鈍感令嬢に恋した時から俺の苦労は始まった

魔法の鍛錬、頑張りました

6

　やばい、死ぬ。本当に死ぬ。
　
　俺は川の中で必死で足掻く。
　魔法で手のひらから風を出し、川底にむけるが、川の流れが思ったより早く、水流に負けてしまう。
　
　ダメだ、威力が弱い。
　ここで、俺は死ぬわけにはいかないんだよ！

　体に眠る全魔力を手のひらに集中させた。
　
　息が苦しい……もう少し、もう少し……魔力を……
　
　意識が遠のきそうになる、何度も何度も。
　ぼんやりした頭に泣いているクラリスの姿がよぎる。

　俺が死んだらクラリスが泣く…………たぶん。
　死ねない……！

　手のひらが熱くなるのを感じ、一気に風を放出する。

　ザバッ

　やっと川から脱出し、息を思いっきり吸う。　
　だが、一難去ってまた一難、勢いよく放出した風によって、俺の体は高く高く空に浮かんだが……風魔法が止まってしまう。

　……え？

　落下の一途を辿る、俺……ええっ！？

　やばい、やばいってば！
　
　必死に風を出そうとするも、手のひらから出てくる風は、とてもかわいらしい音を立てた。

　プシュン、プシュン

　役に立たねーーーー

　落下スピードが早すぎて、俺の頭が追いつかない。

　コレ、俺、死ぬ、かも。
　
　人間とはすごいものだ。死を覚悟しても、なんとか助かろうと体が動く。俺は川岸に叩きつけられる直前に、無意識に体にシールドを張って、衝撃を抑え、なんとか助かった。
　
　うつ伏せのまま落ちた体をゴロンと仰向けにし、大の字になる。力を使いすぎて、立ち上がることができない。

　びびった…………相変わらず……ハァ……容赦ない……ハァハァ……ザラ、ほんと、こえーー

　足りなかった酸素を思いっきり取り入れ、俺は青い空を見る。

　ああ、生きてる……

　やっと息を整え、立ち上がる体力も戻り、落ち着いて辺りを見渡した……そして思う。


　ココドコ？