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五か月が経った。
思っていたよりもあっさりとした五か月だった。
リオンが消えてから、結局彼女の捜索は行われず、カールもやっと自分の無力さに気づいたのか、何も言わなくなった。
「お母様。この中で私が一番美しいですね」
隣に立つエマが私に自慢げに言う。
私は頷くと、「そうね」と笑った。
……結婚式の会場は当初、教会を指定したのだが、ロスト側が自分の家の屋敷の大広間を使いたいと言い出した。
それにかかる費用は全部自分たちで持つといったので、私は即座に了承した。
大広間で結婚式を挙げる理由として、友人たちを呼びたいと彼は言った。
この国では結婚式に参加する際には、結婚する夫婦を祝福する、祝福金を持参するマナーがあった。
祝福金は均等に夫婦二人で分けるとロストは言ったので、教会でやるよりも、大広間でやる方が得策だと私は思った。
大広間の会場には、まるでパーティーのようにたくさんの席が作られた。
豪華絢爛な料理の数々が並び、参加者は話ながら食事を堪能していた。
「それにしてもロスト、遅いですね」
「ええ」
ロストは支度に手間取っているみたいで、少し遅れるらしかった。
私とエマとカールは先に会場に入り、壇上の端に立っていた。
あとはロストが来て、壇上に上がり、エマと誓いのキスをするだけだ。
もう少しで私の望みは全て叶う。
「あ、お母様! 来ましたよ!」
エマが扉を指差して、私もそこに目線を向けた。
扉が開き、ロストが歩いてきて……ん?
「あれ……隣の女性誰でしょうか……」
エマも同じことを思ったらしい。
ロストと共に会場へ入ってきた美しい女性……参列者の目線もロストより彼女に集中しているのが分かる。
二人は淡々とした足取りで壇上まで上がってきた。
「お待たせしました」
ロストは短くそう告げると、意味ありげな笑みを浮かべた。
嫌な予感を覚えながら隣に立つ女性に顔を向けた時、私は愕然とした。
「え……リオンなの……?」
「お久しぶりですね、お母様」
彼女は五か月前に家から消えたリオンだった。
とっくに野垂れ死んだと思っていたのに、生きていたのだ。
しかもロストの隣に立っているなんて……どういうことなの!?
「お、お姉様! どういうつもりですか!?」
たまらずエマが叫び声を上げた。
しかしリオンは全く動じる様子もなく、私たちから顔を逸らす。
そして壇下の参列者たちに言い放つ。
「皆様にお伝えしなければいけないことがあります!!!」
彼女の大声に会場を包んでいたざわめきがピタリと止んだ。
次いでロストも私たちから顔を逸らすと、叫んだ。
「僕の婚約者であるエマと、その母親エルダ様の愚行についてです!!!」
「「はぁ!?」」
私とエマは同時に叫んだ。
ロストは私たちを一瞬見た後、言葉を続けた。
「こちらにいる美しい女性……彼女はエルダ様の娘であるリオンです! 彼女は長年、その存在を虐げられてきました! エルダ様と妹エマによって!」
会場中が驚きに包まれた。
口々に言葉を呟き、痛い視線が私たちに集中してくる。
今度はリオンが口を開く。
「私は長年、醜いと罵られてきました! 食事も別で取ることを強要され、まるで家にいないかのように扱われました! 現に、私は五か月前に何も連絡をしないまま家を出ましたが、未だに捜索願は出されておりません!」
リオンの言葉に、再び会場中が驚きに包まれる。
ついには私たちを罵倒するような言葉まで聞こえてきた。
このままでは場が荒れると考えたのか、ロストが手を上げると、全ての声を黙らせる。
そしてとんでもないことを宣言し始めた。
「僕はリオンをいじめたエマと結婚など出来ません。彼女とは即刻婚約破棄を致します! そして……新たにリオンと婚約します!」
思っていたよりもあっさりとした五か月だった。
リオンが消えてから、結局彼女の捜索は行われず、カールもやっと自分の無力さに気づいたのか、何も言わなくなった。
「お母様。この中で私が一番美しいですね」
隣に立つエマが私に自慢げに言う。
私は頷くと、「そうね」と笑った。
……結婚式の会場は当初、教会を指定したのだが、ロスト側が自分の家の屋敷の大広間を使いたいと言い出した。
それにかかる費用は全部自分たちで持つといったので、私は即座に了承した。
大広間で結婚式を挙げる理由として、友人たちを呼びたいと彼は言った。
この国では結婚式に参加する際には、結婚する夫婦を祝福する、祝福金を持参するマナーがあった。
祝福金は均等に夫婦二人で分けるとロストは言ったので、教会でやるよりも、大広間でやる方が得策だと私は思った。
大広間の会場には、まるでパーティーのようにたくさんの席が作られた。
豪華絢爛な料理の数々が並び、参加者は話ながら食事を堪能していた。
「それにしてもロスト、遅いですね」
「ええ」
ロストは支度に手間取っているみたいで、少し遅れるらしかった。
私とエマとカールは先に会場に入り、壇上の端に立っていた。
あとはロストが来て、壇上に上がり、エマと誓いのキスをするだけだ。
もう少しで私の望みは全て叶う。
「あ、お母様! 来ましたよ!」
エマが扉を指差して、私もそこに目線を向けた。
扉が開き、ロストが歩いてきて……ん?
「あれ……隣の女性誰でしょうか……」
エマも同じことを思ったらしい。
ロストと共に会場へ入ってきた美しい女性……参列者の目線もロストより彼女に集中しているのが分かる。
二人は淡々とした足取りで壇上まで上がってきた。
「お待たせしました」
ロストは短くそう告げると、意味ありげな笑みを浮かべた。
嫌な予感を覚えながら隣に立つ女性に顔を向けた時、私は愕然とした。
「え……リオンなの……?」
「お久しぶりですね、お母様」
彼女は五か月前に家から消えたリオンだった。
とっくに野垂れ死んだと思っていたのに、生きていたのだ。
しかもロストの隣に立っているなんて……どういうことなの!?
「お、お姉様! どういうつもりですか!?」
たまらずエマが叫び声を上げた。
しかしリオンは全く動じる様子もなく、私たちから顔を逸らす。
そして壇下の参列者たちに言い放つ。
「皆様にお伝えしなければいけないことがあります!!!」
彼女の大声に会場を包んでいたざわめきがピタリと止んだ。
次いでロストも私たちから顔を逸らすと、叫んだ。
「僕の婚約者であるエマと、その母親エルダ様の愚行についてです!!!」
「「はぁ!?」」
私とエマは同時に叫んだ。
ロストは私たちを一瞬見た後、言葉を続けた。
「こちらにいる美しい女性……彼女はエルダ様の娘であるリオンです! 彼女は長年、その存在を虐げられてきました! エルダ様と妹エマによって!」
会場中が驚きに包まれた。
口々に言葉を呟き、痛い視線が私たちに集中してくる。
今度はリオンが口を開く。
「私は長年、醜いと罵られてきました! 食事も別で取ることを強要され、まるで家にいないかのように扱われました! 現に、私は五か月前に何も連絡をしないまま家を出ましたが、未だに捜索願は出されておりません!」
リオンの言葉に、再び会場中が驚きに包まれる。
ついには私たちを罵倒するような言葉まで聞こえてきた。
このままでは場が荒れると考えたのか、ロストが手を上げると、全ての声を黙らせる。
そしてとんでもないことを宣言し始めた。
「僕はリオンをいじめたエマと結婚など出来ません。彼女とは即刻婚約破棄を致します! そして……新たにリオンと婚約します!」
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