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夕餉は家族の時間です。それは私の一番好きな時間
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その夜。
御所から黒緋が帰ってくると夕餉の時間が始まりました。
「そうか、紫紺が留守番していてくれたのか」
「うん。ほんとはオレもいきたかったけど、せいらんがおひるねしてたからがまんした」
「よく我慢したな」
「うん。オレはあにうえだし、せいらんあかちゃんだし、おひるねおこしたらかわいそうだとおもって」
「なるほど。それで今夜は紫紺の好きな料理がたくさんあるのか」
「オレががんばったから、ははうえがどうぞってつくってくれたんだ」
紫紺がご飯を食べながら黒緋にお話ししています。
私が買い物に行っている間、紫紺はしっかりお留守番をしてくれていたのです。
「あいあ~、ばぶぶっ。……もぐもぐ」
抱っこしている青藍もなにやらおしゃべりに参加です。
でも小さなお口にご飯が入っているのでうまくしゃべれていませんね。
青藍のご飯は粥にしていますが、ちゃんともぐもぐしなくてはいけません。
「青藍、お口の中に入っています。おしゃべりはごっくんしてからですよ」
「あう~、もぐもぐ。……ちゅちゅちゅっ」
「ああいけません。お口にご飯が入っているのに指は吸えないでしょう。ご飯粒だらけになってるじゃないですか」
私は青藍の口や指についている米粒をとってあげました。目が離せませんね。
こうして青藍に夕餉を食べさせながら私も食事を進めていると黒緋が声をかけてくれます。
「青藍を寄越せ。お前がゆっくり食べられないだろう」
「いいえ、黒緋様の御食事の邪魔になってしまいます。ゆっくり召し上がってください」
私は慌てて断りました。
黒緋の食事の邪魔になるなどいくら実子の青藍でも許されません。
でも黒緋は納得のいかない顔をします。
「しかしな……。では女官を呼べ。預ければいい」
「お心遣いありがとうございます。でも青藍の食事もあと少しで終わりますから」
それも断りました。
紫紺と青藍はなるべく私がお世話したいのです。
天妃である私が子どもを育てたいなどわがままでしかないのは分かっていますが、それでも紫紺や青藍とは離れていたくありません。日々成長する姿を一番近くで見ていたいのです。
「わかった、お前がそう言うなら。ならば青藍が落ち着いたらお前の話しも聞かせてくれ。今日はなにをして過ごしていた?」
「私は以前地上にいた時のように炊事をしたり掃除をしたり、あとは買い物をしたり……あっ」
今日の出来事をひとつふたつと思い浮かべて、……嫌なことを思いだしてしまいました。
「どうした。何かあったのか?」
「はい、じつは買い物の帰りにちょっと……。おみくじ屋があって、そこの店主に勝手におみくじを引かれたのです。あまりに失礼でびっくりしたんです」
「ハハハッ、そんなことがあったのか。天妃のお前を占うなんて、そのみくじ屋もたいしたものだ」
「笑いごとではありませんよ。まったく……」
私は少し拗ねた気分になりました。
そんな私を黒緋が「悪かった。怒るなよ」と慰めてくれます。たったそれだけのことなのにあっという間に拗ねた気分が消えてしまって、自分の単純さが可笑しいですね。
おみくじの結果は最悪だったので言いたくありませんが、もう気にするのはやめておきましょう。そもそも天妃の私を人間のおみくじ屋が占うなど到底無理なことなのです。
「それよりあなたの話しも聞かせてください。御所はどうでしたか? イナゴの件でなにか分かりましたか?」
「ああ、そのことだがやはり役所でも騒ぎになっている。このまま各地に蝗害が広がれば今年は飢饉になるだろう。もし来年まで影響が残れば大飢饉の引き金になりかねない。発生原因を安倍家や土御門家の陰陽師が占ったようだが原因不明ということだ」
「そうでしたか……」
安部家や土御門家とは都でも高名な陰陽師一族でした。
それというのもこの二つの家は百年ほど前に活躍した稀代の陰陽師・安倍晴明の血筋です。安倍晴明は人間の男と九尾の狐・玉藻御前の間に生まれた子どもだという伝説があり、人智を越えた力を操っていたと云われていました。
伝説というのは語られるうちに大袈裟になるものですが、今回に限っては真実だったりします。そもそも九尾の狐・玉藻御前は黒緋の式神なので間違いないです。
母親が大妖怪九尾の狐なんですから人智を越えた力くらいありますよね。そして現在の安部家と土御門家の一族にも普通の人間より強い神気が宿っていました。
「まあ仕方ない。安倍も土御門も腕の立つ陰陽師だが、人間が占ってどうこうできることではないようだ。離寛や式神にも調べさせている。なにかあれば報せがくるだろう」
「それを待つしかないようですね」
「ああ。……だが、萌黄には苦労をかけそうだ」
「萌黄になにか?」
萌黄の名にすかさず反応します。
萌黄は私の大切な双子の妹。なにかあるならちゃんと知っておきたいですからね。
