ファイナル・ウォー・ファンタジー

れつ

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真相――偽りの人類の歴史

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 しばらく重い沈黙が流れた。バルが重い口を開いた。
「・・・・・・じゃあ百歩ゆずって仮に、それが事実だとしても、なんで聖護国は、そんな事を?
なぜ国民に、ウソを教え続けたんですか?」

「本当のことを言えば、『魔族に対する戦争』を行なう理由が、なくなるからでしょうね。
魔族が『七色の神器』の力を悪用して、太陽を奪い取った。だから人間は、太陽を復活させるために、魔族から『七色の神器』を、奪い返さねばならない――
聖護国は、そう言って、人間たちを信じ込ませて、周辺国を巻き込んで『魔族に対する戦争』を始めた。
人間たちは今『七色の神器』を全て、手に入れて、『七色の神器』を『人間の大陸にある聖地』に設置しようとしているけど、これは、やってはならない事なのよ。
なぜなら大きな問題が起きてしまうから」

「大きな問題?」

「そう。
『七色の神器』を『人間の大陸にある聖地』に設置してしまうと、人間たちは、天候を自分の意思で操れるようになってしまうの」

 バルは、けげんそうな顔で尋ねた。
「天候を、自分の意思で操れるようになる???
・・・・・・どういう事ですか?」

 マールは話を続けた。
「まあ、1つ1つ説明していきましょう。
まず『聖地』について、説明しないといけないわね。
かつては『人間の大陸にある聖地』に『七色の神器』が七つ全て、あったのは、あなたも知っているわね?」

「もちろん。
でもその後、魔族と人間の間で、大きな戦争(太陽戦争)が起きて、その戦争に負けた人間は『七色の神器』を全て、魔族に奪い取られてしまった。
そして人間との戦争に勝った魔族は、人間から奪い取った『七色の神器』を全て、『自分たちの聖地(魔族の聖地)』へ持っていった・・・・・・そうですよね?」

 マールは、このバルの説明を、首を横に振りながら否定した。
「いえ残念ながら、それが違うのよ。
『七色の神器』が、『人間の聖地』から『魔族の聖地』へ移された事は、あなたの言った通りで、間違いない。
でもそれは、魔族が人間から『七色の神器』を奪ったために、そうなったのでは無いの。
・・・・・・ここで、あなたに本当のことを教えましょう。
人間の方から魔族に対して、『七色の神器』を譲り渡したのよ。そして『魔族の聖地』に『七色の神器』を設置するよう、人間の方から魔族に対して、お願いしたのよ」

 このマールの話に、バルは本人の前で失礼だとは思ったが、思わず笑ってしまった。
「そんなこと、ありえないですよ。
『俺たち人間の方から、七色の神器を全部、魔族にあげた』って言うんですか? 俺たち人間が、そんな事するはずが無いと思いますが・・・・・・
なぜって『七色の神器』を魔族にあげたところで、人間にとって、何のトクも無いですよね?
『七色の神器』は、魔族に奪い取られたんじゃ無いんですか?」

 マールが答えた。
「あなたが、そう思うのもムリは無いわね。じゃあ、これから、あなたに詳しく話すわ。人間が『七色の神器』を魔族へ譲り渡すことになった経緯についてね。
聖地には『魔族の聖地』と『人間の聖地』の2つがある――
『魔族が住むミゲルクルス大陸にある聖地』と
『人間が住むネファーンド大陸にある聖地』の2つね。
ここで、人間たちは勘違いしているんだけど・・・・・・
『聖地のある場所』が違うだけで、『魔族の聖地』も『人間の聖地』も2つとも、同じようなものだと、多くの人間たちは思ってるみたいね。
でも一口に『聖地』といっても、その機能は同じでは無いの。
『七色の神器』が『魔族の聖地』に設置されている時は、天気は『神の意思』によって決定されるの。
人間が天気を操ることは出来ない――ちょうど今の状態ね。
今は人間が、天気を操るなんてことは出来ない。そうよね?」とマールが尋ねると、バルは笑顔で、
「そりゃ・・・・・・天気を操るなんてこと、人間には出来ませんよ」と答えた。

 マールは話を続けた。
「でも『七色の神器』が『人間の聖地』にある時には、どうかな。
あなたには、とうてい信じられないかもしれないけど、『七色の神器』が七つ全て、『人間の聖地』にある時には、人間が天気を自在に操ることが出来るようになるの。
『太陽の冠』を使用する事によってね」

