいお辞儀をすると、何も言えずに立ち尽くしている俺を庭園に残し、兄達と並んで行ってしまった。
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