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番外編
番外編 ミューンとシルヴァ3
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逃げた二人の近くへ距離を詰めると、盗賊の頭と思われる男とお嬢さんらしき女性が壁の前で何かを言い争っているようだった。
お嬢さんはびくともしない見えない何かを恐れて混乱しているようで、頭に向かって何とかしてと騒ぎ立てている。
頭は何度か持っている剣を見えない壁へぶつけているが、ミューンの作った壁はその程度の物理攻撃はものともしない。
「何だか揉めているみたいだな。あのじゃじゃ馬を怪我させることなく確保しなくちゃいけないのか」
「傷でも付けてみろ。報酬に響くのは火を見るよりも明らかだ。ここはシルヴァの腕の見せ所だな」
ミューンはやはり俺にやらせようとしているようだ。
援護をすると言っていたが、口下手な俺にどうしろというつもりなのか?
皆目見当がつかない。
今は物陰で気配を消しているから気づかれないが、あと数歩近づけば頭が俺たちの存在に気付くだろう。
「どうやって説得すれば……父親が心配しているとでも言えばいいのか?」
必死に言葉を絞り出そうと悩んでいると、隣にいるシルヴァが盛大に溜め息を吐き出した。
「本当にシルヴァは……頭の回転が鈍い。だから、感情もついてこないんだ。もっと単純に、素直になればいい」
「そういうミューンは口ばかりだろう。いつも俺を動かしてばかりで……感情なんて二の次だ。いちいち感傷に浸っている場合じゃない。ああいうお嬢さんはお前が説得しろよ」
ミューンの方が俺より話術があるはずなのだが、面倒ごとは大抵俺をうまいこと使おうとする。
今回もそのつもりなんだろうが、お嬢さんを素早く気絶させること以外は今のところ思いつかない。
だからこそ、ミューンの方が説得に向いているはずだが……ミューンは悩む俺へ不敵な笑みを向けてきた。
「説得するのと人を動かすのはまた違う。俺がきっかけを作り、お前は行動する。それが一番いい。さすれば、感情も自ずとついてくる」
確かにミューンの言葉に説得力はあるが、人の心を揺り動かすような熱い感情はないのかもしれない。
だからといって俺に感情で人を動かせる才能があるとも思えないのだが、正直俺が悩んだところで良い答えが出るとも思えない。
それでも、いつも俺を前線へと立たせるミューンに少しは言い返したくなる。
「それは表立って動きたくないだけだ。だが、俺は戦略を立てるより身体を動かす方が性に合っている。それも事実だ。分かったよ。俺が声をかけてくる」
諦めて従う意思表示を示し、俺は揉めている二人の前へと姿を現した。
すぐに俺の気配に気づいた頭が、顔を向けてきた。
目が合って直感する。
コイツは……俺とどこか似ている気がする。
ミューンが言っていたことは冗談かと思っていたが、そうではなかったらしい。
もしかすると、ミューンは最初から分かっていたのだろうか?
「え……?」
頭に遅れてこちらへ振り返ったお嬢さんが、驚きの表情で俺を見ているのが分かる。
俺の顔と頭の顔を交互に見ながら、先ほどまで喚いていたとは思えないくらいにぽかんとしていた。
「俺たちは冒険者ギルドの者だ。あんたの父親から頼まれた。悪いが一緒に来てもらう」
完結に述べると、お嬢さんは眉を顰めながら唇を噛む。
だが、頭のふがいなさを見て少しは冷静になったのかもしれない。
俺と頭を何度も見比べて迷っているようだ。
「おい、騙されるな! あんたは俺と一緒に来るって約束しただろう。俺のこと好きなんじゃなかったのか?」
「そうよ! だけど……私は強い男がいいの。あなたはこの街の人たちの中でかなり強いけれど、この人も強そうだわ」
頭はお嬢さんと一緒に一旦街の外へ逃げた後、父親へ金でもせびろうとしていたのかもしれない。
お嬢さんを引き留めようと、必死になっているようだ。
お嬢さんはびくともしない見えない何かを恐れて混乱しているようで、頭に向かって何とかしてと騒ぎ立てている。
頭は何度か持っている剣を見えない壁へぶつけているが、ミューンの作った壁はその程度の物理攻撃はものともしない。
「何だか揉めているみたいだな。あのじゃじゃ馬を怪我させることなく確保しなくちゃいけないのか」
「傷でも付けてみろ。報酬に響くのは火を見るよりも明らかだ。ここはシルヴァの腕の見せ所だな」
ミューンはやはり俺にやらせようとしているようだ。
援護をすると言っていたが、口下手な俺にどうしろというつもりなのか?
