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ホースは一日をほとんどベッドの中で過ごしていた。
体は自分で動かせるらしかったので、多くの人は付けずに、使用人を一人だけ常駐させていた。
しかし、強い倦怠感のせいで運動はおろか、食堂に行く元気もなかった。

ホースの婚約者となった私は、この七日間だけは彼にずっとついていようとした。
だが、彼は優しく拒んだ。

「ここにいても何もすることがないだろうから、アナは気分転換に出かけたりしてもいいんだよ。そういえば大通りの店で食べたいものがあるんだけど、買ってきてもらっていいかな?」

ホースはもっともらしい理由をつけては、私を自分から離した。
それが彼の優しさであることは十分に分かっていたので、私は素直にそれに従った。
七日しかない命、せめて彼らしく過ごしてほしい。
そう思ったからだった。

……四日目。
ホースの容体が急変した。
突然吐血し、全身が痙攣をおこした。

その時、私はホースのいいつけで書斎にいた。
彼が頼んだ本を鼻歌混じりに探していると、使用人が血相を変えて扉を開けた。

「アナ様!大変です!ホース様が!ホース様が……」

急いで彼の部屋へ行くと、医師や看護師が既に駆けつけていて、ベッドを囲んでいた。
シーツについた血が人の隙間から見えて、私はその場に崩れ落ちた。
どうして傍についてあげられなかったのだろう。
もしこれでホースが死んでしまったら……私は泣きながら唇を噛みしめた。

しかし、医師が安堵したような息をはき、私に言う。

「アナさん。注射も打ちましたしもう大丈夫です。ホースさんは死んでいません」

「ほ、本当に?」

私は茫然としながら立ち上がった。
そのままホースの傍にいくと、彼は目を閉じていた。

「今は眠っています。半日もすれば起きると思われます。では私たちはこれで……」

医師たちが去ると、足の力が一気に抜けてしまった。
心臓がドクドクと音を立てていて、疲れが押し寄せてくる。
しかし、私は歯を食いしばって、自分に言い聞かせる。

「ホースはもっと苦しいんだ……私なんかがへばっていいわけがない……」

私は決意を込めて立ち上がった。
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