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私が国王の書斎に入ると、レオニダス王子とスザンヌもいた。
ちょうど二人について国王に話す所だったのでちょうどよかった。
「レオニダス王子とスザンヌもお揃いなのですね。ちょうど良かったです」
私が淡々とそう言うと、王子は不機嫌そうに顔を歪めた。
「オリビア……何をしに来たんだい? 僕がスザンヌと結ばれるのが気に食わないのは分かるが、国王に直訴した所で、僕達の真実の愛は……」
「直訴などしませんよ」
ぐだぐだと愛の話しが続きそうだったので、私はバッサリと彼の言葉を切る。
しかし今度はスザンヌが口を開く。
「ですって王子ぃ……良かったですね。オリビアさんはぁ、私たちの愛を認めてくれているんですよぉ!」
相変わらずの甘ったるい声に気絶しそうになるが、私は何とか持ちこたえ、口を開く。
「まあ、ある意味ではお二人の仲は認めています。ある意味ですけど」
私は二人の隣に立つと、国王に目を向けた。
私をレオニダス王子の妃に選んでくれた人に。
「国王様。お時間を作って頂きありがとうございます。レオニダス王子とスザンヌのことについて早急に話すべきことがございます」
国王は表情を一切変えることなく頷く。
「どうやらそのようだな。お前のような力を持っていなくとも、何となくは分かる。遠慮なく話せ」
「ありがとうございます。では……」
「おいおいちょっと待ってくれ!」
言葉を続けようとするも、王子の困惑するような声に邪魔される。
「オリビア……力ってどういうことだい? お前は魔法使いか何かなのかい?」
「ああ……お二人にはご説明していませんでしたね。ではそこからお話しますね」
私は小さく息を吸うと、昔を懐かしみながら語り始めた。
……私がその力を受け継いだと知ったのは六歳の時だった。
なぜか毎年家に来ていた、年老いた魔法使いから告げられたのだ。
『オリビア。お前さんは祖母の力を受け継いでおるよ。超直感という力をな』
『ちょうちょっかん?』
魔法使いが言うには、その力は元々私の祖母が発現した力で、世代を超えて私が受け継いだのだという。
その名の通り神のような直観力を得る力で、人を一瞬見ただけで、その人が起こす未来の光景が見えるのだとか。
しかし私は即座に魔法使いの言葉を否定した。
確かに私には人を見ただけで、嫌なイメージや幸せなイメージが頭に浮かぶことがあるが、はっきりとした未来など見えなかったのだ。
すると魔法使いは笑った。
『贅沢を言うお嬢さんだのう。普通の人間はそのイメージさえも見えないのじゃよ。お主の力は未熟じゃが、信ずるに値するものじゃ。これからはそのイメージを大切に生きろ』
魔法使いの言っていることは、幼い私にはよく分からなかったが、彼からは幸せなイメージがしたので、不安に思うことはなかった。
その後、魔法使いによって、私が超直感を持っていることは家族と国王にだけ告げられた。
多くの人間に知られては、私が異端児としていじめを受けたり、悪い大人に利用されたりすると考えたらしかった。
私も父からこの力のことは誰にも言ってはいけないと、口酸っぱく言われたので、友達にも話さないことにした。
私が過去の記憶を話し終えると、王子が即座に言葉を放つ。
「そんな……ぼ、僕は聞いてないぞ! そんなこと!」
「ええ、だって他言無用ですから。当たり前です」
「で、でも……お前は僕の妃に選ばれたんだぞ! そんな秘密を抱えて結婚なんてできるわけが……」
と、そこで国王が口を開いた。
「私が黙っていろと言ったのだ」
王子が驚いた様子で父の顔を見る。
「レオニダスが本当に次期国王として相応しい男かどうか……その力で見極めてほしいと言ったのだ。無論、この王宮に来る少し前にな」
「嘘だろ……」
王子も、ようやく自分が置かれている立場を理解したらしい。
今の彼からは、暗くて寒い雪道しかイメージが湧いてこない。
国王は私に目を向けると「それでどうであった?」と訊いた。
私は淡々と言葉を並べる。
「レオニダス王子には、男としての資格も、国王としての資格もないと思います」
