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自作品番外編
優しく触れただけなのに<風変わりな魔塔主と弟子>
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※テオドールと両想いになったばかりのレイヴン目線です。
ふじょさんに載せているものを改稿してます。
+++
部屋に差し込む柔らかな朝日で目が醒める。
最近はこの部屋で朝を迎えることも多くなってしまった。
起きた瞬間から香るいつもの煙草の香りと、ほんのりと鼻孔を擽る香り。
後者は――魔力の残滓だ。
「だから、動けないんですって……」
気付くとテオに抱き込まれていて、いつも抜け出すのが大変だ。
鼓動の音を聞くと安心すると言ってしまったばかりに、毎回すっぽりと抱き込まれてしまう。
大体自分が先に眠ってしまうから、裸のまま側にいることも少しずつ慣らされてしまった。
「……嫌じゃないけど」
諦めて、もう少しだけ体温を感じていることにする。
トク、トク、トク――
規則正しいけれど、普段とは違って静かで温かな鼓動が聞こえてくる。
俺はこの鼓動を近くで聞いているのが好きだ。
この音を独り占めできるのが自分だけだといいなと思ってしまう。
今のところは自分だけだと思うけれど。この先どうなるかは分からない。
「今だけは――独り占めしていても、いいですよね……?」
耳を澄ませてしばらく鼓動を堪能してから、そっと上へ身体をずらしテオの寝顔を覗きこむ。
いつも眠っていればいいのにと思ってしまうくらい、穏やかで綺麗な顔だ。
「目をつぶっていると品があるような気も……寝顔だけ貴族なのかな」
起きている時は綺麗でもなんでもないし憎たらしい表情ばかり見る気がするのに、こういう優しい表情を見ることができるのも好きだ。
この時間から起きてこないことをいいことに、たっぷりと堪能しておく。
「いつも、これくらい穏やかで優しい顔だったらいいのに。どうしてあんなに憎たらしい顔をしているんですか?」
腕を伸ばして、そっと頬に触れる。
指を滑らせるとすぐに無精髭に触れてチクチクする。なんだか擽ったい。
意識していなかったはずなのに、唇に指先が触れると自分の鼓動が早くなったのが分かる。
少しだけカサついている唇は、気付くとしっとりと濡れて自分を離してくれない唇だ。
昨日の夜のことを思い出して、一人で恥ずかしくなってしまう。
頬も熱くなってくるし、いい加減テオから離れて起きようと決意したその瞬間――
有無を言わせない力強い腕が、俺をグイっと引き寄せる。
口だけは負けないようにしようと開きかけたのに、先に優しく塞がれてしまう。
唇は少しだけひんやりとしていて、カサついているのに。
触れあってしまえば、自然と熱を帯びてくるような気がする。
それは優しい口付けなはずなのに、どうしてこんなに胸が高鳴ってしまうのだろう。
「……ふわぁぁ……ねみぃな。おはよう、レイちゃん」
「んっ……て。起きてたなら言ってくださいよ、もう。おはようございます、テオ」
顔がほんの少し離されると、いつもの不遜な笑みがこちらを向いている。
でも、自分に向けられる表情と他の人へ向けられる表情が違うことに気付き始めてしまったのだ。
意識してしまうと、心の奥がむずむずとして恥ずかしい。
その違いを無意識で探してしまうだなんて、テオには絶対言えない。
腕の中から抜けようとすると、追撃のように髪にも唇が触れる。
このままだと、甘さに流されてしまいそうだ。
無理矢理拘束から抜けようと両腕に力を込めているのにも関わらず、逆に腕の中にすっぽりと閉じ込められてしまう。
「もっと触ってくれてもいいのによ」
「なっ……お、起きてたなら起きてるって言ってくださいよ!」
「何か、レイちゃんが可愛かったから?」
「朝っぱらから、何言ってるんですか、この人は……って。もう起きますよ、起きるんですからね?」
いつも意地悪なのにどこか幸せそうに柔らかく笑われると、やっぱりテオには敵わないなと思ってしまう。
