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黒緋様の弟ということは、私の義理の弟ということで……
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「待て、お前は行くな。式神に行かせる」
「しかし……」
困惑しました。
黒緋の式神は神獣、魔獣、鬼、妖怪、動物、昆虫など多岐にわたり、そのどれも優秀なものばかりです。でもだからといって人間と通じ合えるかというと難しいです。人間の男と契りを交わした玉藻御前という例外もいますが、ほとんどの式神が人間の姿形をとることはできても深く通じ合うことはできません。
そのこともあって、来訪者の用件だけを聞いて追い返すなんてこともあり得るわけで……。
そんな私の心配を黒緋が察してくれます。
「……わかった。では俺も行こう。だからお前はここにいろ」
「えっ、あなたが行くんですか? そんなの心配です!」
「お前に心配されるのは気分がいいが、俺だぞ?」
そう言って黒緋が苦笑しました。
たしかに盗賊が何人いようと黒緋ならあっという間に制圧できます。でもこういうのってそういう問題ではないのです。
「それはそうですけど、そういうことじゃなくてですね」
「ハハハッ、わかっている。ありがとう。ではお前は紫紺と青藍の側にいてくれ」
黒緋に優しく言われました。
見つめられるとくすぐったい気持ちになって頷きました。紫紺はとても強い子なので大丈夫だとわかっていますが、やっぱりそういう問題ではないのです。
「……わかりました。ではあなたも気を付けて」
私は黒緋を見送ると、紫紺と青藍が眠っている寝間に足を向けました。
寝間の前には式神の士官や女官が夜番をしてくれていました。子ども達の眠りを見守ってくれているのです。
平伏して迎えられました。
「ありがとうございます。私のことは気にしないでください」
そう言うと式神たちはまた夜番へと戻りました。式神は使役主に忠実なのです。
私は寝間を囲っている御簾を少しだけめくって二人をたしかめます。
大の字になって堂々と眠る紫紺。その紫紺の周りをころころ転がりながら眠っている青藍。可愛らしい寝姿ですね、よく眠っています。この眠りはしっかり守らなければ。
私は寝間の前で正座して盗賊に警戒します。
盗賊が黒緋を突破できるとは思いませんが万が一に備えていましたが。
「――――へー、この二人が兄上と義姉上の子か~」
「なっ!? どうしてここに……!」
ぎょっとしました。
だってそこにいたのは花緑青。昼間の無礼なおみくじ屋だったのです。
花緑青は当たり前の顔をして御簾の隙間から寝間を覗いています。
「離れなさい! 紫紺と青藍に近づくことは許しません! だいたいあなた、どうやってここに入って来たんですか!」
私は咄嗟に寝間から花緑青を遠ざけました。
あんなに警戒していたのになんの気配も感じませんでした。それだけではありません。ここにいるということは、黒緋は……!
「あなた、黒緋様をどうしたのです! もし黒緋様になにかあったらただでは済みませんよ!!」
「ただでは済まないとは怖い怖い。だが、あんたがナニをしてくれるのか興味があるな~」
「ふざけた物言いをっ。黒緋様をどうしたのか早く言いなさい!」
「そうは言うけどさ、兄上ならそこにいるんだけど」
「え、黒緋様!」
振り返ると黒緋が苦笑して立っていました。
しかも……兄上? さっきからこの男、黒緋を兄上って……。
「黒緋様、これはいったいどういうことです! この男は何者ですか? どうしてここにいるんです! あなたを兄上って呼んでますけど……!」
黒緋に駆け寄りました。
黒緋は私の肩にやんわり手を置いて後ろに下がらせてくれます。
「鶯、驚かせて悪かった。花緑青、濡れたままうろうろするな」
黒緋がそう言うと式神の女官が現われて花緑青の濡れた髪や法衣を拭きだします。
しかも濡れたまま屋敷に入ってきたので、こんな時間だというのに拭き掃除まですることになって……。
なんて迷惑な!