ちょうど二人について国王に話す所だったのでちょうどよかった。
「レオニダス王子とスザンヌもお揃いなのですね。ちょうど良かったです」
私が淡々とそう言うと、王子は不機嫌そうに顔を歪めた。
「オリビア……何をしに来たんだい? 僕がスザンヌと結ばれるのが気に食わないのは分かるが、国王に直訴した所で、僕達の真実の愛は……」
「直訴などしませんよ」
ぐだぐだと愛の話しが続きそうだったので、私はバッサリと彼の言葉を切る。
しかし今度はスザンヌが口を開く。
「ですって王子ぃ……良かったですね。オリビアさんはぁ、私たちの愛を認めてくれているんですよぉ!」
相変わらずの甘ったるい声に気絶しそうになるが、私は何とか持ちこたえ、口を開く。
「まあ、ある意味ではお二人の仲は認めています。ある意味ですけど」
私は二人の隣に立つと、国王に目を向けた。
私をレオニダス王子の妃に選んでくれた人に。
「国王様。お時間を作って頂きありがとうございます。レオニダス王子とスザンヌのことについて早急に話すべきことがございます」
国王は表情を一切変えることなく頷く。
「どうやらそのようだな。お前のような力を持っていなくとも、何となくは分かる。遠慮なく話せ」
「ありがとうございます。では……」
「おいおいちょっと待ってくれ!」
言葉を続けようとするも、王子の困惑するような声に邪魔される。
「オリビア……力ってどういうことだい? お前は魔法使いか何かなのかい?」
「ああ……お二人にはご説明していませんでしたね。ではそこからお話しますね」
私は小さく息を吸うと、昔を懐かしみながら語り始めた。
……私がその力を受け継いだと知ったのは六歳の時だった。
なぜか毎年家に来ていた、年老いた魔法使いから告げられたのだ。
『オリビア。お前さんは祖母の力を受け継いでおるよ。超直感という力をな』
『ちょうちょっかん?』
魔法使いが言うには、その力は元々私の祖母が発現した力で、世代を超えて私が受け継いだのだという。
その名の通り神のような直観力を得る力で、人を一瞬見ただけで、その人が起こす未来の光景が見えるのだとか。
しかし私は即座に魔法使いの言葉を否定した。
確かに私には人を見ただけで、嫌なイメージや幸せなイメージが頭に浮かぶことがあるが、はっきりとした未来など見えなかったのだ。
すると魔法使いは笑った。
『贅沢を言うお嬢さんだのう。普通の人間はそのイメージさえも見えないのじゃよ。お主の力は未熟じゃが、信ずるに値するものじゃ。これからはそのイメージを大切に生きろ』
魔法使いの言っていることは、幼い私にはよく分からなかったが、彼からは幸せなイメージがしたので、不安に思うことはなかった。
その後、魔法使いによって、私が超直感を持っていることは家族と国王にだけ告げられた。
多くの人間に知られては、私が異端児としていじめを受けたり、悪い大人に利用されたりすると考えたらしかった。
私も父からこの力のことは誰にも言ってはいけないと、口酸っぱく言われたので、友達にも話さないことにした。
私が過去の記憶を話し終えると、王子が即座に言葉を放つ。
「そんな……ぼ、僕は聞いてないぞ! そんなこと!」
「ええ、だって他言無用ですから。当たり前です」
「で、でも……お前は僕の妃に選ばれたんだぞ! そんな秘密を抱えて結婚なんてできるわけが……」
と、そこで国王が口を開いた。
「私が黙っていろと言ったのだ」
王子が驚いた様子で父の顔を見る。
「レオニダスが本当に次期国王として相応しい男かどうか……その力で見極めてほしいと言ったのだ。無論、この王宮に来る少し前にな」
「嘘だろ……」
王子も、ようやく自分が置かれている立場を理解したらしい。
今の彼からは、暗くて寒い雪道しかイメージが湧いてこない。
国王は私に目を向けると「それでどうであった?」と訊いた。
私は淡々と言葉を並べる。
「レオニダス王子には、男としての資格も、国王としての資格もないと思います」
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