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番外編 バストリー・アルマンの事情
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しおりを挟むあの日、テレーゼ様に声を掛けられた事で僕の運命は変わっただろう。
婚約破棄を破棄するにはどうしたらいいんだ……とずっと同じ文言を繰り返し、頭を抱えている殿下の前に書類の山をドンと置く。
「殿下。公務の書類は九割方片付けました。後は殿下の直筆のサインが必要です。僕では代わりはできません」
事務的に説明する僕に、殿下はムッとしたのか室内に響き渡らせるほど声を荒らげた。
「今、公務どころじゃないんだ! テレーゼとの婚約破棄を何とかしてくれっ」
殿下の切羽詰まった顔を横目で見ては、僕は小さく溜息をつく。
「先程も言いましたが、僕には無理です。僕は用事があるので、これで帰らせていただきますよ。書類の期限、間に合わせてください」
帰り支度を始めると殿下は捨てられた子犬の様な目で僕に縋ってきたが、気付かないふりをして執務室を後にする。
王宮の門外には、我が家の馬車がすぐに出発できるよう準備万端で止まっていた。僕を待っていた御者が馬車の扉を開ける。
「お帰りなさいませ」
「ハイウォール家へ」
馬車に乗り込みながら言葉少なに指示を出し、倒れ込むように座った。
疲れた……
殿下が婚約破棄だのなんだので騒いでいる間、公務を一手に引き受け、ずっと書類を睨んでいた。疲れた目を休ませる為、瞼をゆっくり閉じる。
やっと婚約破棄なさったか。
僕は目をつむったまま、ニッと笑った。
ハイウォール家は悲願達成の為の第一歩を踏み出した。早速テレーゼ様にお祝いを伝えよう。
先程の殿下の焦った顔が頭に浮かび、ククッと喉を鳴らす。
我がアルマン家は王家と心中するつもりはない。上手く乗り越えて見せるさ。
おもむろに目を開き、これから王家に起こる未来を想像しては、僕は小さくほくそ笑んだ。
《fin》
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この度は作品をお読みいただき、ありがとうございます。
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