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第二章 レトロ喫茶、オープンします

17.順調な滑り出し

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 自治会長さんはじいちゃんの味を思い出しながら、懐かしんでくれてるみたいだ。
 身近な常連さんが喜んでくれるだけで、この店を始めた甲斐がある。
 
 自治会長さんと話してると、とっきーが俺の側を通り過ぎて飲み物を運んでいく。
 トレーの上に乗っていたのは、アイスティーとアイスコーヒーだ。
 両方水出しで作ったものだけど、すっきりとした味で飲みやすくしてある。
 ストレートでも甘くしても、好みに合わせて好きに飲んでもらえるように調節した。
 俺たちの間で何度か試飲を繰り返したから、特に問題なく飲んでもらえるはずだ。
 
「お待たせしました。お飲み物を先にお持ちいたしました。アイスコーヒーのお客様」
「ありがとう。私がアイスコーヒーね」

 とっきーが順番に飲み物をテーブルへ置いていく。
 二人のお客さんも飲み物を飲みながら、おしゃべりを楽しんでくれてるみたいだ。
 もう少ししたらモーニングセットもできあがるだろうし、滑り出しは順調でほっとする。

 俺が考えていると、とっきーが出来立てのピザトーストとサンドイッチを運んでいく。
 店がきちんと機能しているのをこの目で見ると感慨深いな。
 この程度で感動している場合じゃないんだろうけど、初日くらいは感動させて欲しい。

「……蒼樹あおい、目潤んでるんですけど」
「いちいち突っ込まなくていいって。感動してるんだから」

 とっきーは去り際に小声で話しかけてくると、俺の頭をポンポンと撫でてから裏へ様子を見に行った。
 俺、そんなに表情にでてたかな。

「チームワークもいいみたいで何より。青春だな」
「いや、青春って……年齢的にはどうかと思いますけどね」
「私と比べたら、若人じゃないか。大いに頑張ってくれよ」
「はい。燃え尽きない程度に頑張っていきますので、応援してください」

 自治会長さんにまで言われてしまうほど分かりやすいのは、さすがに恥ずかしい。
 顔にださないように、気を付けよう。
 ハハハと楽しそうに笑ってくれてるけど、考えてみれば自治会長さんにとっても俺は孫の年齢だもんな。
 子ども扱いされても仕方ないか。

 +++

 初日のお客さんの入りはそこそこだった。
 途中、暇な時間帯もあったけど想像していたよりは来てくれた人が多かったから安心した。
 初めて来てくれたお客さんもいたけど、今日は地元のお客さんが懐かしんできてくれていた印象が強い。
 やっぱりじいちゃんの店っていうネームバリューがあるから、通っていてくれたお客さんが店の再開を喜んで足を運んでくれたんだろうな。

 とっきーは閉店作業で売り上げの計算をしてくれている。
 俺も最終チェックはするつもりだけど、とっきーがレジ閉めはやってくれると言ってくれたので任せている。
 とっきーなら信頼できるし、持ち逃げしても犯人はとっきーだからなって言ったらひどっ! って返ってきたから大丈夫だろう。

 げんちゃんは裏で調理の後片付けと明日の分の食材と準備をしているみたいだ。
 飲み物は俺もさっき一緒に確認して、仕込みをするものは終わらせておいた。
 俺は洗い物とか雑用をこなしながら、全体的な清掃業務だ。
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