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お題系ポスノベ
雨の日
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※こちらは設定縛りのお話をお題用に書き直ししたものです。
怖い表現を少しマイルドにしていますが、苦手な方はご注意ください。
最後にその後のお話を少し追加しています。
+++
僕は黒のレインコートを着込み、降り続いている雨の中を早足で歩いていた。
夕方の帰宅時間のせいか、すれ違う人たちもどこか急いでいるように見える。
僕にはどうしても確かめたいことがあった。
想い人である、彼の元へ急ぐ。
あと数分で、彼の通っている予備校の授業が終わる時間だ。
はやる気持ちを抑えて、目的地へ向かう。
僕の横を通りすぎようとする女子高生の明るい声は、耳障りでかしましい。
彼女たちはお喋りしながら、楽しそうに歩いてくる。
「また刺されたって。最近この事件ばっかりー」
「やだぁー! しかも男の子だけって怖くない?」
「私たちは女だから大丈夫じゃない? ねえ、私欲しいものがあるんだけど」
携帯でニュースでも見ているのか、話している内容は物騒だ。
きゃっきゃと騒ぎながら、彼女たちは僕の隣を通り過ぎていく。
足を止めずに歩いていくと、ようやく目的地である予備校のビルが見えてきた。
遠目に彼がビルから出てきたのが見える。
彼の元へ駆け寄ろうと足を踏み出した瞬間、見たくなかった光景が目に飛び込んできた。
信じたくなかったけれど、僕の悪い予感は当たってしまった。
建物から出てきた彼は、彼と同じ予備校に通っている男と一緒だった。
心の奥がもやもやする。
僕は少し離れたところから、彼らの後を追うことに決めた。
二人は仲良く相合傘までして、途中まで一緒に帰るつもりなのだろう。
というのも、彼の家はこの先の公園の中を通り抜けるのが近道で行先が違うヤツとは、公園の前で別れるはずだからだ。
すぐにでも駆け寄りたい気持ちを我慢して五分ほど二人の後を追い続けると、予想通り二人は公園の前で立ちどまる。
ヤツは傘を彼へ押し付けると、笑顔で走り去っていった。
「良かった……これで彼に確かめることができる」
僕は安堵して、距離を保ちながら彼の背中を追いかける。
大丈夫、彼は僕の思っている通りの優しい人だ。
緊張で僕の胸も高鳴ってくるが、左手を胸に当てて自分へ言い聞かせる。
「彼も分かってくれる。僕の気持ちを」
右手をレインコートのポケットへ差し入れた。
中に忍ばせたものを握りしめながら、彼との距離を縮めていく。
驚かせないようにそっと彼の背後へ近づいた。
あぁ、これで彼も僕のものだ。
「そうだよね、僕の大切な想い人」
明るく声をかけると、驚いた彼が振り返る。
僕は彼を安心させるように微笑みかけて、ポケットの中から引き抜いた右手を突き出した。
+++
次の日も雨だった。
街には傘を差す人が溢れている。夕刻のこの時間は駅へ向かう人々が多い。
そんな中、同じく駅に向かって歩く女子高生たちがスマホを見て声をあげる。
「ねえ、今度の被害者は公園だって」
「うわ……あそこの公園? 近づかない方がいいかも」
「犯人まだ捕まってないんだって。こわー」
彼女たちの側を黒いレインコートを着込んだ男が通り過ぎた。
男は駅とは反対方向へ歩いていく。
彼女たちは気にも留めず、男も街の雑踏の中へ消えていった。
怖い表現を少しマイルドにしていますが、苦手な方はご注意ください。
最後にその後のお話を少し追加しています。
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僕は黒のレインコートを着込み、降り続いている雨の中を早足で歩いていた。
夕方の帰宅時間のせいか、すれ違う人たちもどこか急いでいるように見える。
僕にはどうしても確かめたいことがあった。
想い人である、彼の元へ急ぐ。
あと数分で、彼の通っている予備校の授業が終わる時間だ。
はやる気持ちを抑えて、目的地へ向かう。
僕の横を通りすぎようとする女子高生の明るい声は、耳障りでかしましい。
彼女たちはお喋りしながら、楽しそうに歩いてくる。
「また刺されたって。最近この事件ばっかりー」
「やだぁー! しかも男の子だけって怖くない?」
「私たちは女だから大丈夫じゃない? ねえ、私欲しいものがあるんだけど」
携帯でニュースでも見ているのか、話している内容は物騒だ。
きゃっきゃと騒ぎながら、彼女たちは僕の隣を通り過ぎていく。
足を止めずに歩いていくと、ようやく目的地である予備校のビルが見えてきた。
遠目に彼がビルから出てきたのが見える。
彼の元へ駆け寄ろうと足を踏み出した瞬間、見たくなかった光景が目に飛び込んできた。
信じたくなかったけれど、僕の悪い予感は当たってしまった。
建物から出てきた彼は、彼と同じ予備校に通っている男と一緒だった。
心の奥がもやもやする。
僕は少し離れたところから、彼らの後を追うことに決めた。
二人は仲良く相合傘までして、途中まで一緒に帰るつもりなのだろう。
というのも、彼の家はこの先の公園の中を通り抜けるのが近道で行先が違うヤツとは、公園の前で別れるはずだからだ。
すぐにでも駆け寄りたい気持ちを我慢して五分ほど二人の後を追い続けると、予想通り二人は公園の前で立ちどまる。
ヤツは傘を彼へ押し付けると、笑顔で走り去っていった。
「良かった……これで彼に確かめることができる」
僕は安堵して、距離を保ちながら彼の背中を追いかける。
大丈夫、彼は僕の思っている通りの優しい人だ。
緊張で僕の胸も高鳴ってくるが、左手を胸に当てて自分へ言い聞かせる。
「彼も分かってくれる。僕の気持ちを」
右手をレインコートのポケットへ差し入れた。
中に忍ばせたものを握りしめながら、彼との距離を縮めていく。
驚かせないようにそっと彼の背後へ近づいた。
あぁ、これで彼も僕のものだ。
「そうだよね、僕の大切な想い人」
明るく声をかけると、驚いた彼が振り返る。
僕は彼を安心させるように微笑みかけて、ポケットの中から引き抜いた右手を突き出した。
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次の日も雨だった。
街には傘を差す人が溢れている。夕刻のこの時間は駅へ向かう人々が多い。
そんな中、同じく駅に向かって歩く女子高生たちがスマホを見て声をあげる。
「ねえ、今度の被害者は公園だって」
「うわ……あそこの公園? 近づかない方がいいかも」
「犯人まだ捕まってないんだって。こわー」
彼女たちの側を黒いレインコートを着込んだ男が通り過ぎた。
男は駅とは反対方向へ歩いていく。
彼女たちは気にも留めず、男も街の雑踏の中へ消えていった。
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