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「オリビア!」

 即座にレオニダス王子の鋭い声が飛んできた。
 彼は顔面蒼白で、まるで命乞いでもするかのように私に言った。

「オリビア……よく、よく……考えるんだ。君の力が間違っているということはないのか? ぼ、僕をよく見てくれ……思い込みに囚われることなく……ほら……さあ!」

「分かりました」

 私は頷くと、王子をよく見てみる。
 しかし、やはり暗いイメージしか浮かばす、この人の未来に明るいものがあるとは到底思えなかった。

「ごめんなさいレオニダス王子。あなたからは明るいイメージが微塵も感じられません。やはり男と王の資格はないものかと思います。まぁ、力を使わなくても分かりそうなものですが」

 ついつい言葉が多くなってしまい、すぐに反省する。
 しかし国王がははっと高らかに笑ってくれたので、そんなに落ち込まずに済んだ。

「レオニダス。国王の資格が無いと言われ焦っておるのは分かるが、それでは逆効果だぞ。現実を受け止めろ。お前には足らないものが多すぎる」

「そ、そんな……」

 王子はどうしても次期国王という座が欲しかったらしい。
 私と国王の言葉に相当ショックを受けたようで、その場に崩れ落ちた。

「国王になれないなんて……そんな……今までじゃあ僕は何を頑張ってきたんだ……」

 悲しいのは分かるが、同情はしない。
 なぜなら国王になる道を閉ざしたのは、紛れもないレオニダス王子自身なのだから。
 もしスザンヌとの一件が無ければ、私は国王にレオニダス王子には王の素質があると言っていたかもしれない。
 しかし妃を裏切り他に女を作るなど、王子以前に人として最低な行為だ。
 そんな人が国を背負って立てるわけがないのだ。

「国王様。扉の外に兵士を何人か控えさせております。一旦レオニダス王子だけ、部屋の外に移動させたいのですが……よろしいでしょうか?」

 絶望した顔の王子はきっと言っても反応しないので、私は国王に言った。
 彼は強く頷き、同意を示してくれる。
 私はそれを見て小さく頷くと、手を胸の高さに上げて一回パンと叩いた。
 扉が開き兵士が今か今かと待ち構えていた。

「四人程……レオニダス王子を別室に連れていってください」

 私の声に素早く兵士が動き、欲しいおもちゃがもらえなかった子供のようにふてくされる王子を連れて、書斎を出て行った。
 扉が閉まると、国王が私に言う。

「スザンヌだけ残したのは、何か意図があるのだろう?」

「ええ、もちろんです」

 私がスザンヌへ顔を向けると、彼女はニコッと私に微笑みかける。
 しかしその笑顔はどこか引きつっていて、余裕が無い事が一目で分かった。

「スザンヌ。次はあなたの番だけど……自分から言いたいことは何かあるかしら?」

 念のためそう確認してみると、彼女は少し考えるような仕草をした後、苦笑しながら言った。

「特にありませんよぉ……私は別に悪いことなんて何もしてませんからぁ」

「そう、じゃあ遠慮しなくていいわね」

 私も彼女に合わせて笑顔を作って上げると、単刀直入に言った。

「スザンヌ。あなたはこの国を滅亡させる災厄です。即刻この国から出て行ってくれない?」
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