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風邪を引いて寝込んでました

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「失礼します。ナクサス様」

 換気の為、扉を開けていたので、メイドが部屋の外からナクサスを呼んだ。ナクサスは扉の方へ歩いていき、小声でなにかの報告を受け、頷くと、少し距離があるからか普段より大きめの声を出す。

「王子、お見舞いにいらした方……」
「あー悪いけど、断ってくれ。本調子じゃないしな」
 
 なんとなく用件を察していた俺は、ナクサスにアホだのなんだの言われたイライラをぶつけるように、先回りをして返事をした。
 
 俺にいい顔したいどこぞの貴族だろう。
 謁見じゃないし、見舞いはありがたいが、気を使って余計疲れる。
 そんなこと俺に聞くまでもなく、断ってくれよ。側近なんだからさぁ。
 これは、あとで一言、ビシッと言ってやろう。

「わかりました。では、クラリス様には丁重にお断りをしてきてください」

 メイドに指示を出したナクサスの声を遠くに聞きながら、ベッドにもぞもぞ潜り、もうひと眠りしようとした。

 そうそう、俺、病気なんだから、休ませ…………えっ?

「クラリスなのか!?」

 俺は一瞬で覚醒し、ベッドから飛び起きた。
 そばに戻ってきたナクサスは、憎たらしいほど平然と答える。 

「そうですけど?」
「おい! 早く言えよ!」
「聞かなかったのは、王子でしょう?」

 いや、ナクサスに文句言ってる時間はない。
 早く、止めなければ。
 
 慌てて、廊下に出て、メイドを追いかける。

「待て、待て断るなぁーー」

 俺の後ろでナクサスが、再びため息をついているのが聞こえた。

「めちゃくちゃ元気じゃないですか……」
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