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人間なんて簡単に裏切るのよ。
妹のカナリアはそう言いたげな目で私を見ていた。
しかし、顔だけは申し訳なさそうに歪めていた。
「お姉ちゃん。ごめんねぇ……」
私は後悔した。
この屋敷に来ることもなければ、こんな悲しい思いしなくてよかったのに。
夫と妹が不倫をしている場面なんて見なくてもよかったのに。
マイクは事情を説明するようにまくしたてる。
「これは違うんだ! ご、誤解なんだ! 僕とカナリアは何もないんだ! 信じてくれエミリア!」
「……は?」
裸の男女がベッドの上にいて、何もなかったと本気でいうつもりだろうか。
しかも二人の声は聞こえていて、体の関係があったのは明白だというのに。
「マイク。くだらない嘘をつくのは止めて。カナリアもさっき私に謝っていたのを見たでしょ……あなたたちは男女の仲になっている……そうよね?」
私が怒気を込めてそう言うと、マイクは顔面蒼白になる。
しかし妹のカナリアの方は、余裕あり気な笑みを浮かべると、口を開いた。
「お姉ちゃんには本当に申し訳ないと思ってるよ。でも、仕方ないんだもん。マイクだってお姉ちゃんよりも私の方が良いっていうし、彼お仕事で毎日疲れているんだよ? お姉ちゃんの貧弱な体じゃ十分な癒しを与えることは不可能でしょ?」
そう言って、カナリアは私の胸に視線を向ける。
私も彼女の豊満な胸を睨みつけて、口を開く。
「そんな道理が通じるわけないでしょ。私とマイクは結婚していた、夫婦だった。どんな理由があろうとそこに横やりを入れることなんて許さない。マイク……あなたもよ!」
その勢いでマイクを睨みつけるが、彼は先ほどのカナリアの言葉で勇気づけられたのか、決心したような目を私に向けていた。
「き、君が悪いんだ……僕に非はない。エミリア、君が僕に見合うだけの魅力的な女性じゃなかったから、僕はカナリアと関係を持ったんだ。全部君のせいだ!!!」
「……はぁ!?」
マイクは逆上すると私を指差した。
「昔からつまらない女だと思っていたんだ! 夫を満足させられない妻なんて、妻失格だ! いや、女失格だ! お前とは離婚させてもらうが、慰謝料なんて払わない! 全部お前が悪いんだからな!」
とんでもない暴論に言葉を失っていると、カナリアがクスクスと笑い声をあげる。
「お姉ちゃん。いいかげん諦めたら? もうマイクはあなたのことなんて好きじゃないの。私の方が百倍もいいんだって」
カナリアはそう言うと、マイクにキスをした。
マイクも嬉しそうにキスを返す。
目の前で不倫現場を見せつけられ、怒りが頭に昇ってくる。
しかし私は唇を噛み、何とかそれを押さえつけた。
「……そうね」
目頭が熱くなり、私はその場から逃げ出した。
二人の笑い声が背中に届くが、構わず歩き続けた。
玄関まで行くと、屋敷に入れてくれた使用人がいた。
「あの奥様……これを……」
彼女は小さな袋を私に差し出した。
涙を乱雑に拭いてそれを受け取ると、彼女は私の耳に口を近づけた。
「ここにはお二人が愛の証として作られた指輪が入っています。何かのお力になれば……」
「あなた……どうして?」
使用人は私の耳からそっと口を離すと、泣きそうな声で言う。
「私もマイク様を愛しているのです。その愛は一瞬しか叶いませんでしたが……本当に申し訳ありませんでした」
そして深く頭を下げた。
私は彼女から貰った袋をぎゅっと握ると、それ以上何も言わずに、屋敷を去った。
妹のカナリアはそう言いたげな目で私を見ていた。
しかし、顔だけは申し訳なさそうに歪めていた。
「お姉ちゃん。ごめんねぇ……」
私は後悔した。
この屋敷に来ることもなければ、こんな悲しい思いしなくてよかったのに。
夫と妹が不倫をしている場面なんて見なくてもよかったのに。
マイクは事情を説明するようにまくしたてる。
「これは違うんだ! ご、誤解なんだ! 僕とカナリアは何もないんだ! 信じてくれエミリア!」
「……は?」
裸の男女がベッドの上にいて、何もなかったと本気でいうつもりだろうか。
しかも二人の声は聞こえていて、体の関係があったのは明白だというのに。
「マイク。くだらない嘘をつくのは止めて。カナリアもさっき私に謝っていたのを見たでしょ……あなたたちは男女の仲になっている……そうよね?」
私が怒気を込めてそう言うと、マイクは顔面蒼白になる。
しかし妹のカナリアの方は、余裕あり気な笑みを浮かべると、口を開いた。
「お姉ちゃんには本当に申し訳ないと思ってるよ。でも、仕方ないんだもん。マイクだってお姉ちゃんよりも私の方が良いっていうし、彼お仕事で毎日疲れているんだよ? お姉ちゃんの貧弱な体じゃ十分な癒しを与えることは不可能でしょ?」
そう言って、カナリアは私の胸に視線を向ける。
私も彼女の豊満な胸を睨みつけて、口を開く。
「そんな道理が通じるわけないでしょ。私とマイクは結婚していた、夫婦だった。どんな理由があろうとそこに横やりを入れることなんて許さない。マイク……あなたもよ!」
その勢いでマイクを睨みつけるが、彼は先ほどのカナリアの言葉で勇気づけられたのか、決心したような目を私に向けていた。
「き、君が悪いんだ……僕に非はない。エミリア、君が僕に見合うだけの魅力的な女性じゃなかったから、僕はカナリアと関係を持ったんだ。全部君のせいだ!!!」
「……はぁ!?」
マイクは逆上すると私を指差した。
「昔からつまらない女だと思っていたんだ! 夫を満足させられない妻なんて、妻失格だ! いや、女失格だ! お前とは離婚させてもらうが、慰謝料なんて払わない! 全部お前が悪いんだからな!」
とんでもない暴論に言葉を失っていると、カナリアがクスクスと笑い声をあげる。
「お姉ちゃん。いいかげん諦めたら? もうマイクはあなたのことなんて好きじゃないの。私の方が百倍もいいんだって」
カナリアはそう言うと、マイクにキスをした。
マイクも嬉しそうにキスを返す。
目の前で不倫現場を見せつけられ、怒りが頭に昇ってくる。
しかし私は唇を噛み、何とかそれを押さえつけた。
「……そうね」
目頭が熱くなり、私はその場から逃げ出した。
二人の笑い声が背中に届くが、構わず歩き続けた。
玄関まで行くと、屋敷に入れてくれた使用人がいた。
「あの奥様……これを……」
彼女は小さな袋を私に差し出した。
涙を乱雑に拭いてそれを受け取ると、彼女は私の耳に口を近づけた。
「ここにはお二人が愛の証として作られた指輪が入っています。何かのお力になれば……」
「あなた……どうして?」
使用人は私の耳からそっと口を離すと、泣きそうな声で言う。
「私もマイク様を愛しているのです。その愛は一瞬しか叶いませんでしたが……本当に申し訳ありませんでした」
そして深く頭を下げた。
私は彼女から貰った袋をぎゅっと握ると、それ以上何も言わずに、屋敷を去った。
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