イケメンな鳥とストーカー

あおくん

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にー

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変な男に出会ってしまった。

その男はまるで私と交際しているかのような口ぶりをし、加えてその虚言を周囲の人達にも広めていた。

店員と客。

接点なんて注文を告げる時と、注文の品を受け取る時、そして会計の時くらいしかないはずなのに、どの場面でそう思えるのか不思議に思うほど、いや脳みそを疑うほどに男は大きな勘違いをしていた。

恐怖でしかないはずである。

本来であれば。

けれど、イケメンに限る。
という言葉はよく出来た言葉だった。

おかしな勘違いを告げられても

急に手を握りても

嫌だ。やめてくれ。と思う前に

この心臓が己の意志に従わず、高鳴ったのだから。









ココにとって、ケンというイケメン店員勘違い男は変態という枠組みに定められた。
たとえ顔が良くとも、話が通じないとあれば当然のことだ。

家につき、落ち着きともいえる正常な思考を取り戻したココは考えた。

そもそもこんな変な男が現れたのは、ココが仕事と趣味漬けの毎日を送り、その結果恋人も作らず、そして結婚もしてないことが理由なのだと。

ココはそう結論づけた。

話が通じない時点で恋人がいようがいまいが関係なさそうなものなのに、話が通じないという変態の心を理解していないココは、立ち上がった。

結婚前提を考えてくれる恋人を作ろうと、決心したのである。


《チュンチュン》


ココが立ち上がり、拳を天井高く突き上げたと同時に、鳥の鳴き声が聞こえた。
ココはカーテンをあけ、そして窓を開けた。
そこには一羽の鳥がベランダの手すりに止まり、ココを待つかのようにとどまっていた。
頻繁に来ているのか、ココは鳥の来訪を歓迎していたし、鳥も疑いもせずに部屋へと侵入する。

「久しぶり!」

鳥が止まりやすいよう軽く握るような形で手を持ち上げたココの人差し指に鳥が止まる。

そしてココの言葉に反応しているかのように、鳥が高い鳴き声で一声鳴いた。

そんな可愛らしい鳥の様子に、ココはよしよしと人差し指の腹で頭を撫でる。

「でもごめんね。今日はこれから出掛けるのよ」

鳥はチュン?と首を傾げ、ココを見上げる。

普通の鳥ならばありえないことだが、鳥を飼ったことがないココは懐けば人間の言葉もわかるようになるのだと思いこんでいた為、不思議には思わなかった。

そして更に言葉を続ける。

「これからね、恋愛相談所に行くのよ」

少しだけ頬を赤らませるココに、ピシリと石のように固まる鳥。

鳥は驚いて、人間へと変身した。

「どうして!?僕のことが嫌いになった!?」

最近見たイケメン店員基、変態野郎である。

「ッッッ!!!?」

ココは驚きのあまり、声も出せなかった。
寧ろ咳き込んでしまった。
唾液が気管に入り込み、涙が目に溜まる。
流石に流すほどではなかったが、それほどココは驚いたのだ。

「ねぇ!ココさん!僕のことが嫌いになったの!?」

騒ぐ変態は、躊躇うことなくココに近付いた。

ちなみにココは咳き込んでいたため、前傾姿勢であり、目線は下の状態だ。
つまり何も考えずココに近付いた変態男の下半身は、ココの目線の前にある。


さて、この世界にはココのように普通の人間が多く存在するが、中にはケン基変態男のように人間へと変身する鳥や動物の獣人と呼ばれる人種が存在する。

人間へと変身している姿での判別方法は不可能とされており、また獣人たちもおいそれと元の姿は晒さない。
何故なら元の姿は獣人達にとって裸そのものだからである。
人間が服を着て、人が往来する場所に向かうように、獣人たちも人間の姿に変身するのだ。

つまり、どうしようもない程の大きな理由がない限り、獣人は本来の姿にはならない。

またこれは一般論であり、ココも知っていた為、ココのもとにやってきていた鳥は、本物の鳥なのだと勘違いしていた理由である。

ここで話を戻そう。

人間に変身したケンは裸だった。

当然だ。
鳥の姿で服は着れないからだ。
例え服を着ていたとしても、それは鳥用のサイズであり何倍も大きい人間の姿には合わない。
人間へと変身した途端破けてしまうだろう。

そうケンは変態と改めて意識付けられる程、見事に裸だった。

そして前傾姿勢のココの目の前には、何も身に着けていない変態の下半身が己を主張していた。

ジッとガン見する、いや、変態の股間がまさかなにも纏うことなくそこにあるとは思わずその場で固まってしまったココに、変態の股間が僅かに動く。

勿論変態が意識的に行ったことではなかった。

変態の中では既に恋人であるココに見つめられていると思えば、変態としては気持ちも高ぶってしまうだろう。
その想いが勝手に股間を動かした。

ココにとっては、ただのカフェオレが美味しいお店の、ただの店員であるだけの真っ赤な他人であるが。

ココは動いた。

前傾だった姿勢を正し、足は肩幅に開く。
そして思いっきり掌を変態の頬へとクリーンヒットさせた。

バチーンと大きな音が聞こえる。

ケンは思わず鳥の姿へと戻った。

何故戻ったのかというと、もちろん頬を打たれたからではない。
ココの目から涙が流れていたからである。
勿論噎せたときに溜まった涙だ。

ココは取りに戻ったケンを、いや変態を鷲掴み、窓から思いっきり放り投げる。

そのまま勢いよく窓を締め、そして覗かれないようにカーテンも閉めた。

「チュン…」

外で鳥に戻ったケンは呟いた。



ココはなんてかわいいんだ。と。



ココは知らない。

変態には変態なりの思考があることを。

思いっきりビンタして思わず窓から放り投げたことを、後々暗くなった部屋で後悔しているココとは反対に、変態の裸に顔を赤らませ、あんな行動に出たのも全て照れ隠しからだと思われていることをココは知らなかった。




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