「太陽の・・・・・・かんむり?」と、バルは怪訝そうな表情で尋ねた。そんなものは、生まれてこのかた聞いたことも無かったからだ。

 マールは言った。
「そう。『太陽の冠』を頭にかぶって、『この場所の天気をこうしたい』と強く念じるだけで、天気を自分の思うがままに、操ることが出来るようになるの。
この『太陽の冠』は、2つあるわ。
魔族のものは、魔族の最高指導者であるゴアジーバが持っている。
人間のものは、どこにあるのか、私は知らない。
魔族が持つ『太陽の冠』は、『ミゲルクルス大陸(魔族の大陸)』の天候を、
そして人間が持つ『太陽の冠』は、『ネファーンド大陸(人間の大陸)』の天候を、操ることが出来るの」

 ここでバルは、口をはさんだ。
「ちょっと待って下さい、つまり、こういう事ですか?
『七色の神器』が『魔族の聖地』にある時には、人間は天気を操ることは出来ない。
でも『七色の神器』が七つ全て、『人間の聖地』にある時には、その・・・・・・『太陽の冠』によって、人間は天気を操ることが出来るようになると?」

 マールは答えた。
「そう。
『七色の神器』が『魔族の聖地』にある時には、『太陽の冠』が機能しないので、人間も魔族も、天候を操ることは出来ない。だから天気の変化については、『神の手』に委ねるしかない。
でも『七色の神器』が七つ全て、『人間の聖地』にある時には、『太陽の冠』が機能するようになるので、『太陽の冠』が持つ魔力によって、人間も魔族も、自分たちの意思で、天候を操ることが出来るようになる。

かつては『七色の神器』が七つ全て、『人間の聖地』にあったので、人間も魔族も、『太陽の冠』を使用して、自分たちの意思で、天気を操っていたの。
つまり『神の意思』では無く『種族の意思』で、天候を決めていたってワケ。
でもこの『太陽の冠』が、人間でも魔族でも、争いのもとになったの。どの国も『太陽の冠』が持つ力を欲したので、『太陽の冠』の奪い合いになったの。

『太陽の冠』があれば、天気を自国の思うがままに操れるので、自然災害を防ぐことができるし、良好な天候を作り出すことで、食料の確保も容易になる。それにより、国を豊かにすることが出来るから、民の不平不満も抑えやすくなる――
と、ここまでは『太陽の冠』が持つ良い側面なんだけど、それとは逆に『太陽の冠』には、大きな問題もあるのよ。
この『太陽の冠』の力を悪用すれば、『天候兵器』として使うことも出来る。つまり敵対国に対して、自然災害を人為的に作り出すことで、大ダメージを与えることが出来るし、農産物を不作に追い込んで、餓死者を続出させる事だって出来てしまう。
だから『太陽の冠』は、世界を支配するための有効な武器としても、使われたの。
そんなわけで、どの国にとっても、『太陽の冠』を持つ事が、自国の生存にとって必要になって、『太陽の冠』の奪い合いになったのよ。

この『太陽の冠』をめぐる戦いは、徐々にエスカレートして、ついに人間界で、大戦争が起きてしまった。大戦争――つまり『太陽戦争』の勃発よ。
国家間の大戦争の結果、戦死者はうなぎのぼりになり、至るところで街は崩壊し、疫病がはやり、人間界は、ほとんど壊滅状態になったの。
『太陽の冠』のおかげで、『自然の力』を人間の自由には出来たけど、その結果はといえば『人類滅亡の寸前』。
だから人間たちは『太陽戦争』が終結した後、こう結論づけたの――
『強大な自然の力を、人間が手にしている限り、争いは無くならない』って。

そこで人間たちは、『七色の神器を、人間の聖地から、魔族の聖地に移したい』と魔族に申し出たの。
このように『七色の神器の移動』については、そもそも人間の方から言い出した事なのよ。
魔族の方でも、『太陽の冠』が争いのもとになっていたので、魔族たちは、この人間の要請を受け入れた。
そして人間と魔族は、お互い話し合い、合意して、『七色の神器』を七つ全て、『人間の聖地』から『魔族の聖地』へと運んだ。
『七色の神器』が『魔族の聖地』に設置された事によって、『太陽の冠』は効力を失い、天気は『種族の意思』では無く、『神の意思』によって決定されるようになった。
人間と魔族の2つの種族は、『自然の力は強大すぎるので、不完全な判断力しか無い種族の手には負えない』と考えて、天候を、神の手にゆだねたのよ。
その結果『太陽の冠』をめぐる戦争は、人間の世界でも魔族の世界でも根絶され、
長い間、平和が続いたの」
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