皆目見当がつかない。
今は物陰で気配を消しているから気づかれないが、あと数歩近づけば頭が俺たちの存在に気付くだろう。
「どうやって説得すれば……父親が心配しているとでも言えばいいのか?」
必死に言葉を絞り出そうと悩んでいると、隣にいるシルヴァが盛大に溜め息を吐き出した。
「本当にシルヴァは……頭の回転が鈍い。だから、感情もついてこないんだ。もっと単純に、素直になればいい」
「そういうミューンは口ばかりだろう。いつも俺を動かしてばかりで……感情なんて二の次だ。いちいち感傷に浸っている場合じゃない。ああいうお嬢さんはお前が説得しろよ」
ミューンの方が俺より話術があるはずなのだが、面倒ごとは大抵俺をうまいこと使おうとする。
今回もそのつもりなんだろうが、お嬢さんを素早く気絶させること以外は今のところ思いつかない。
だからこそ、ミューンの方が説得に向いているはずだが……ミューンは悩む俺へ不敵な笑みを向けてきた。
「説得するのと人を動かすのはまた違う。俺がきっかけを作り、お前は行動する。それが一番いい。さすれば、感情も自ずとついてくる」
確かにミューンの言葉に説得力はあるが、人の心を揺り動かすような熱い感情はないのかもしれない。
だからといって俺に感情で人を動かせる才能があるとも思えないのだが、正直俺が悩んだところで良い答えが出るとも思えない。
それでも、いつも俺を前線へと立たせるミューンに少しは言い返したくなる。
「それは表立って動きたくないだけだ。だが、俺は戦略を立てるより身体を動かす方が性に合っている。それも事実だ。分かったよ。俺が声をかけてくる」
諦めて従う意思表示を示し、俺は揉めている二人の前へと姿を現した。
すぐに俺の気配に気づいた頭が、顔を向けてきた。
目が合って直感する。
コイツは……俺とどこか似ている気がする。
ミューンが言っていたことは冗談かと思っていたが、そうではなかったらしい。
もしかすると、ミューンは最初から分かっていたのだろうか?
「え……?」
頭に遅れてこちらへ振り返ったお嬢さんが、驚きの表情で俺を見ているのが分かる。
俺の顔と頭の顔を交互に見ながら、先ほどまで喚いていたとは思えないくらいにぽかんとしていた。
「俺たちは冒険者ギルドの者だ。あんたの父親から頼まれた。悪いが一緒に来てもらう」
完結に述べると、お嬢さんは眉を顰めながら唇を噛む。
だが、頭のふがいなさを見て少しは冷静になったのかもしれない。
俺と頭を何度も見比べて迷っているようだ。
「おい、騙されるな! あんたは俺と一緒に来るって約束しただろう。俺のこと好きなんじゃなかったのか?」
「そうよ! だけど……私は強い男がいいの。あなたはこの街の人たちの中でかなり強いけれど、この人も強そうだわ」
頭はお嬢さんと一緒に一旦街の外へ逃げた後、父親へ金でもせびろうとしていたのかもしれない。
お嬢さんを引き留めようと、必死になっているようだ。
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