ファイナル・ウォー・ファンタジー

れつ

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魔族の少女エクラーザ

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 バルとデュークの2人は、エクラーザが監禁されている牢の前まで来た。
 地下牢のわきには、剣と鎧を身につけた警護兵が1人、立っていた。

 デュークが、アゴで鉄格子を指しながら、警備兵に対して
「ここを開けろ」と命じた。

 警備兵はカギを取り出すと、鉄格子の扉を開けた。
 バルとデュークの2人が、地下牢の中に入り、床に座り込んでいるエクラーザを見下ろした。

 エクラーザは「魔族」の女である。「魔族」といっても外見的には、ほとんど「人間」と変わりがない姿をしていた。

 ただし魔族は1つだけ、人間とは決定的に違っている部分があった――
「魔族」は皆、「七色に変化する髪」をしていた。時間とともに、ゆっくりと色が変化する美しい髪――これが、外見上の「人間」と「魔族」の最大の違いである。

 バルはエクラーザと会うまで、「魔族」を見たことが無かった。
 しかし「魔族」の容姿が、「七色の髪」を除けば人間と変わりが無いのを、話で聞いていたので、「魔族」に対する恐怖心というのは、特に感じていなかった。
 バルがエクラーザと初めて会った時、まず目を引いたのが、やはりエクラーザの「七色に変化する髪」であった。

 さっき警備兵が、バルに対して「あのエクラーザって子、魔族とはいえ、なかなかカワイイ子」と評していたが、確かにエクラーザは、美貌の持ち主であった。
 肌の色は白く、整った顔立ちをしていた。
「七色の美しい髪」は、腰まであった。
彼女の大きな目には、孤独と悲しみが、宿っているように見えた。
5年間に及ぶ、敵側での幽閉生活は、彼女の心に、暗い影を落としていたのだろう。

 彼女は両手・両足ともに、鉄鎖で縛られており、体の自由は、全く奪われていた。
 少女(エクラーザ)は無表情で、バルとデュークの2人を見つめていた。

 デュークがエクラーザに話しかけた。
「決心は、ついたかね」

 エクラーザは、気乗りしない調子で答えた。
「決心・・・・・・何の?」

「明日の遠征に、参加する決心だ。
われわれ人間軍は明日、君ら魔族が住む大陸――『ミゲルクルス大陸』へ向けて出発する。もうこれ以上、先延ばしには出来ないのだ」

「それは、何度も言ったとおり・・・・・・
私は一緒に行く気は、無いわ。
だから・・・・・・ミゲルクルスへ行くんなら、あなたたち人間だけで行ったらいいと思う・・・・・・」

 このデュークとエクラーザのやりとりを、わきで聞いていたバルは、
「おや?」と思った。
 デュークの悪い評判からして、捕虜(エクラーザ)に対してデュークは、もっと傲慢に振舞うのかと思いきや、エクラーザに対する、デュークの口調や態度には「敬意」や「礼儀正しさ」すら感じ取れたからである。

 また、なぜだか“この2人(エクラーザとデューク)は、以前からの顔見知りなんじゃないか”という気がした。

 あくまで明日の大遠征への参加を、かたくなに拒否するエクラーザの返答を前にしたデュークは“フー”と、ため息をついた。
 デュークは、かたわらにいたバルに「君が話を進めたまえ」と言うと、すぐわきの地下牢の壁に寄りかかり、視線を上に向けた。

 バルが口を開こうとすると、エクラーザは、キッパリと言った。
「誰が何度、なにを言っても同じよ。
私の答えは、変わらないから」

 多少、ムッとした表情で、バルは言った。
「いいかエクラーザ、君に言っておくが、君が、いくら拒否してもムダだ。ムダなんだよ。
拒否したって君は、ムリやり戦場(ミゲルクルス大陸)へ連れて行かれるだけだぞ!」