口には出したくないけれど、そんなテオのことが――やっぱり、好きなんだ。
ふじょさんに載せているものを改稿してます。
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部屋に差し込む柔らかな朝日で目が醒める。
最近はこの部屋で朝を迎えることも多くなってしまった。
起きた瞬間から香るいつもの煙草の香りと、ほんのりと鼻孔を擽る香り。
後者は――魔力の残滓だ。
「だから、動けないんですって……」
気付くとテオに抱き込まれていて、いつも抜け出すのが大変だ。
鼓動の音を聞くと安心すると言ってしまったばかりに、毎回すっぽりと抱き込まれてしまう。
大体自分が先に眠ってしまうから、裸のまま側にいることも少しずつ慣らされてしまった。
「……嫌じゃないけど」
諦めて、もう少しだけ体温を感じていることにする。
トク、トク、トク――
規則正しいけれど、普段とは違って静かで温かな鼓動が聞こえてくる。
俺はこの鼓動を近くで聞いているのが好きだ。
この音を独り占めできるのが自分だけだといいなと思ってしまう。
今のところは自分だけだと思うけれど。この先どうなるかは分からない。
「今だけは――独り占めしていても、いいですよね……?」
耳を澄ませてしばらく鼓動を堪能してから、そっと上へ身体をずらしテオの寝顔を覗きこむ。
いつも眠っていればいいのにと思ってしまうくらい、穏やかで綺麗な顔だ。
「目をつぶっていると品があるような気も……寝顔だけ貴族なのかな」
起きている時は綺麗でもなんでもないし憎たらしい表情ばかり見る気がするのに、こういう優しい表情を見ることができるのも好きだ。
この時間から起きてこないことをいいことに、たっぷりと堪能しておく。
「いつも、これくらい穏やかで優しい顔だったらいいのに。どうしてあんなに憎たらしい顔をしているんですか?」
腕を伸ばして、そっと頬に触れる。
指を滑らせるとすぐに無精髭に触れてチクチクする。なんだか擽ったい。
意識していなかったはずなのに、唇に指先が触れると自分の鼓動が早くなったのが分かる。
少しだけカサついている唇は、気付くとしっとりと濡れて自分を離してくれない唇だ。
昨日の夜のことを思い出して、一人で恥ずかしくなってしまう。
頬も熱くなってくるし、いい加減テオから離れて起きようと決意したその瞬間――
有無を言わせない力強い腕が、俺をグイっと引き寄せる。
口だけは負けないようにしようと開きかけたのに、先に優しく塞がれてしまう。
唇は少しだけひんやりとしていて、カサついているのに。
触れあってしまえば、自然と熱を帯びてくるような気がする。
それは優しい口付けなはずなのに、どうしてこんなに胸が高鳴ってしまうのだろう。
「……ふわぁぁ……ねみぃな。おはよう、レイちゃん」
「んっ……て。起きてたなら言ってくださいよ、もう。おはようございます、テオ」
顔がほんの少し離されると、いつもの不遜な笑みがこちらを向いている。
でも、自分に向けられる表情と他の人へ向けられる表情が違うことに気付き始めてしまったのだ。
意識してしまうと、心の奥がむずむずとして恥ずかしい。
その違いを無意識で探してしまうだなんて、テオには絶対言えない。
腕の中から抜けようとすると、追撃のように髪にも唇が触れる。
このままだと、甘さに流されてしまいそうだ。
無理矢理拘束から抜けようと両腕に力を込めているのにも関わらず、逆に腕の中にすっぽりと閉じ込められてしまう。
「もっと触ってくれてもいいのによ」
「なっ……お、起きてたなら起きてるって言ってくださいよ!」
「何か、レイちゃんが可愛かったから?」
「朝っぱらから、何言ってるんですか、この人は……って。もう起きますよ、起きるんですからね?」
いつも意地悪なのにどこか幸せそうに柔らかく笑われると、やっぱりテオには敵わないなと思ってしまう。
口には出したくないけれど、そんなテオのことが――やっぱり、好きなんだ。
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