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殴られる!
ギュッと目を瞑るが、いつまで経っても痛みは感じなかった。
恐る恐る目を開けてみると、隣から突き出た手の平が、ハモンドの拳を止めていた。
その手の持ち主に目を移すと、ロードがそこにいた。
「なんだお前は?」
ハモンドは突き出した拳を戻すと、ロードを睨みつけた。
彼は私に「大丈夫かい?」と心配そうな目を向ける。
ハモンドのことなど眼中にないようで、無視をするらしい。
「おい……無視してんじゃねえ……お前は誰だって聞いているんだ!」
それに怒ったハモンドが再び拳を突き出す。
しかしロードは軽々とそれを止めると、ハモンドの拳をぎゅっと握りしめた。
「うわぁぁぁ!!!! は、放せ……!」
ハモンドの顔が苦悶に歪むが、ロードは手を放す気配はない。
人一倍愛情に強い彼だからこその判断だが、このままでは罪に問われてしまう気がしたので、私はロードに言った。
「ロード、もう大丈夫だから。放してあげて」
「……エルがそういうなら」
渋々といった様子でロードが手を放すと、ハモンドは警戒するように数歩後退した。
そして怒りに染まった顔で私たちに叫ぶ。
「何なんだこいつは! 侯爵令息である僕にそんなことして……タダで済むと思っているのか!?」
ロードが私に発現の許可を求めるように目配せする。
私はコクリと頷いた。
「突然の無礼、申し訳ありません。僕は伯爵令息のロードと申します」
彼の言葉に会場中がざわついた。
もちろんハモンドも例にもれず、驚きに目を見開いている。
端正な顔立ちと、青いサラサラの髪が特徴的な伯爵令息ロード。
彼の名前をこの国で知らないものは誰一人としていないだろう。
最も危険な魔物と称されるドラゴンを二十歳にして倒し、国の栄誉騎士に選ばれるが、授賞式の会場が遠いからという理由でそれを辞退したロード。
いい意味でも悪い意味でも彼は有名だった。
「ロードだと……くそっ……」
ハモンドは目の前の男がドラゴンよりも強いと知って、敵わないと思ったのか、奥歯を噛みしめた。
黙ったままの彼にロードは言葉を続ける。
「あなたが侯爵令息だということは承知しておりますが、エルを……僕の愛する人を傷つけるのは許せない。その代償払っていただきましょう」
「は?」
ハモンドは困惑したように眉間にしわを寄せる。
「愛する人……? どういうことだ? そ、そいつは昨日まで僕の妻だったんだぞ……ま、まさかお前……浮気をしていたな!!!」
自尊心を傷つけられたからか嫉妬なのかは分からないが、ハモンドは声を荒げた。
しかし私は冷静に言葉を返す。
「浮気ではありません。先日あなたとは離婚致しましたので、今日そこでロードと恋人になったのです。前々からロードと繋がりがあったことは認めますが、話をしただけで、男女の仲にはなっておりません」
「そ、そんな嘘が信じられるわけないだろ!!!」
怒り狂ったハモンドを見て、ロードはため息をつく。
そして私にこそっと耳打ちをする。
「この人、斬ってしまってよろしいですか?」
「やめなさい。気持ちは分かるけど、なるべく丁寧に拘束して」
「御意」
ロードは頷くと、おもむろにハモンドに近づいていった。
「何だお前、こ、この僕を殴ろうっていうのか!? そんなことしたら、し、死刑だからな!」
「はぁ……僕は国王から自分の裁量で悪人を裁く権利を頂いています。エルを殴ろうとして冤罪まで被せたあなたは正真正銘の悪人でしょう。じっとしていてくださいね、下手したら首がなくなりますよ」
「え……」
ロードは光のような速さでハモンドの後ろに回ると、うなじをトンと叩いた。
ハモンドは一瞬で気絶してしまい、その場にバタンと崩れ落ちた。
