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さん
しおりを挟む「やりすぎ、ちゃったかな……?」
カーテンを締めたことで、窓から差し込んでいた光が完全遮られ暗くなった室内の中、じわじわと罪悪感というものが湧き出てきた私は、ぽそりと呟いた。
「獣人が元の姿に戻ったら服着てないのは当たり前だし、…」
「いやでも、私だって見たくない男の裸を見せられた被害者!」
「……でもそれをいったら、裸を見られたほうが、もっと被害者だよね?」
そんなことを悶々と考えているうちに、鳥へと"戻ってしまった"ケンを、なにも窓から放り投げる野蛮のような行為まで行う必要はなかったのではと思い始める。
「……謝らなきゃ……」
凄く傷付けてしまったかもしれないと感じ始め、謝罪をしようと口にはするが、なんだか立ち上がる気力、いや勇気が湧いてこなかった。
■
窓から放り投げられた、いや、"恥ずかしがる"ココによって部屋から追い出されたと思っているケンは、鳥の姿のままココの部屋を見上げた。
ココと出会ったのは、まだケンが人間の姿に完全になりきれない本当に小さな子供の頃だった。
子供は羞恥心等関係なく、自由気ままに空を駆け巡ることが好きなもので、そんな子供の姿は大人の獣人では当たり前で、「まだ子供だからなぁ」と温かい眼差しで見つめられた。
ケンも他の子と同様に、小さな翼を広げて自由を謳歌していた。
そんな時通り雨がケンを襲った。
急な、それに激しい雨によりバランスを崩したケンは、木々へとぶつかり怪我をした。
地面へと落下し、体全身を強打したケンを救ってくれたのが、ココだった。
ココの自作のものだったかケンにはいまだに不明だが、少なくとも地面に倒れていたケンを、温かく小さな両手で優しく拾い上げ、不器用でも優しさを感じる手付きで薬を塗ってくれたココの姿を、ケンは今でも鮮明に思い出せる。
まるで自分も怪我を負ったかのようにボロボロと涙を流すココの姿。
賢明にケンを励ます言葉をかけ続けたココの姿。
ケンはそんなココに胸が熱くなった。
だからこそ、「早く治るといいね」と言葉をかけたココの期待に答えるべく、まだ痛む翼を広げて空を飛んだ。
泣いた顔よりも、悲しそうに励ます顔よりも、格別な程素敵な笑顔にケンは目を奪われた。
それからケンはココにお礼を告げに翼を広げた。
ココの元に辿り着くと、ココもケンを覚えていたようで「あのときの鳥さん!」と受け入れてくれた。
ケンはふと思い出す。
ココに手当をしてもらったケンは、帰宅後両親から叱られながらも腕利きの医者を呼んで貰い、治療を受けた。
ココの治療を消すような行為だったが、ココに早く会いに行くためには怪我を早く治さなければならなかったのだ。
そして呼ばれた医者は近々結婚を控えているようで、両親は治療を施す医者に「式はいつですか?」と話しかけていた。
どうも元は医者と患者の関係だったが、熱心に向き合った先生に患者が恋をしたらしい。
先生にとっては治療を施すことは当たり前のことであり、患者からの誘いも全て断っていたのだが、いつしか患者からの気持ちを受け入れるようになったのだと話していた。
この時ケンは学習した。
付き合うためにはアピールは必要なのだと。
ケンはココに恋を自覚したが、きっとココはケンに恋心を抱いていないと、ケンは理解していた。
正直この頃のケンはまだ変態ではなかったのだ。
そして、ちょうどケンを手当している先生は、ケンにとってはココの立場と一致している。
ケンは先生に詰め寄った。
そしてココにお礼を告げに会いに向かったケンは、この日からココの元へ通うようになった。
(先生はたくさんアピールされたといっていた)
まずは顔見知りから知り合いに昇格し、そして友達。
最終的には恋人にと目標を持つケンは、会いに行くたびにケンの小さなクチバシでも咥えられる小さな花を手土産にした。
案の定ココは喜んでくれた。
何度も何度も会いに行くにつれ、関係も親密になり、ケンはココの友達へと昇格したのだと思った。
勿論それはケンの勘違いではない。
小さなココにとっては、可愛らしい鳥が毎日のように会いに来てくれるなんて、種別を超えた友達のようだと思っていたからである。
そんなとき、ケンは獣人たちの間のプロポーズ方法を耳にした。
自分が捕まえた自分の好物を渡す。というものである。
ケンはこれだと思った。
だが毎日のように家を長時間開けるようになった息子に、ついに「また酷い怪我したらどうするの!?」と両親の雷が落ち、完璧に人間の姿になれない限りは許さないと、ケン一人での外出を認められなくなってしまったのだ。
そして月日が経ち、ケンはココにプロポーズをしにいくのだが、それはまた別の機会にお話しよう。
ケン視点終わり
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