黒緋の後ろからキッと睨みました。
それに気付いていながら花緑青は黒緋に親しげに笑いかけます。
「ごめん、兄上。久しぶりに兄上に会えたからはしゃいじゃったみたいだ」
「仕方ない奴だな」
悪びれない花緑青に黒緋が呆れた口調で言いました。
でも黒緋はどこか嬉しそうな目で花緑青を見ています。
そんな二人の雰囲気に私は困惑してしまう。
「黒緋様、説明してください。これはいったいどういうことなんです? 知り合いなんですか?」
「知り合いもなにも、俺の弟だ」
「弟!?」
思わず声を上げました。
黒緋の口から告げられれば疑いようがありません。
私はあんぐりと花緑青を見つめます。
そんな私に花緑青がニヤリと笑う。
「よろしくね、義姉上」
黒緋の弟……。
寝耳に水とはまさにこのことでした。
「しかし……」
困惑しました。
黒緋の式神は神獣、魔獣、鬼、妖怪、動物、昆虫など多岐にわたり、そのどれも優秀なものばかりです。でもだからといって人間と通じ合えるかというと難しいです。人間の男と契りを交わした玉藻御前という例外もいますが、ほとんどの式神が人間の姿形をとることはできても深く通じ合うことはできません。
そのこともあって、来訪者の用件だけを聞いて追い返すなんてこともあり得るわけで……。
そんな私の心配を黒緋が察してくれます。
「……わかった。では俺も行こう。だからお前はここにいろ」
「えっ、あなたが行くんですか? そんなの心配です!」
「お前に心配されるのは気分がいいが、俺だぞ?」
そう言って黒緋が苦笑しました。
たしかに盗賊が何人いようと黒緋ならあっという間に制圧できます。でもこういうのってそういう問題ではないのです。
「それはそうですけど、そういうことじゃなくてですね」
「ハハハッ、わかっている。ありがとう。ではお前は紫紺と青藍の側にいてくれ」
黒緋に優しく言われました。
見つめられるとくすぐったい気持ちになって頷きました。紫紺はとても強い子なので大丈夫だとわかっていますが、やっぱりそういう問題ではないのです。
「……わかりました。ではあなたも気を付けて」
私は黒緋を見送ると、紫紺と青藍が眠っている寝間に足を向けました。
寝間の前には式神の士官や女官が夜番をしてくれていました。子ども達の眠りを見守ってくれているのです。
平伏して迎えられました。
「ありがとうございます。私のことは気にしないでください」
そう言うと式神たちはまた夜番へと戻りました。式神は使役主に忠実なのです。
私は寝間を囲っている御簾を少しだけめくって二人をたしかめます。
大の字になって堂々と眠る紫紺。その紫紺の周りをころころ転がりながら眠っている青藍。可愛らしい寝姿ですね、よく眠っています。この眠りはしっかり守らなければ。
私は寝間の前で正座して盗賊に警戒します。
盗賊が黒緋を突破できるとは思いませんが万が一に備えていましたが。
「――――へー、この二人が兄上と義姉上の子か~」
「なっ!? どうしてここに……!」
ぎょっとしました。
だってそこにいたのは花緑青。昼間の無礼なおみくじ屋だったのです。
花緑青は当たり前の顔をして御簾の隙間から寝間を覗いています。
「離れなさい! 紫紺と青藍に近づくことは許しません! だいたいあなた、どうやってここに入って来たんですか!」
私は咄嗟に寝間から花緑青を遠ざけました。
あんなに警戒していたのになんの気配も感じませんでした。それだけではありません。ここにいるということは、黒緋は……!
「あなた、黒緋様をどうしたのです! もし黒緋様になにかあったらただでは済みませんよ!!」
「ただでは済まないとは怖い怖い。だが、あんたがナニをしてくれるのか興味があるな~」
「ふざけた物言いをっ。黒緋様をどうしたのか早く言いなさい!」
「そうは言うけどさ、兄上ならそこにいるんだけど」
「え、黒緋様!」
振り返ると黒緋が苦笑して立っていました。
しかも……兄上? さっきからこの男、黒緋を兄上って……。
「黒緋様、これはいったいどういうことです! この男は何者ですか? どうしてここにいるんです! あなたを兄上って呼んでますけど……!」
黒緋に駆け寄りました。
黒緋は私の肩にやんわり手を置いて後ろに下がらせてくれます。
「鶯、驚かせて悪かった。花緑青、濡れたままうろうろするな」
黒緋がそう言うと式神の女官が現われて花緑青の濡れた髪や法衣を拭きだします。
しかも濡れたまま屋敷に入ってきたので、こんな時間だというのに拭き掃除まですることになって……。
なんて迷惑な!
黒緋の後ろからキッと睨みました。
それに気付いていながら花緑青は黒緋に親しげに笑いかけます。
「ごめん、兄上。久しぶりに兄上に会えたからはしゃいじゃったみたいだ」
「仕方ない奴だな」
悪びれない花緑青に黒緋が呆れた口調で言いました。
でも黒緋はどこか嬉しそうな目で花緑青を見ています。
そんな二人の雰囲気に私は困惑してしまう。
「黒緋様、説明してください。これはいったいどういうことなんです? 知り合いなんですか?」
「知り合いもなにも、俺の弟だ」
「弟!?」
思わず声を上げました。
黒緋の口から告げられれば疑いようがありません。
私はあんぐりと花緑青を見つめます。
そんな私に花緑青がニヤリと笑う。
「よろしくね、義姉上」
黒緋の弟……。
寝耳に水とはまさにこのことでした。
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