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あれから3ヶ月経ちました

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 3ヶ月たった今も親友2人は怒りは収まらない。
 どちらかというと、日に日に怒りが増していて、絶賛大大激怒中だ。

 俺は机に突っ伏したまま、ジェスターを盗み見る。部屋の端で山積みになっていた婚約者候補リストを俺の前にドスンと置き、ペラペラめくりながら、ああでもない、こうでもないとひとり言を言っている、ジェスター。
 俺は聞かない。あくまで、ジェスターこいつのひとり言だ。

 まぁ、ジェスター、ミカエルこいつらの気持ちもわかるけどな。
 それほど2人にとって、クラリスは大切でかけがえのない女性だということだし、その女性を俺が王族の特権を使って婚約したわけだし。
 反対の立場なら、と想像すると間違いなく、俺もブチ切れる。

 ただ、どんなに激怒されても、俺は譲らない。
 クラリスは、俺にとっても大切でずっと側にいて欲しい女性なのだから。
 
 婚約者になれば、とりあえず、男として認識してもらえると思っていたが…………見事、撃沈。
 
 いや、そんなことで、めげてる場合ではない。婚約者という大義名分をつかい、デートに誘ったり、プレゼントをしたり、食事に招待したり……恋人らしいことをして、男として意識してもらえるよう、頑張っていく予定だった……が。

 俺は、どこで間違ったのだろうか?

 話によると、婚約者殿は「アルベルト様に自由と平和を!」と声高らかに目標を掲げ、日々、義弟のミカエルと作戦を練っているらしい。
 
 自由と平和って……
 
 クラリスの脳内では、俺はどれだけ悲惨な目にあっているんだ?
 
「早く婚約から解放してあげたいです! いつ頃なら、国王様の顔を潰すことなく、破棄できると思いますか?」
 
 屈託ないかわいい笑顔で聞いてくる。
 
 ……頭が痛い。

 親友2人の大大激怒も相当辛いが、俺のために婚約破棄に乗り気なクラリスの笑顔が1番キツイ今日このごろ。

 俺は、想いを寄せている令嬢と婚約という、幸せな立場にありながら、なぜか、心労だけが増していく。

 本来なら、婚約が決まった、今って1番ハッピーな時期なんじゃ?
 いや、相手はクラリスだ。
 普通なら……なんて求めちゃいけない。

 求めちゃいけない……いけないけど……

 1度くらい、浮かれたかったと思うのは、俺の我儘だろうか?
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