ギュッと目を瞑るが、いつまで経っても痛みは感じなかった。
恐る恐る目を開けてみると、隣から突き出た手の平が、ハモンドの拳を止めていた。
その手の持ち主に目を移すと、ロードがそこにいた。
「なんだお前は?」
ハモンドは突き出した拳を戻すと、ロードを睨みつけた。
彼は私に「大丈夫かい?」と心配そうな目を向ける。
ハモンドのことなど眼中にないようで、無視をするらしい。
「おい……無視してんじゃねえ……お前は誰だって聞いているんだ!」
それに怒ったハモンドが再び拳を突き出す。
しかしロードは軽々とそれを止めると、ハモンドの拳をぎゅっと握りしめた。
「うわぁぁぁ!!!! は、放せ……!」
ハモンドの顔が苦悶に歪むが、ロードは手を放す気配はない。
人一倍愛情に強い彼だからこその判断だが、このままでは罪に問われてしまう気がしたので、私はロードに言った。
「ロード、もう大丈夫だから。放してあげて」
「……エルがそういうなら」
渋々といった様子でロードが手を放すと、ハモンドは警戒するように数歩後退した。
そして怒りに染まった顔で私たちに叫ぶ。
「何なんだこいつは! 侯爵令息である僕にそんなことして……タダで済むと思っているのか!?」
ロードが私に発現の許可を求めるように目配せする。
私はコクリと頷いた。
「突然の無礼、申し訳ありません。僕は伯爵令息のロードと申します」
彼の言葉に会場中がざわついた。
もちろんハモンドも例にもれず、驚きに目を見開いている。
端正な顔立ちと、青いサラサラの髪が特徴的な伯爵令息ロード。
彼の名前をこの国で知らないものは誰一人としていないだろう。
最も危険な魔物と称されるドラゴンを二十歳にして倒し、国の栄誉騎士に選ばれるが、授賞式の会場が遠いからという理由でそれを辞退したロード。
いい意味でも悪い意味でも彼は有名だった。
「ロードだと……くそっ……」
ハモンドは目の前の男がドラゴンよりも強いと知って、敵わないと思ったのか、奥歯を噛みしめた。
黙ったままの彼にロードは言葉を続ける。
「あなたが侯爵令息だということは承知しておりますが、エルを……僕の愛する人を傷つけるのは許せない。その代償払っていただきましょう」
「は?」
ハモンドは困惑したように眉間にしわを寄せる。
「愛する人……? どういうことだ? そ、そいつは昨日まで僕の妻だったんだぞ……ま、まさかお前……浮気をしていたな!!!」
自尊心を傷つけられたからか嫉妬なのかは分からないが、ハモンドは声を荒げた。
しかし私は冷静に言葉を返す。
「浮気ではありません。先日あなたとは離婚致しましたので、今日そこでロードと恋人になったのです。前々からロードと繋がりがあったことは認めますが、話をしただけで、男女の仲にはなっておりません」
「そ、そんな嘘が信じられるわけないだろ!!!」
怒り狂ったハモンドを見て、ロードはため息をつく。
そして私にこそっと耳打ちをする。
「この人、斬ってしまってよろしいですか?」
「やめなさい。気持ちは分かるけど、なるべく丁寧に拘束して」
「御意」
ロードは頷くと、おもむろにハモンドに近づいていった。
「何だお前、こ、この僕を殴ろうっていうのか!? そんなことしたら、し、死刑だからな!」
「はぁ……僕は国王から自分の裁量で悪人を裁く権利を頂いています。エルを殴ろうとして冤罪まで被せたあなたは正真正銘の悪人でしょう。じっとしていてくださいね、下手したら首がなくなりますよ」
「え……」
ロードは光のような速さでハモンドの後ろに回ると、うなじをトンと叩いた。
ハモンドは一瞬で気絶してしまい、その場にバタンと崩れ落ちた。
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