 そこまで言い切るとバルは多少、声を落ち着けて、言葉を続けた。
「だが出来れば、そうしたくは無い。君には今回の遠征に、自分の意思で参加して欲しい。
そして『7色の神器』を、おとなしく俺たち人間に引き渡すよう、魔族の連中に話をつけてもらいたい。
君は『魔族の実力者だった男レオンランザ』の娘だ。
君の父親のレオンランザは、つい2年前まで、魔族の最高指導者だった男だろ?
君は、それだけのオエライさんの娘なんだから・・・・・・君の言うことなら、魔族の連中も、耳を傾けるだろ?
なにしろ魔族は、『高貴な血』を、非常に重視する種族だからな。
俺たち人間としては、『7色の神器』さえ手に入れば、何も言うことは無い。
だから・・・・・・君が、人間に協力してくれさえすれば、人間と魔族、お互いムダな戦いをせずに済むかもしれないんだよ」

 しばらくしてから、エクラーザは言った。
「・・・・・・私が何を言っても、魔族たちは『7色の神器』を、あなたたち人間には渡さないと思う。
だから・・・・・・私をミゲルクルス大陸へ連れて行くだけ、ムダよ」

「それは、やってみないと分からないだろう。
とにかく今は、君の協力が必要なんだ」

 このバルの訴えに、エクラーザは何も答えなかった。
 たたみかけるようにバルは、エクラーザに言った。

「なあ頼むよ、エクラーザ。
魔族が、おとなしく『7色の神器』を渡してくれさえすれば、人間と魔族、お互いムダな殺し合いをせずに済むんだよ。
そうすれば多くの兵士の命を、救うことができる。君の行動しだいで、人間だけでなく『魔族の多くの命』を救う事ができるかもしれないんだ。
君だって、魔族の命を救いたいんだろ?」

 エクラーザは下をうつむいたまま、何も答えなかった。
 しばらくしてエクラーザは、ポツリと言った。

「敵である人間に協力して『7色の神器』を売り渡すなんて事、そんな事、私には出来ない。
仲間の魔族を、裏切るなんてこと・・・・・・そんなこと出来ない」

 このエクラーザの拒否回答を聞いたバルは、明らかに落胆した表情を浮かべた。
 これ以上、話す言葉が見つからず、バルが黙っていると、バルとエクラーザの2人のやりとりを聞いていたデュークが、口を開いた。

「説得に難航している、という報告を受けてはいたが・・・・・・
やはり、その通りだな。
どうやら我々が何を言ったところで、彼女は我々に協力する気は、無いようだね」

 ここでデュークは思い切ったように、勢いよく話し始めた。
「もう、ここでハッキリさせよう、エクラーザ。
皇帝陛下のご命令により、明日、君を『ミゲルクルス大陸』へ連れて行く。これは君の意思に関わらず、変更は出来ないのだ。
そして君には必ず、魔族への説得に当たってもらう。
しかし、もし君がミゲルクルス大陸に到着した後になっても、今の態度を固持して『魔族への説得』を拒否し続けるようなら・・・・・・」と、ここでデュークは、少し間をおいて話を続けた。

「皇帝陛下は『君を処刑』するよう、ご命令されている。このご命令は、他の尋問官が、すでに君に伝えている事なので、君は、もう知っているとは思うが・・・・・・
君には気の毒だが、これは皇帝陛下の強いご意思であり、我々には、どうすることも出来ないのだ」

 「処刑」という絶望的な言葉を聞いても、エクラーザは動揺した様子は無かった。すでに覚悟は出来ているらしかった。

 デュークは言葉を続けた。
「エクラーザ、君は、まだ17才だ。死ぬには、あまりに若すぎる。
悪いことは言わない。頑なな態度は、君に何の利益も、もたらさない。素直に翻意して、われわれ人間に協力したまえ」

 そしてデュークは、最後に言った。
「エクラーザ、君に伝えることは、以上だ。
我々は、これまで君に十分、時間を与えてきた。もう君に、残された時間は少ない。後悔がないように今晩、じっくり、よく考えたまえ」
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