そんな私に黒緋は言いづらそうにしながらも教えてくれます。
御所から黒緋が帰ってくると夕餉の時間が始まりました。
「そうか、紫紺が留守番していてくれたのか」
「うん。ほんとはオレもいきたかったけど、せいらんがおひるねしてたからがまんした」
「よく我慢したな」
「うん。オレはあにうえだし、せいらんあかちゃんだし、おひるねおこしたらかわいそうだとおもって」
「なるほど。それで今夜は紫紺の好きな料理がたくさんあるのか」
「オレががんばったから、ははうえがどうぞってつくってくれたんだ」
紫紺がご飯を食べながら黒緋にお話ししています。
私が買い物に行っている間、紫紺はしっかりお留守番をしてくれていたのです。
「あいあ~、ばぶぶっ。……もぐもぐ」
抱っこしている青藍もなにやらおしゃべりに参加です。
でも小さなお口にご飯が入っているのでうまくしゃべれていませんね。
青藍のご飯は粥にしていますが、ちゃんともぐもぐしなくてはいけません。
「青藍、お口の中に入っています。おしゃべりはごっくんしてからですよ」
「あう~、もぐもぐ。……ちゅちゅちゅっ」
「ああいけません。お口にご飯が入っているのに指は吸えないでしょう。ご飯粒だらけになってるじゃないですか」
私は青藍の口や指についている米粒をとってあげました。目が離せませんね。
こうして青藍に夕餉を食べさせながら私も食事を進めていると黒緋が声をかけてくれます。
「青藍を寄越せ。お前がゆっくり食べられないだろう」
「いいえ、黒緋様の御食事の邪魔になってしまいます。ゆっくり召し上がってください」
私は慌てて断りました。
黒緋の食事の邪魔になるなどいくら実子の青藍でも許されません。
でも黒緋は納得のいかない顔をします。
「しかしな……。では女官を呼べ。預ければいい」
「お心遣いありがとうございます。でも青藍の食事もあと少しで終わりますから」
それも断りました。
紫紺と青藍はなるべく私がお世話したいのです。
天妃である私が子どもを育てたいなどわがままでしかないのは分かっていますが、それでも紫紺や青藍とは離れていたくありません。日々成長する姿を一番近くで見ていたいのです。
「わかった、お前がそう言うなら。ならば青藍が落ち着いたらお前の話しも聞かせてくれ。今日はなにをして過ごしていた?」
「私は以前地上にいた時のように炊事をしたり掃除をしたり、あとは買い物をしたり……あっ」
今日の出来事をひとつふたつと思い浮かべて、……嫌なことを思いだしてしまいました。
「どうした。何かあったのか?」
「はい、じつは買い物の帰りにちょっと……。おみくじ屋があって、そこの店主に勝手におみくじを引かれたのです。あまりに失礼でびっくりしたんです」
「ハハハッ、そんなことがあったのか。天妃のお前を占うなんて、そのみくじ屋もたいしたものだ」
「笑いごとではありませんよ。まったく……」
私は少し拗ねた気分になりました。
そんな私を黒緋が「悪かった。怒るなよ」と慰めてくれます。たったそれだけのことなのにあっという間に拗ねた気分が消えてしまって、自分の単純さが可笑しいですね。
おみくじの結果は最悪だったので言いたくありませんが、もう気にするのはやめておきましょう。そもそも天妃の私を人間のおみくじ屋が占うなど到底無理なことなのです。
「それよりあなたの話しも聞かせてください。御所はどうでしたか? イナゴの件でなにか分かりましたか?」
「ああ、そのことだがやはり役所でも騒ぎになっている。このまま各地に蝗害が広がれば今年は飢饉になるだろう。もし来年まで影響が残れば大飢饉の引き金になりかねない。発生原因を安倍家や土御門家の陰陽師が占ったようだが原因不明ということだ」
「そうでしたか……」
安部家や土御門家とは都でも高名な陰陽師一族でした。
それというのもこの二つの家は百年ほど前に活躍した稀代の陰陽師・安倍晴明の血筋です。安倍晴明は人間の男と九尾の狐・玉藻御前の間に生まれた子どもだという伝説があり、人智を越えた力を操っていたと云われていました。
伝説というのは語られるうちに大袈裟になるものですが、今回に限っては真実だったりします。そもそも九尾の狐・玉藻御前は黒緋の式神なので間違いないです。
母親が大妖怪九尾の狐なんですから人智を越えた力くらいありますよね。そして現在の安部家と土御門家の一族にも普通の人間より強い神気が宿っていました。
「まあ仕方ない。安倍も土御門も腕の立つ陰陽師だが、人間が占ってどうこうできることではないようだ。離寛や式神にも調べさせている。なにかあれば報せがくるだろう」
「それを待つしかないようですね」
「ああ。……だが、萌黄には苦労をかけそうだ」
「萌黄になにか?」
萌黄の名にすかさず反応します。
萌黄は私の大切な双子の妹。なにかあるならちゃんと知っておきたいですからね。
そんな私に黒緋は言いづらそうにしながらも教えてくれます。
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