グリム・リーパーは恋をする ~最初で最後の死神の恋~

桜乃

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棘花 ―イゲバナ―

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 ローザと初めて会ったのは、スピネル学園入学の半年前。

 僕は父の使いでベリル伯爵の屋敷を訪れていた。

 父の下で仕事をするベリル伯爵は、シトリン家の補佐という重圧ある仕事でも抜かりなくこなす頼りになる父の腹心である。

 もちろん、おもての仕事の話だが。

「おや、坊ちゃん。久しぶりですね」

 ベリル家の使用人に案内され、執務室に通されると仕事をしていたであろうベリル伯爵は羽根ペンを置いた。親しみやすい人の良さそうな顔でにこりと笑う。

 昔から我が家に出入りし、子供の頃から僕をかわいがってくれていた伯爵は僕の事を坊っちゃんと呼んでいる。

「ベリル伯爵、ご無沙汰しております。本日は父より書類を預かって参りました」

 僕が封筒を手渡すと伯爵は封を開け、中の書類をパラパラと確認した。傍に控えていた執事に封筒ごと渡し、僕に向かってにこやかな笑顔を見せる。

「確かに受け取りました。坊ちゃん、しばらく会わないうちにご立派になられましたね。もうすっかり貴公子だ。そうだ、少しお茶でも飲んでいきませんか? シトリン家には使いを出しておきますから」

 僕はこの後の予定を考えながら、にっこり笑った。

 特に急ぎの用事はなかったはず。ベリル伯爵からの誘い、無下に断るわけにもいかない。

「では、少しだけ……お言葉に甘えて」

 伯爵は満足そうに大きく頷き、満面の笑みを浮かべる。

「それはよかった。ああ、私は少し仕事が残っていますので後から行きますが、その間、娘のローザがお相手いたしますよ」

 ああ、なるほど。

 僕はベリル伯爵の思惑を察したが、今更、断るわけにもいかず、仕方なく案内された応接間でローザ嬢を待つこととなった。
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