めーぷる詰め合わせ<SS&短編集>

楓乃めーぷる

文字の大きさ
25 / 35
お題系ポスノベ

恋がはじまる日

しおりを挟む
 ※こちらは続き物の話になります。
 一話分だけでもお読みいただけますが、プロポーズの話が続きになります。

 +++

「好きです! 付き合ってください!」
「いや、だから……」
「一目見た時から好きでした!」
「えぇ……?」

 僕は混乱していた。何故か僕の前には片膝を立ててバラの花束を差し出してくる美形の男がいるのだ。
 見たところ高級そうなスーツを着込んだ彼は、道行く人たちも振り返るくらい人の目を惹きつけている。
 ちなみに僕の記憶が正しければ、全く知らない人物だ。
 一目見たという情報だけで、彼がどこで僕のことを知ったのかも説明されていない。
 ただ、街中で突然告白されている状況についていけない。

「どなたか知りませんが……とりあえず移動しませんか?」
「それはOKということですか?」
「それとこれとは話は別です」

 僕は辟易しながら、彼を無理やり立たせて人気のないところへ移動した。

 +++

 適当なカフェへ入って、落ち着くためにコーヒーを頼む。
 花が可愛そうなので花束は受け取ることにしたけれど、花瓶は家にあっただろうか?
 僕はしがない会社員で、普段は社畜のように働いている中間管理職だ。
 確かに僕は恋愛対象に男性も含められるけれども、この展開は困る。

「常識をどこに置いてきたか知りませんが、こういうのは困ります」
「でも、一刻も早く伝えなくてはと思いまして。おかしいな……こういうのが良いと本で読んだのですが」
「どの本を読まれたのかは知りませんが、もっと別のやり方があると思いますよ」
「そう、でしょうか? でも、貴方を誰にも取られたくなくて……」

 よく見れば瞳も黒ではなく濃いめの青に見える。どこかの外国の人なのだろうか?
 会った覚えが本当にない。というか、これだけ整った顔ならば一度見たら分かりそうなものだけれど……。
 僕が彼の顔を見ていると、彼のスマホが震え出したことに気付く。

「ああ……呼び出されてしまいました。でも、大丈夫。またきっと会えますから」
「え、それってどういう……」

 僕が唖然としている間に、彼は笑顔で手を振って行ってしまった。
 一体何だったのだろう……どっと疲れてしまった。

 +++

 それから数日後、彼の言っていたことがようやく理解できた。
 最近ウチの会社は外国資本の会社と資本提携をしたという話が出ていたのだが、彼は提携先のCEOだったのだ。
 いや、だからといって全くもって納得はできないのだけれど。

「だとしても、なんで僕に声をかけてきたんだ?」
「聞きたいですか?」
「へ……? うわぁ!」

 気付くと噂の人物が背後に立っていて、ニコニコしながら僕を覗き込んできた。
 驚いて数歩離れてから、お疲れ様ですとお辞儀する。

「どうしてここに?」
「うーん……たまたま?」
「いや、ここは従業員用の休憩室の一つで貴方が来るような場所でもないような……もしかして視察ですか?」
「まあ、そんな感じです。この会社で働いている方たちの様子を見るのも仕事ですから」

 それについては理解できるが、この人距離感がバグってないか?
 女性社員たちがキャーキャー言っているのが目に入らないのだろうか。
 僕のような三十代半ばの男に話かけるのではなく、もっと若い女性の元へ行くべきだと思う。
 それに、数歩離れたところにいる怖そうな男の人からの視線がものすごく痛い。

「そうだ。この後、空いてますか?」
「は?」
「ちょっとご相談があるのです。後で僕の部屋まで来てください」
「え? いや、待ってくださ……えぇ……?」

 相変わらず一方的に話を進めて、ご機嫌な様子で去っていく。
 ついていけずにぽかんとしていると、同じ部署の女性社員に囲まれてしまった。

「課長、あのCEOとお知り合いなんですか? すごーい! 今度飲み会のセッティングお願いします」
「いや、僕も正直よく分からなくて……はあ。言っておくけど連絡先だって知らないお偉いさんだからな」
「ええー? でも、課長と話しているとき楽しそうにしてましたよ。課長、楽しみにしてますから!」

 とんでもないことに巻き込まれているのは気のせいだろうか?
 そして、これが彼との付き合いのはじまりだったなんて。
 恋は突然にはじまるとは言うけれど、この時の僕は面倒ごとに巻き込まれたとしか思っていなかった。

 <続きます!>
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

あの部屋でまだ待ってる

名雪
BL
アパートの一室。 どんなに遅くなっても、帰りを待つ習慣だけが残っている。 始まりは、ほんの気まぐれ。 終わる理由もないまま、十年が過ぎた。 与え続けることも、受け取るだけでいることも、いつしか当たり前になっていく。 ――あの部屋で、まだ待ってる。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

この胸の高鳴りは・・・

暁エネル
BL
電車に乗りいつも通り大学へと向かう途中 気になる人と出会う男性なのか女性なのかわからないまま 電車を降りその人をなぜか追いかけてしまった 初めての出来事に驚き その人に声をかけ自分のした事に 優しく笑うその人に今まで経験した事のない感情が・・・

シスルの花束を

碧月 晶
BL
年下俺様モデル×年上訳あり青年 ~人物紹介~ ○氷室 三門(ひむろ みかど) ・攻め(主人公) ・23歳、身長178cm ・モデル ・俺様な性格、短気 ・訳あって、雨月の所に転がり込んだ ○寒河江 雨月(さがえ うげつ) ・受け ・26歳、身長170cm ・常に無表情で、人形のように顔が整っている ・童顔 ※作中に英会話が出てきますが、翻訳アプリで訳したため正しいとは限りません。 ※濡れ場があるシーンはタイトルに*マークが付きます。 ※基本、三門視点で進みます。 ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

僕たち、結婚することになりました

リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった! 後輩はモテモテな25歳。 俺は37歳。 笑えるBL。ラブコメディ💛 fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。

処理中です...