異世界生活物語

花屋の息子

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109 仮住まいを建てよう2

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 こう言う時に識字率が低いというのは面倒臭いなと思ってしまう。皆が文字さえ解れば魔石の有用性の事程度などはテキストに書いておけば済むのだから。

「これで少し置いておくと早く固まりますが、大きさによっては木箱などに魔石と一緒に入れて置くとさらに早くなりますので覚えて措いて下さい。そしてこの棒は少しやわらかい内にこの丸太に縛り付けます。固まる前に縛る事で食い込み抜けにくくなるからです」

 駆け足の説明をすると、まだ見て居たそうな視線を残しながら草取りに戻る面々を他所に、ダスカーだけが「フムフム」とエア作業でイメトレしていた。
 
「あまり強く触ると跡が付いてしまうので、軽く触って硬さを確認しながらやって行きましょう。植物の皮みたいな感じで薄く固まったら丸太に縛りますからね」

 色は木材色で食べたい物ではないが触感は固めの寒天ゼリーでも触っているようで気持ちが良い。それがさらに固まり薄皮が張ってくるようになると、中は柔らかく外は木材の触り心地となり脳が戸惑うような感覚を得られたところで魔石を離して硬化を中断する。
 
「これくらいになると外側の皮っぽいのが形をそのままにしてくれるので、もう型から外しても形が崩れにくくなっていますから、縛り付けてしまいましょう」
「確かに皮みたいだな」
「硬くなるのに丁度良い魔石の量と、どのくらいの時かはいろいろ試してみてください。僕も『これが一番!』って言うのは解からないので」

 はるたに持ち手を取り付ける作業は蔓を使うのだが、これだけで縛り付けても緩むので楔を打つ。『メシメシ』と木が悲鳴を上げ締まる。

「これで″たこ〟の完成です。草取りもそろそろ終わるみたいですし、早速使ってみましょう」
「これを撃ち付けて壊れたりしないかが心配だな」

 大人がギリギリ握れるほど太くはしているが、身体強化している人間が使うのだから100パーセント大丈夫といえないのが残念な所だ。
 斧の柄はそんなに壊れないのだから大丈夫だと思うけど・・・大丈夫だよね?
 綺麗な草取り後とは言えないが草だらけの荒地だった事を思えば大分綺麗になった区画に綱を張って工事区画を設定したら、

「それではたこを使ってみたいと思います。と言っても僕じゃ仕えませんからダスカーさんとホリーさんでお願いします」

 ドンッドンッと地響きを立てて地面を打ち付けると一撃でも1センチは沈んでいつのではないだろうか、思いのほか沈むことに驚くが身体強化の効力がその真価を発揮していたみたいだ。
 穴を開けたい訳ではないので場所をずらしながら打ち付けてもらうと、固く締まった土地に変わっていく。

「それくらいで。使い方は単純ですが、足に落とさないように気をつけて使って下さい。それでは二人一組でたこを持って綱を張った中を全て打ち付けて下さい」

 作業風景は壮観である。ランマーの様にデッデッデという音の変わりに「「「ドンッ」」」と大地が震えるのだから。ネタでなく実際に体が浮くほどの地響きは酔いそうで不安になった。
 そうして概ね平らになった事を確認して微調整を掛けてもらい。脳内工程表の一番である整地が完了した。


 填圧された地面をざっくり整地すると、いよいよ建て初めだ。
 建てめ式などは行わないので何か物足りないが、どこぞの県みたいに菓子やら小銭播きする訳にもいかないので仕方が無いが、そのまま作業をするよりも気分知己にはやりたい気がする。
 そもそも地鎮祭やってないんだから一緒か?

「それでは建て始めますが、最初は今までとほとんど変わりません。変わるのは土台の木が土の上にあるかないか、後は軟化を使うので早さが違うくらいです」
「それだけでも恐ろしく違うんだがな」
「僕のやり方になるのは土台の材を組んだ上に立てる柱からになりますが、柱に全員で掛かる訳にもいかないので、外枠と床引きをやって貰らう中から2人づつ交代で手伝いをお願いします」

 飯場の壁は、柱に溝を付けて壁板にも上部を逆さまの凹字型、下部を凹に加工した板をはめるだけと言う、非常にシンプルな工法を用いる事にした。
 生前の小さい頃に、近所の大工のおっちゃんが「お前の家だ~」とウチの庭先にプレハブ小屋サイズの小屋を建ててくれた物の焼き直しなのだが、今思えば某双子の野球漫画みたいなものだったのだろうか?隣に女の子住んでなかったけど。

「それでは柱に板の厚さと同じ溝をこことここに彫ります」
「わかったぞ。そこに壁板をはめるんだな」
「はい。でもこれだけじゃないです。一番大切なのは板の方にも同じ様に溝を付ける事です。上と下の溝は同じ大きさの小板をはめて隙間が開かない様にと外れないようにします。」
「隙間が開くのは仕方が無いんじゃないか?」
「風はもちろん雨が降れば隙間から入りますし、土が家の中に入る原因も隙間ですから、それが無くなると家の中の感じが良くなるんですよ」
「今まで気にもしていなかったな」
「これから気にしてもらったら大丈夫です。まぁまだ隙間が開かない工夫はあるんですけど、これは壁を作り始めないと解からない事なので、後でですね」

 こうして説明しながらも作業が進んでいく。ただ指示を出していただけのモーガンたちの時より大変かもと思ってしまうエドワードであった。
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